レディ・レイピスト

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最終章



 翌朝、美沙子は平日と同じ時間に起きると掃除、洗濯、料理の支度を片っ端から行い、気が付くと昼になっていた。
 しかし、この時点になっても、武田に何と言って詫びれば良いのかわからない。
 理沙の言った(いざって時)と(ベッド)の意味は何となく察しがついたが、色仕掛けで武田を丸め込むようなやり方は絶対に嫌だった。
 リビングのテーブルに丁度料理を並べ終わった時、インターフォンが鳴った。
「おはよ、先生! 約束通り武田君を連れてきたよ」
 美沙子がドアを開けると元気な理沙の第一声が飛び込んで来た。
 その理沙の後ろに隠れるように私服姿の武田が立っていた。
「お、おはようございます、小谷先生」
 武田は恥ずかしそうに挨拶するとぺこりとお辞儀した。
 ぎこちなく微笑むその顔に、レイプ直後の武田の顔が重なって、胸の奥がズキリと痛む。
「い、いらっしゃい。さ、どうぞ入って」
 美沙子は努めて平静を保ち、理沙と武田を室内に招き入れた。
「あ、すごい御馳走! 先生ったら、気合入ってる」
 テーブルの料理を見た理沙が驚いたように言った。
 しかし、理沙の驚きは決して大袈裟なものではなかった。
 料理の腕には自信のある美沙子が、前日から仕込みを行ってまで作った料理達は(御馳走)の名に恥じない代物だった。
 テーブル上の光景には理沙だけでなく武田も驚嘆した様子で、声こそ出さなかったが口を半開きにしたまま絶句していた。
 そんな武田の姿が美沙子にはとても嬉しかった。
「せっかくのお客様だから、久しぶりに腕を振るってみたの。さ、立ってないで座ってちょうだい」
 理沙以外の人間が美沙子の部屋に来るのは本当に久しぶりだった。
 罪の告白という目的をしばし忘れて、美沙子は二人の教え子と昼食会を楽しんだ。
「ね、先生。これからどうする? 私、いた方が良いかな?」
 キッチンで洗い物をしながら、理沙が小声で言った。
「え、ど、どうかしら。理沙ちゃんは武田君になんて言って連れてきたの?」
 美沙子は皿を拭きつつ答える。
 武田は理沙の言い付けを守って、リビングで大人しくテレビを見ていた。
「先生にお呼ばれしたから武田君もどう? って。最初、武田君は遠慮したけど、先生と二人じゃ寂しいからお願いって言ったら来てくれたよ」
 理沙の(お願い)という言葉を断り切れず、困った顔で首を縦に振る武田の姿が目に浮かんだ。
「じゃあ、武田君は例の事はまだ知らないのね」
「うん。やっぱり、それは先生の口から話した方が良いと思ったから」
 顔色一つ変えず、もっともらしい事を言う理沙は内心頬くそ笑んでいた。



 その日の朝、理沙が武田の家を訪ねた時、武田の両親は外出しており、家には武田しかいなかった。
 武田は理沙の突然の訪問に驚きながらも、理沙を家に招き入れた。
「というわけなの」
 武田の部屋で理沙は事の顛末を全て話して聞かせた。
 理沙の予想通り、武田はレイプされた事を両親に話していなかった。
 翌日学校を休んだのは心身ともに受けたダメージを癒す為だった。
「…………」
 理沙の話を聞いた武田は絶句した。
 男である自分をレイプしたのが憧れの女性教師だったと聞かされて、驚かない筈が無かった。
「本当は今日、私が武田君を先生の家に連れて行って、そこで先生が武田君に全てを話してお詫びする筈だったんだけど、いきなり先生から言われたら武田君驚いちゃうでしょ。だから、先に私が話しておいて、武田君の気持ちを聞いておきたかったの」
「僕の気持ち?」
「そう。先生は武田君に酷い事をしたよね。でも先生は心の底から後悔してるし、反省してるの。あ、言っておくけど、今日のセッティングをしたのは全部私だからね。先生は警察に自首するって言ってたんだけど、そんな事しても無駄だし、武田君も困るからって止めさせたの。で、問題はここから。武田君は小谷先生の事を許せる?」
 理沙は武田の目を見詰めて訊いた。
「そ、そんな事、急に言われても……」
 信じ難い話を聞かされた上、理沙の少しきつめの黒い瞳に見詰められた武田は完全に舞い上がっていた。
「もし武田君に許してもらえなければ、先生は間違いなく警察に……いえ、それだと武田君に迷惑が掛かるから、辞表を出した後で自殺って線が有力ね」
 腕組みをして理沙は頷く。殆ど脅迫だった。
「こ、困るよ、それ。先生に死なれたら僕……」
 切羽詰まった武田の言葉に理沙はにやりと笑った。
「この際、はっきり聞くけど、武田君、小谷先生の事、好きでしょ?」
「え、そ、それは……」
「もう一度訊くわ。小谷先生の事、女として 好き? 嫌い? どっち?」
 理沙は言い淀む武田を睨んでゆっくりと聞き直した。
 武田は理沙の鋭い眼光に身体を硬直させる。
「す、好き……大好き……」
 顔を真っ赤にして言う武田に理沙はにっこり微笑んだ。
「OK、じゃあ最初の質問に戻るわね。武田君は小谷先生を……」
 理沙はわざと言葉を切って武田を誘った。
「……許せるよ」
 武田は真剣な面持ちではっきりと答える。
「あの時、恐かったし、痛くて涙が出たけど、ほんの少しだけ……気持ち……良かったんだ」
 少し俯いて理沙に告白した。
「でも、男に犯されたかと思うと気持ち悪くて、悔しかった。だから、相手が先生だったってわかって、かなり救われた気がするし、それにやっぱり小谷先生の事大好きで、先生には笑っていて欲しいから」
 全てを言い終え、黙り込んだ武田の両頬を、理沙はそっと掌で包み込み、そのまま優しく接吻した。
「んっ…………!」
 突然の事に驚き、身を硬くする武田だったが、プリンみたいに柔らかい理沙の唇に、全身の力を吸い取られるような錯覚を覚え、頭は恍惚となっていた。
「いきなりキスしてゴメンネ。武田君の話聞いてたら嬉しくなっちゃって」
「…………?」
 甘いキスの余韻に浸る武田は、うつろな目で理沙の話に耳を傾けた。
「私ね、少し前まで家庭教師の大学生と付き合ってたんだ。その人とは肉体関係もあって……」
 同級生の口から語られる肉体関係という言葉に、武田は違和感と共に猛烈な生々しさを感じた。
「でも、その人にとって私は子供だったらしい。女子大生の彼女ができたからって、あっさり振られちゃったの。それからしばらくは男が信用できなくなってたんだけど、授業中に武田君が小谷先生を見詰めてるのを見ちゃって、私、感動しちゃった。武田君、すごくうっとりした顔してて、先生の事、本当に好きなんだなって思って。で、さっきの武田君の告白で止めを刺されちゃったわけ」
「はあ……ってことは僕が小谷先生を好きなのバレてたんだ。じゃあ、さっきの質問は一体……」
「えへへ、ゴメンネ。わかってたって言っても私の勘だからね。やっぱり本人の口からちゃんと聞かないとね」
 理沙は両手を合わせて武田に謝った。
「まあ、別に良いけど」
 照れたように武田は顔を背ける。
「あはっ、ありがとう武田君。でね、お願いがあるんだけれども……」
 理沙は小首を傾げて武田を見詰めた。
「?」
「私を……抱いてくれないかな?」
 学校一の美少女に目の前で刺激的な事を言われ、武田の頭の中は真っ白になった。
「私、武田君が小谷先生を好きなの知ってるし、邪魔するつもりなんか全然無いけど、武田君みたいな誠実な男の子に抱かれたいの」
「…………」
 言葉を失う武田に理沙が止めの一撃を加える。
「私じゃ……嫌?」
 小悪魔的な魅力を持つ理沙の、甘く狡猾な言い回しから逃れる術を武田は知らなかった。
「そ、そんな事は絶対無いけど……でも……僕……実は……」
 武田は激しく首を振って理沙の言葉を否定したが、どうも煮え切らない様子だった。
「童貞なんでしょ?」
 普通は言い難い事を理沙はあっさり言い放った。
 いきなり図星を突かれて二の句が継げない武田に理沙は続けた。
「大丈夫よ。私がリードしてあげる。さっき話したけど、私、そこそこ経験値あるから。それに武田君も小谷先生とする時に備えて予行演習しておいた方が良いでしょ?」
 事も無げに言う理沙に武田は危うく頷いてしまいそうだったが、何とかその前に理沙の言葉の異常さに気付き、聞き返す。
「こ、小谷先生とする時って?」
「うん、今日の本当の目的はその段取りを武田君と打ち合わせる事だったの。武田君が許すって言っても、小谷先生はすんなりそれを受け入れないと思う。だから、先生が武田君にしたように、今度は武田君が先生をレイプすればお相子って事になって、先生も負い目を感じなくて済むようになるでしょ?」
「ぼ、僕が小谷先生を……レ、レイプする?」
 武田の声は完全に裏返っていた。
「レイプっていっても、それは言葉の上での事で、要は武田君が好きなように小谷先生を抱けば良いって事。先生は武田君と同じですごく真面目だし、やっぱり教師だからさ。何の償いも無しじゃ納得しないよ。そこで武田君が交換条件に先生の身体を要求するわけね。それで契約は成立。後は武田君の思った通りにすれば良いじゃない」
 理沙は意味ありげにウィンクしてみせた。が、
「お、思った通りに……って?」
 武田に意図は伝わらず、ただ理沙のしぐさにドキッとしただけだった。
 その鈍感さに理沙は溜め息を吐く。
「だ・か・ら、この機会を使って小谷先生に告白しちゃえばって言ってるの。(やっぱりこんな形で先生を抱くのは嫌だ! 僕は前から先生の事が好きだったんです!!)ってね」
 新劇調に武田役を演じて見せる理沙を、武田は呆然と見守った。
「私が言いたい事、わかってもらえた?」
「大体……」
 理沙の意外な一面を目の当たりにした武田は、もう納得するしかなかった。
「よろしい。じゃあ……」
 と言って理沙は元気良く立上がるとベッドに腰掛ける。
「セックスしよう!」
 にっこり微笑む理沙の笑顔と短いスカートからはみ出したふとももが、床に座る武田を誘っていた。
 ごく自然に(セックス)という言葉を口にし、欲望を全く隠そうとしない理沙の奔放さに眩しさを覚える。
 そして、自分と理沙がセックスする事に何ら違和感を感じなくなった武田は、自らの欲望に操られるように立ち上がり、理沙の横に腰を下ろした。
「フフフッ、どうやら覚悟できたみたいね。じゃ、武田君の童貞、私が貰うね」
 理沙は武田の膝に馬乗りになると武田の頭を抱き締めた。
 理沙の程好く膨らんだ胸に武田の顔が埋まった。
 服越しとは言え、同級生である理沙の胸に抱かれ、その柔らかさと温もり、そして甘酸っぱいような少女の体臭に武田はうっとりした。
 トランクスの中では早くもペニスが硬さを増し、密着した理沙の股間を突き上げていた。
「何か硬いのが当たってるよ?」
 クスクス笑いながら理沙は腰をゆっくり前後に振り、股間をペニスに押し付けた。 ショーツのクロッチ越しにペニスが恥丘に食い込み、その卑猥な感触に辛抱堪らず武田は理沙を強く抱き締めた。
「フフフッ、なんだか赤ちゃんみたい」
 理沙は自分の身体を貪る武田の頭をあやすように撫でる。
 武田は理沙の身体を服の上から撫で回しながら、許可を求めるように見上げてきた。
「武田君の好きにして良いよ。私の身体で感じて欲しい」
 理沙はリップで光る唇から舌をちらつかせると、そのまま武田の唇に差し入れた。
 濡れた理沙の唇は武田の唇にぴったりと吸い付き、差し入れた舌は武田の口腔をなぞりながら甘露のような唾液を滴らせる。
 武田は夢中で理沙の舌を求め、口移しで与えられる少女の唾液をたっぷりと味わった。
 理沙の刺激的な言葉に誘われた武田の両手が理沙の服の中に滑り込み、ブラジャーを半ば強引に摺り上げると、窮屈そうに零れ出した両乳房を鷲掴みにして揉みし抱いた。
「た、武田君……ごめん、ちょっと痛い……」
 力加減の良く分からない武田の愛撫に、理沙の身体が一瞬、固まった。
「あ、ご、ごめんっ! 僕……」
 慌てて謝る武田に理沙は軽くフレンチキス。
「謝らないで良いよ。その代わり、もう少しだけ優しく……ね」
「う、うん、わかった。やってみる」
 武田は手の力を抜き、指先や手の平を使ってそっと乳房を撫で上げた。
「そ、そう、そうだよ、武田君。とっても気持ち良いよ」
 武田の指先が硬くしこった乳首を爪弾くたびに、理沙の声のトーンが上がった。
「武田君、おっぱい……おっぱい舐めて欲しい」
 興奮した理沙の鼻に掛かるような声に武田が理沙の服を捲し上げると、目の前に白い乳房と薄いピンク色の乳首が露になった。
 十四歳の肌は眩しいくらい瑞々しく、理想的な稜線を描くバストは乳頭をぴんと正面に向け、誇らしげに若さを主張していた。
「田上さんの胸……すごく綺麗だ……」
 初めて見る乳房に、武田は思わず感嘆の溜息を漏らし、まじまじと眺めてしまう。
「フフフッ、褒めてくれてありがとう。でも、いつまでそうして眺めているつもりなの? 触ってくれないなら、仕舞っちゃうぞ」
「あ……待って、ごめん、仕舞わないで」
 我に返った武田はこの機を逃すまいと、理沙の肌から溢れる熱気とミルクのような匂いに包まれながら、夢中で乳房にしゃぶりついた。
「あ、あぁ……いい、武田君。ねぇ、もっと舐めて、もっと吸って」
 理沙は更なる愛撫を求め腰をくねらしながら武田をベッドに押し倒す。
 乳房を武田の顔に押し付けたまま腰を浮かすとトランクスの中に手を差し込み、硬く強ばったペニスをしっかりと掴んだ。
「あっ!」
 驚いて乳房から口を離した武田を理沙がやさしく窘める。
「あ、だめ、止めないで。武田君のは私に任せて、武田君は私のおっぱいを……できれば、オマンコも……お願い」
 切なげな理沙の声と卑猥な言葉に、武田は再び乳房に吸い付くと手をスカートの中に伸ばした。
 スカートの中はむっとした熱気に包まれ、じっとり汗ばんだふとももを撫でながら指を理沙の中心へと這わせていく。
「あ、はぁ、武田君……初めてなのに上手……だね。私、ふとももの内側って、すごく弱いの」
 誉められて、武田の胸に喜びが広がる。やがて指先は理沙の股間に到達した。
 よれたパンティーの生地は身体の中心に沿って湿り気を帯びていた。
 武田はそこに充満しているであろう強烈な匂いを想像し、激しく欲情する。
「濡れてるのわかる? 武田君が気持ち良くしてくれたからだよ。武田君の先っぽももうぬるぬるだね」
 少し恥ずかしそうに微笑む理沙の指先はペニスの先端に絡み付き、滲み出る透明な樹液を弄んだ。
 粘膜を愛撫され、ペニスの先端から発した痺れるような快感が武田の全身を駆け抜けた。
 御返しとばかりに理沙のパンティーの中に指を滑り込ませ、濡れた肉のスリットに指の腹を押し当てる。
 スリットから溢れる粘液のぬるっとした感触と肉丘のぷりぷりした弾力を指の腹で楽しみながら、スリットに沿って上下に擦り上げた。
「あ、それ、すごいっ! 頭の奥にじんじんくる……武田君……もっと、ね、もっとして!!」
 調子に乗って大きくスライドさせた武田の指先に、理沙の包皮に包まれた肉芽が引っ掛かった。
「きゃう!」
 悲鳴に近い声を上げ、理沙の身体がビクッと跳ねる。
「ご、ごめんっ。痛かった?」
 予想外に激しい反応に、武田は愛撫を中断して恐る恐る訊いた。
「うっ……はあ、はあ、はあ」
 武田の質問を余所に理沙は眉間に皺を寄せたまま黙ってしまう。
 そして、深く息を吐きながら恍惚とした表情をしたかと思うと武田にぐったりと身を預けてきた。
「た、田上さん……あの……大丈夫?」
 心配そうに聞く武田に理沙は息を整えながら答える。
「あ、はあ、はあ……だ、大丈夫。武田君の指が……クリトリスに強く当たって、私、ちょっとイッちゃったの」
「?」
 理沙の言葉に武田はかつて父親の部屋から盗み出してきた官能小説に幾度か出てきた(クリトリス)そして(イク)という二つの言葉を思い出した。
 武田はそれらの言葉に得体の知れない興奮を覚えてたが、実際に何を意味するのかは知らなかった。
「フフフッ、武田君には何の事かわからないよね。あのね、ここ……」
 そう言って理沙は武田の指を自らの肉芽へと導いた。
「ここがクリトリスっていうの。ここってすごく敏感だから、優しく触ると気持ち良くなれるんだけど、さっきは武田君の指が強く当たったものだから、一気にイッちゃったってわけ。ちなみに(イク)っていうのは武田君のここをこうしてると白いのが出て気持ち良くなれるよね。それと同じ事なの。だから、ちょっと乱暴だったけどすごく気持ち良かったよ」
 理沙はにっこり微笑んで武田のペニスを握ると上下にしごいて見せた。
「そ、そうなんだ……って、もう、わかったから、その手を止めて! そんなに擦ったら、僕、出ちゃうよぉ!!」
 説明を理解したのも束の間、ガチガチに強張ったペニスを柔らかな掌でしごかれ、武田は危うく射精しそうになってしまう。
「初めてだから、早くてもしょうがないよね。じゃあ、今度は私が武田君をイカせてあげるね」
 理沙は楽しそうに言うと、思い切り良く着ている服を脱ぎ始めた。
「面倒だから服脱いじゃおうよ」
 脱いだ衣服を次々に床に放り投げ、あっという間にパンティーにソックスのみという姿になってしまう。
 さらにはあっけに取られている武田の身体から衣服を全て剥ぎ取った。
「うわぁっ! た、田上さん! 田上さんは全部脱がないの?」
 羞恥に股間を押さえて武田が聞いた。
「パンツは武田君に脱がせて欲しいの。ソックスは例の大学生が好きだったんだ。嫌なら脱ぐけど?」
「へ? あっ……そ、そのままで!」
 武田は自分でも驚くほど即座に、そして力強く答えていた。
 武田の余りの即答に理沙は大笑いする。
「あはははっ! 武田君もこういうの好きなんだ。女の私には全然わからないんだけど、マニアックだよね」
 明らかになった自分の嗜好に武田は赤面した。
 俯く武田の姿にほんの少し罪悪感を刺激された理沙は、武田に抱き着くと顔を上げさせ、そっとキスした。
「笑ってごめん。武田君が喜んでくれるなら、それで良いの。別に私も嫌じゃないし。それより早く始めよう」
 理沙は武田をベッドに寝かせるとその顔を跨いだ。
 武田の鼻先にコットン生地のパンティーに包まれた恥丘が突き出され、そこからは少女特有の饐えた匂いが漏れ出していた。
 そして下半身からはぬるっという、感触ともに電撃にも似た快感が這い上がってくる。
「あうっ!!」
 気がついた時には、ペニスは既に理沙の唇にすっぽりと飲み込まれ、理沙の頭が上下に動く度に唇、舌、内頬が代わる代わるペニスをきつく嬲った。
 武田はフェラチオの快感に耐えながら理沙の股間に顔を埋め、深く息を吸い込む。
 むっとする熱気と共に理沙自身のいやらしい匂いが肺を満たし、思わず噎せ返りそうになった。
(すごい! これが田上さんのオマンコの匂いなんだ! オマンコの味なんだ!)
 感動に打ち震えながら武田は必死に理沙の股間の匂いを嗅ぎ、パンティーから染み出す淫液を舐め取った。
「ああっ、武田君の息、熱いよ。パンティーの上からだけじゃ嫌、直接、武田君の舌で舐めて」
 淫液と唾液でクロッチの生地はべっとり恥丘に張り付いている。
 武田がそれを指でずらすと、鼻につんっとくる臭気はさらに濃厚になり、淫液に濡れて光る、ピンク色の割れ目が誘うようにヒクヒクと蠢いていた。
 そして、割れ目のすぐ上には、しっかりと閉じられた茶褐色のアヌスが美しい皺を刻んで息づいている。
 理沙の恥ずかしい場所を見ているという興奮が武田の感情を高ぶらせる。
 武田はぴったりと閉じたスリットを割るように舌を差し入れ、割れ目に沿って上下に動かした。
 胎内から搾り出された喜びの汁が肉唇から滴り落ち、武田の口へと注がれる。
 舌先を痺れさせるしょっぱい汁を、武田は喉を鳴らして飲み干した。
 鼻孔は理沙のアヌスに密着し、直腸から漏れ出す生々しい恥臭を、少しも逃すまいと荒々しく吸い込んだ。
「うあぁっ! お、オマンコは……いいけど……お尻は駄目だよぅ……」
 言葉とは裏腹に、理沙の声は甘く蕩けるようなものだった。
 アヌスの匂いを武田に嗅がれている事に、理沙は異常な興奮を覚えていた。
 武田は理沙が本気で嫌がってるわけではない事を悟り、アヌスに直接舌を這わせる。
「はぅんっ!」
 呻き声と共に理沙の身体がビクッと震えたが、武田は構わず舌先でアヌスを穿った。
 硬くした舌先でアヌスの皺をほぐしながら、理沙の中へと強引に侵入していく。
「う、嘘でしょ! 武田君だめっ、お尻の中は……汚いから!!」
 アヌスに熱いぬめりを感じた理沙は、武田の舌から逃れるべく尻を振った。
 しかし、武田は両手で尻をしっかりと押さえ付け、更に奥深く舌を挿入する。
 理沙は体内で蠢く舌に羞恥と感動を同時に抱きつつも、その快楽に酔いしれた。
「武田君、私の汚い所、平気で舐めてくれるなんて、すごく嬉しいよ」
 恥ずかしそうな表情で再び武田のペニスを咥えると頭を激しく上下させる。
「うくっ!!」
 ペニスの付け根に微かな痙攣が走り、射精が近い事を知った理沙は、武田のアヌスに指を添えた。
「あ、た、田上さん! そ、そこは!!」
 武田の訴えを無視して、理沙はペニスをしゃぶりながら中指の先をアヌスへと埋め込んだ。
 その挿入感に武田は、美沙子にレイプされた時の事を思い出す。
 美沙子にアヌスを貫かれながら、武田は確かに感じていた。
 そして今、理沙の細く長い指にアヌスを犯され、その快感に腰を震えさせながら、絶頂を迎える。
「で、出るっ!!」
 武田のアヌスが理沙の指をきつく引き絞り、同時に射精の脈動が始まった。
 ビュクン、ビュクンという痙攣と共に熱い白濁液が口腔に吹き上がり、理沙の喉を焼いた。
 理沙は鼻孔を突き抜ける青臭さに噎せながら、喉に絡むほど濃厚な精液をゴクゴクと飲み下す。
「た、田上さん、僕の……飲んでくれたの?」
 武田は驚きの表情で訊いた。
「ふぅ……いっぱい出たね。飲み切れるか心配しちゃった。中学生の男の子って、こんなに溜まっちゃうんだ。ちょっとびっくりしたよ」
 理沙の歯に衣着せぬ言い方に顔を赤らめる武田だったが、その胸中は何とも言えない喜びと理沙に対する感謝で一杯だった。
「あ、ありがとう。その……何て言えば良いかわからないけど、ありがとう」
「フフフッ、どういたしまして。精液の味って本当は苦手なんだけど、そんなに感謝されたら、また飲んで上げたくなっちゃう」
 そう言って無邪気に笑う理沙を武田は心底可愛いと思った。
「武田君、もう一回くらい出せるよね?」
 理沙の質問に武田は少し考えた。
 武田は多い時には一日に三回オナニーすることも有ったので、もう一度位は余裕で射精できる筈だった。
「多分、大丈夫だと思う」
「良かった。このまま終わりじゃ、やっぱり寂しいもんね。最後はちゃんとセックスしなきゃね。ちゃんと用意もしてきたし」
 理沙は一旦ベッドを降りると脱ぎ捨てたスカートのポケットからコンドームの箱を取り出して戻ってきた。
「それ……」
 驚いたような顔で武田が聞いた。
「やっぱり武田君は知らないか。これコンドームって言ってね。男の子のオチンチンに被せて、セックスしても子供が出来ないようにする物なの。昨日の夜、パパとママの部屋から内緒で貰ってきたんだ」
 理沙の性教育によって、武田はまた一つ大人になった。
 かつて薬屋の店先に立つコンドームの自動販売機を見ては(高い煙草だな)と首をかしげた事を思い出し、武田は一人苦笑する。
「どうしたの?」
「いや、それの自動販売機、薬屋の前とかに立ってるよね。僕さ、小学生の頃、ずっと煙草の自動販売機なんだと思ってて、随分高い煙草だなってすごく不思議だったんだ」
 武田は照れたように頭を掻きながら自分の過去を語った。
「あはははっ、それ武田君らしくてイイッ! 最高!」
 手を叩いて大笑いする理沙に釣られて、武田は笑いながら反論する。
「いや、だってさ、コンドームの事知らなかったらそれ、絶対に煙草に見えるって」
「まぁね。でも良い話聞いたな。武田君って本当に良い子だったんだね。あ、って事はコンドームそのものはどんな形してるか知らないんだよね?」
「え、あ、まあ……ね」
「よしっ、じゃあ、武田君の為にコンドーム講座をして上げる」
 理沙はおもむろにコンドームの箱を開けると、帯状に連結された袋を一気に引き出した。
「そ、そんな風になってるんだ」
 驚きの声を上げる武田に、理沙は自慢げに胸を張って説明する。
「そう。ここから一つ破り取って使うわけね。で、中身はと言うと……」
 帯から切り離した袋を破いてコンドームを取り出して見せた。
「これがコンドームよ」
 リング状に巻かれ、先端が丸く尖がった、薄くて半透明なピンク色のゴムを、武田は不思議そうに眺める。
「先っぽの小さい袋は液溜りって言って、男の子のオチンチンから出た白いのがここに溜まるのね。これが無いと出た時に破けちゃう事もあるみたい。で、この液溜りを摘まんでオチンチンにこうやって被せるっ……と」
 理沙はペニスにコンドームを被せるしぐさを真似て見せた。
「でも、これってオチンチンが硬くなっていないと被せられないのよね。何となくわかるでしょ?」
 理沙の言葉に武田は自分の股間をちらりと見ると、少し申し訳なさそうな表情で頷いた。
「フフフッ、大丈夫。武田君のは私がすぐに硬くして上げるから。じゃあ、実演といきましょうか」
 理沙は武田の股間に顔を近づけると萎えたペニスを口に含んだ。
「あっ、田上さんっ!」
 射精したばかりのペニスは刺激に敏感になっており、そのくすぐったいような痛いような感触に武田は身悶える。
「出したばかりでくすぐったいかもしれないけど、少しだけ我慢してね。すぐに気持ち良くなると思うから」
 理沙は唾液で濡れた舌を使って優しくペニスを刺激していく。
 やがて、くすぐったさは快感へと代わり、若い武田のペニスはあっという間に硬さを取り戻した。
「さっき出したばっかりなのにすごいね。もうカチカチ。これならコンドーム着けられるよ」
 理沙はペニスの先端にコンドームを被せると人差し指と親指で輪っかを作り、しごき下ろすようにして根元まで被せた。
「どう?」
「何か変な感じ。根元が少し締め付けられるかな」
「フフフッ、それはしょうがないよ。途中で外れちゃったら大変でしょ。でも、これで準備はOKね。後は私のここに入れるだけ……」
 理沙は妖しく微笑むと軽く脚を開いて、自らの股間にそっと手を当てた。
 その妖艶な仕種に武田はごくりと唾液を飲み込む。
「さ、脱がせて……」
 理沙は体育座りをすると武田がパンティーを脱がせ易いように少し腰を浮かせた。
 武田は胸の鼓動を押さえながら両手を伸ばし、理沙の細い腰からゆっくりとパンティーを引き降ろした。
「優しく……してね」
 爪先からパンティーが抜き取られたのを確認して、理沙はベッドに横たわるとそっと脚を開いた。
 それは武田がグラビアなどで幾度と無く見たポーズだった。
 グラビア上で女優の股間を隠していたボカシは今は無く、幼さの残る理沙のピンク色の花弁が眼前に露になっていた。
「武田君、早く来て。この格好、結構恥ずかしいんだから」
 おどけてみせる理沙だったが、その頬は赤く染まっている。
「ご、ごめん」
 武田は理沙の羞恥心に気付く事が出来なかった事を恥ずかしいと思った。
 セックスの経験が豊富であったとしても、理沙はやはり同い年の女の子なのだ。
「ごめん……」
 武田は理沙に覆い被さるともう一度謝って、そして初めて自分からキスをした。
 謝罪に感謝、そして、ありったけの好意を込めて。
「素敵なキスをありがとう」
 想いを込めたキスの後に、武田を待っていたのは理沙の最高の笑顔だった。
 武田は思わず理沙を抱き締めた。理沙の事が愛しかった。
「嬉しいな。私の事、そんなに想ってくれるの? でも、そんなにされたら私、小谷先生に嫉妬しちゃうよ?」
 武田の身体をそっと抱き返しながら理沙は囁く。
 理沙の口から美沙子の名を聞かされ、武田はハッとした。
 理沙と身体を重ねるまではあんなに美沙子の事を想っていたのに、今はそれを忘れ、理沙を想い、理沙を抱こうとしている。その行為の是非に武田は躊躇した。
「ぼ、僕は……」
 言いかける武田の唇に理沙はそっと人差し指を当て、言葉を遮る。
「言ったよね? 武田君が小谷先生が好きなのはわかってるって。それでも私は武田君が好きだから、武田君に抱かれたいって思うから、ここにこうしているの。だから、もし武田君が私をほんの少しでも好きなら、ほんの少しでも私を抱きたいって思うのなら、遠慮なんかしないで私を抱いて。武田君は全然悪くなんかないよ。ただ、私を抱いている時は、私の事だけを想っていて欲しいな」
「田上さん……」
「さ、来て……ここよ……」
 理沙は武田のペニスを掴むと濡れた割れ目へと導いた。
 コンドームに包まれたペニスの先端がぴったりと閉じた肉門に擦れ、その柔肉の感触に武田は身震いする。
「しっかり狙いを定めたら、思い切って腰を突き出すの。それで私達、一つになれるから」
 武田は理沙の指示通り、ペニスに手を添えて先端で軽く肉門を押し開いた。
 ペニスの先端部分は呆気なく理沙の胎内に飲み込まれたが、そこから先には弾力のある肉の壁が立ち塞がり、激しく抵抗していた。
「あ、さ……先っぽ……入ったね。私、処女じゃないから少しは入れやすいと思うんだけど、まだきついかもしれない。構わないから、そのまま力尽くで入ってきて」
「わ、わかった。じゃあ、行くよ。うっ!!」
 理沙の腰をしっかりと掴んで、武田は腰を前に突き出した。
 ペニスの先端が肉壁の抵抗を突き破り、熱い肉洞の中へと潜り込んでいく。
「う、あ、あ……は、入ってくる。武田君が私の中に入ってくるぅ……」
 身体の中心を貫かれる感覚に耐えながら、理沙は武田の挿入を助けようと両脚を目一杯開いた。
 そのおかげもあって、武田は行く手を阻む膣壁を強引に押し広げ、ペニスを理沙の胎内深く埋め込むことができた。
 根元まで埋まると同時にペニスの先端が膣奥の壁に突き当たり、微かな振動が胎内に響いた。
「あっ、すごいっ! 武田君のオチンチン、私のオマンコにぴったり。わかる? 武田君の先っぽ、私の奥に当たってるよ」
「あ、ああ。わかるよ。入れる度にコツンコツンって感じるんだ。それに田上さんの中、熱くてきつくて、た、堪らないよ……」
 誰に教えられたわけでも無いのに、武田は自然と腰を振り始めていた。
 ペニスの先端が抜け落ちる寸前まで引き出しては、再び根元まで一気に埋め込む。
 これを一定のリズムで繰り返す。その卑猥な腰の動きはつい先ほどまで童貞だったとは思えないほど巧みだった。
「う、嘘っ、すごい! 武田君の腰の動き、すごい気持ち良い!!」
 理沙は更なる快感を求めて武田の腰に脚を絡めると、自分でも腰を振り始める。
 二人の腰がカスタネットのようにリズミカルにぶつかり合い、互いの結合部分から目も眩むほどの快感が生み出された。
「うああぁぁ! すごいっ、すごいの武田君! やっぱり本物のオチンチン最高! 気持ち良すぎて死んじゃう!!」
 悦びの悲鳴を上げながら、理沙は欲望のままに腰を躍らせる。
 コンドームで保護されているとはいえ、これが初体験である武田にとって理沙の淫らな腰使いは余りに酷だった。
「た、田上さんっ、そんなに腰振ったら、ぼ、僕っ、だめっ……また射精しちゃう!!」
 込み上げる強烈な射精感を武田は必死に訴えた。
「い、良いよっ。射精して良いよっ! 私も、私も、もう……うぐっ……い、イクッ……あはぁイクぅっ!!」
 甘い悲鳴と共に理沙の全身に鋭い痙攣が走った。
 身体の奥底から湧き起こるオルガスムスの爆発に突き上げられ、美沙は激しく身悶える。
 暴れる理沙の身体を押え込むように抱き締めると、武田は渾身の一突きを見舞った。 胎内深く捻じ込んだペニスの先に理沙の膣奥を感じながら、思う存分射精する。
「うっ!! 出るっ!! 出るぅっ!!」
 腰の中心に熱い痺れを感じ、アヌスの奥底で括約筋がビクッ、ビクッ、と激しく収縮した。
 ペニスの先端から精液が迸るたび、快感が背筋を駆け上り、頭の中が真っ白になる。
「あはぁんっ!! 武田君のオチンチン、私の中でピュクピュクいってる!! 熱っつい精子がいっぱい出てるのわかるよ! お腹の奥に感じるの!!」
 コンドーム越しではあったが、二度、三度と膣奥に精子を叩きつけられ、理沙は恍惚の喘ぎを漏らした。
 若い二人は互いの性器を通してひとつに溶け合い、快楽の波が完全に遠退くまで、決して離れようとはしなかった。

「フフフッ、武田君って見掛けによらず女泣かせかもね」
 生まれて初めてのセックスを終え、乳房の上でうっとりとしている武田の頭を撫でながら理沙が言った。
「そ、そんな事無いよ。僕、女の子にもてた事無いし」
 理沙の胸に抱かれたまま武田は照れたように反論する。
「それは武田君が気付いてないだけだよ。女子の間じゃ優しくてカッコイイって、中々の評判なんだよ」
「ほ、本当?」
「うん。それにセックスもすごく上手いし、武田君がその気になったら大抵の女の子はモノに出来るんじゃないかな」
「た、田上さんも?」
 おずおずと尋ねる武田に理沙は笑った。
「もちろん。あんなに気持ち良くされちゃったら、武田君の事、忘れられないよ。今も小谷先生からどうやって奪ってやろうかって考えてるところなんだから」
「え、そ、それは……」
 理沙の言葉に武田は動揺した。
 理沙の事は勿論好きだったが、美沙子の事も忘れられなかった。
「困る?」
 理沙の黒い瞳が武田を見詰める。
「ぼ、僕、田上さんも小谷先生も大好きなんだ。こういうのってどうなんだろう?」
 武田はそう言って考え込んだ。自分は軽薄なのだろうか、と。
「私は悪くないと思うよ。だって私も同じだもん。武田君の事も小谷先生の事も本気で大好き。だから武田君もそれで良いと思うよ。ね?」
 理沙の笑顔と(本気)という言葉に武田の迷いは吹っ切れた。
「うん、そうだね。僕も……本気だから」
 武田の答えに理沙はにっこり微笑んで頷いた。
「でも、ちょっと搾り過ぎちゃったかな? 真っ白なのこんなにいっぱい出しちゃったら、先生の分残って無いかもね」
 理沙は精液で膨らんだコンドームを武田の目の前にかざして見せる。
「う……た、多分、大丈夫だよ。後、一回くらいは……多分」
 武田は強がってみたものの、実のところ、かなり不安だった。
「あははっ、冗談、冗談。武田君はまだ若いんだから全然平気だよ。それでも不安だったら、途中の薬屋さんで栄養ドリンクかなんか買って飲んでいけば良いんじゃない?」
 あからさまに、その手があったか! という顔になった武田を、理沙は笑いながらも、優しい視線で見詰めていた。



 食事の後始末を終えた美沙子と理沙は、武田と共にリビングで寛いでいた。
 そんな中、美沙子は意を決した面持ちで話を切り出した。
「武田君、私、武田君にどうしても話しておかなくてはならない事があるの」
 美沙子はそう言いながら、法廷に立ち、罪を告白する自分の姿を思い浮かべた。
 本来ならばそうでなければならなかった。
 教師として自分のした事の責任は取らねばならない、確かにそう思っていたし、そのつもりだった。
 しかし、理沙の説得を受けた時、救われた気がしたのも事実だった。
 自分の部屋という密室で武田が自分を許してくれれば、罪悪感も薄れ、何より人生を放棄せずに済む。
 それが余りに都合の良い考えであり、許されざる手段である事はわかっていたが、美沙子は理沙の言葉に甘える形でこの方法を選んでしまった。
 更に理沙が暗に匂わせた、肉体を使って武田を説得するという方法までもが、頭の片隅に巣食って離れなかった。
「な、何でしょうか?」
 努めて平静を保ち、訊き返す武田の心中は複雑だった。
 これから美沙子が告白しようとしている全ての事を、既に理沙から聞かされて知っているのだから。
 武田は理沙から授けられた作戦の手順を頭の中で確認しながら、美沙子の言葉を待った。
「武田君は昨日、学校をお休みしたわよね。その理由を……いいえ、その本当の理由を私、知っているの」
「本当の理由ってどういう意味ですか?」
 言い終わった武田は理沙の方にちらりと目をやると(こんな感じで良いのかな?)という目配せを送った。
 元々、芝居など到底出来ない性格の為、一言一言に細心の注意を払わねばならない。 武田の目配せに対して理沙は軽くウィンクしてみせる。
 どうやら問題無いようだった。
「じゃあ、私が普通に休んだ理由を訊いたら、武田君は何て答える?」
「え、ただ風邪を引いたから、休んだだけなんですけど」
「やっぱり、そう言うわよね。でも本当はそうじゃないでしょう?」
「…………」
 動揺したフリをして黙り込む武田に美沙子は続けた。
「本当は一昨日の夜、武田君の身に起った事が原因なのよね?」
「ど、どうしてその事を知ってるんですか!」
 武田は少し大袈裟に驚いてみせた。その大根役者振りに理沙は吹き出しそうになる。
「それは……その……」
 話が核心に近づき、美沙子はやはり言い淀んでしまう。
 いつもの毅然とした女教師の面影は微塵も無く、まるで悪戯を咎められた子供のようだった。
 そんな美沙子の姿が痛々しくなって、武田は思わず真相を白状しそうになる。
 理沙は慌てて武田の脚を突付き、自分の方を向かせると首を横に振って思い止まらせた。
 結果はともかく、せめて美沙子自身の口から告白させなければ、意味が無いと考えていた。
「じ、実は一昨日の夜、武田君を襲って無理矢理犯したのはこの私なの。謝って済む事じゃないけれど、本当に……ごめんなさい」
 自分の責任を果たすべく絞り出すように美沙子は全てを告白し、謝罪した。
 武田の前で涙を流すのは卑怯だとわかっていたが、溢れ出す涙を押さえる事が出来なかった。
「せ、先生……」
 美沙子の涙を見て、武田はもういても立ってもいられなかった。
「ごめんなさい、先生! 僕、本当は全部田上さんから聞いて知ってるんです! 犯人が先生だったって事も、その理由も!」
 捲し立てるように言う武田の言葉に、美沙子は泣き顔のままハッとした。
「あーあ、言っちゃった。でも、しょうがないか。武田君に先生の涙はちょっと酷だったみたいね」
 諦めたように言いながら、理沙はニヤリと美沙子に笑ってみせた。
 ここに来て美沙子はようやく状況を理解した。
 理沙が自分に話を持ち掛けてきた時には、既にこの光景を想定していたのだろう。
 武田には予め事の全容を話しておく事によって心の準備をさせ、同時に美沙子に対する許容心を喚起する。
 美沙子には武田の前で自分の口から罪を告白させ、そして赦される事によって、その自責の念を取り除く。
 この策略を理沙は一人で考え、そして実践したのだった。
「でも、武田君。まだ、言う事あるんじゃないの?」
 理沙は意味ありげに武田に促す。
「え、あ、うん……。あの、先生。もう、あの事は忘れてください。僕にとってもその方が良いんです。僕、その……先生の事ずっと前から大好き……だったから、先生が学校を辞めたり、警察に捕まったりするの困るんです。だから、もう……」
 そう言った切り武田は黙り込む。
 一方、美沙子は武田の自分に対する許容と突然の恋の告白に激しく動揺していた。
「ありがとう、武田君。君の気持ちはとても嬉しいわ。でも、だからと言ってそれを理由に赦してもらうわけにはいかないの。武田君の私に対する好意に付け込んで自分の罪を赦してもらうなんて……」
「じゃあ、先生はどうすれば満足なの?」
 美沙子の語尾に噛み付くように理沙が言った。
「それは……やっぱり、きちんと警察に……」
「それが困るって武田君は言ってるの。大好きな先生にいなくなられるのも困るし、当然、武田君本人にも迷惑が掛かるし。って同じ事、私も先生に言ったよね。あの時、先生は私の意見に賛成してくれたじゃない。それは私、先生に内緒で色々小細工して、その事は悪かったかなって思ってるけど。でも、武田君に先生を赦してあげてなんて一言も言ってないよ。武田君は自分で考えて、それで先生を赦すって言ってるんだから、それで良いんじゃない? それとも、この期に及んで、まだ品行方正な教師を演じたいわけ?」
 理沙の口調は至って穏やかだったが、その言葉は鋭く美沙子の胸に突き刺さった。
「ちょっ、ちょっと田上さん! それは言い過ぎだよ!!」
「武田君は黙ってて!」
 猛然と食って掛かる武田だったが、理沙のきつい一言に、腹を蹴られた犬のような表情をすると、あっさり黙ってしまった。
 その後、しばらくは誰も口を開かなかった。
「ま、このまま黙っていても芸が無いからまとめに入るね」
 沈黙を破った理沙の提案に反論する者はいない。
「まず、武田君をレイプした件について先生は謝って、それを武田君は受け入れた。だから、この件についてはお互いに誰にも話さないって事で一件落着。ここまでは二人ともOK?」
 そう言うと理沙は他の二人を見回した。
 理沙の視線に武田は即座に頷き返したが、美沙子はまだ躊躇している様子だった。
「もしOKなら、教師と生徒でちょっと変だけど、仲直りの握手でもしたらどうかな?」
 それを聞くや否や武田は、美沙子の前に即座に手を差し出した。
「先生、これからもよろしくお願いします」
 武田のハッキリとした言葉に美沙子は胸を詰まらせた。
 美沙子の頬を先ほど流したものとは別の涙が流れ落ちていく。
「本当にごめんなさいね。それに赦してくれてありがとう。これからもよろしくね」
 涙で声を詰まらせながら、美沙子は武田の手をしっかりと握った。
「ハイ、じゃあ、この件についてはこれにて一件落着っと。で次の議題に入りたいと思います」
 パンッと手を叩いて話をまとめた理沙は、そのまま次の話に入ろうとした。しかし、理沙の言う次の議題が何なのか、美沙子にも武田にもわからず、二人はそろって怪訝な顔をする。
「次の議題っていうのは他でも無い先生の心の傷の治療法についてです」
 理沙の高らかな宣言に美沙子と武田は同時にえっ? という顔になった。
「先生が昔に受けた心の傷が原因で今回の事件が起ったわけじゃない? 先生はもう二度としないって言うけど、そんなに簡単に止められるのかなって、私は思うわけ。だって先生は悪い事ってわかっていながら、今まで止める事が出来なかったんだから。先生はどう思う?」
 話を振られた美沙子は少し考える。
「そうね、もう二度としないって心に誓ったけど、本当の事言うと自信が無いのよね」
 美沙子は不安げな表情で語り、それを武田は心配そうに見詰めた。
「で、この際だから武田君に協力して貰って、先生の心の傷を完全に治す! とまではいかなくても、少しくらいは良くする事が出来るんじゃないかって思うの」
「ぼ、僕?」
 突然出てきた自分の名前に驚いた武田は、自分を指差しながら裏返った声を出した。
「そう。先生の心の傷って、要は男の人に対する潜在的な恐怖心と憎悪なわけでしょ。それが原因になってセックスが出来なくなって、最終的には男の人への復讐心に変っていったと。だから、男の人に対する恐怖心や憎悪が薄れてセックス出来るようになれば、自然と復讐心も無くなるんじゃないかな?」
 美沙子は理沙の自分に対する分析に真剣に聞き入っている。
 一方、武田は教師である美沙子の前で、平然とセックスという言葉を口にする理沙に赤面して、その場を逃げ出したくなっていた。
「先生は前、大人の男の人よりは武田君くらいの男の子の方が話しやすいって言ってたよね?」
「え、ええ……まあ」
 理沙の質問に答えながら、美沙子は彼女が言った(いざって時にはベッドも有るしね)という言葉の真の意味を悟る。
「しかも今、先生と武田君は前に比べて遥かに親密な仲になってる。だから武田君となら、頑張ればセックスが出来るかもしれないし、それを何度か繰り返していく内に、先生の心のリハビリが出来ちゃうってわけね」
 腕を組み自信満々で理沙は語った。
「え、えぇっ!」
 理沙の言わんとしている事に、ようやく気付いた武田が驚きの声を上げる。
「最初からそういうつもりだったのね」
「えへへ、実はこの方法にはもう一つ別の意味を込めたつもりだったの。さっき先生が武田君をレイプした件については一件落着って言ったけど、それでも先生の中には武田君に対する心理的な負い目が残ると思ったから、セックスして武田君に犯される事によって、その負い目が消えれば良いかなって。でも、そこまで考える必要は無かったみたい」
「まったく……理沙ちゃんには敵わないわね」
 美沙子は目の前の小さな策略家に感嘆の言葉を漏らした。
「さて、二人ともどうする? 私の提案に乗ってみる? 私はやってみる価値はあると思うけどな」
 理沙の言葉に武田は美沙子をチラリと見て、その返事を待った。
 理沙から予め話を聞いていたので、それなりに心の準備はしてきたつもりだったが、やはりいざとなると尻込みしてしまう。
「私は……武田君さえ良ければ」
 そう言って美沙子は武田に目配せした。
「だってさ、どうする武田君?」
 美沙子と理沙に見詰められ、武田の進退は極まった。
「よ、よろしくお願いします」
 武田は美沙子と理沙に向かって、深々と頭を下げた。

「でも、ちょっと意外だったな。私、てっきり先生は、未成年で、しかも教え子でもある武田君とセックスなんて! って言うと思ってたけど」
 湯船に肩まで浸かりながら、理沙は泡だらけの身体をスポンジで擦る美沙子に言った。
「もちろん、私もその事は考えていたわ。でも、武田君をレイプまでした私が、今更そういう事を気にするのも変かなって思って。それに私としては、この機会に自分の体質を変えられるかもしれないっていう期待も有るし、武田君も喜んでくれるなら、私も嬉しいし」
 目を瞑り、頭をシャンプーしながら答える美沙子の乳房がゆさゆさと上下に揺れた。 それを見た理沙はクスクス笑う。
「何か可笑しい?」
 手を止めて振り返る美沙子の頭には山盛りの泡が乗っていた。
「ううん。先生のナイスバディを見たら武田君、鼻血出すんじゃないかと思って」
「フフフッ、どうかしらね。私みたいなオバサンの裸じゃ喜ばないかもしれないわよ。それより理沙ちゃんの裸の方が良かったりしてね」
「もしそうだったらどうしようかな? 私、武田君の事結構好きだし、先生から奪っちゃおうかな?」
「あらあら、理沙ちゃんが恋敵じゃ、私に勝ち目は無いわね」
「冗談、冗談。だって奪う必要なんか無いもの。今日から武田君は先生と私の共有財産になるわけだし」
「そ、そうなの?」
「だってそうでしょ? 私達三人は同じ秘密を共有してて、これからセックスもしちゃうんだよ。武田君は私達の共有財産で、私達は武田君にとって両手の花ってわけね」
 湯船の縁に頬杖をついて、理沙はニヤニヤと笑う。
「理沙ちゃんって時々悪魔みたいな顔で笑うわね。何だか急に武田君が可哀相になってきちゃったわ」
 美沙子は呆れたように笑った。
「ひっどーい、それを言うなら可愛い小悪魔でしょ?」
 こうして教師と教え子による風呂場の戯れ合いは、先に入浴を済ませて待ちくたびれている武田をほったらかしにしたまましばらく続いた。



「おまたせー!」
 まずは理沙が上機嫌でリビングに入ってくる。
 その後に続いて美沙子が恥ずかしそうに姿をあらわす。
 武田はバスローブ姿の二人を疲れた顔で迎えた。
「遅いよ……」
「まあまあ、美女二人が武田君の為に身体のス・ミ・ズ・ミまで綺麗にしてたんだから、少しくらい我慢してよ」
 バスローブの腰に手を当てて言う理沙の(ス・ミ・ズ・ミ)という言葉に、武田はあらぬ妄想を抱く。
 それを見透かした理沙は武田に擦り寄ると甘い声で囁いた。
「武田君、今、エッチな想像したでしょ? 私や先生の何処を想像したのかな? おっぱい? お尻? それとも……」
「え、いや、そんな事は……」
 理沙のサディスティックなイジワルに、武田は顔を赤らめて俯いてしまった。
 そんな教え子たちのやりとりを美沙子は微笑ましく眺める。
「本当、二人とも仲良いわね。羨ましくなっちゃうわ」
「そ、そんなこと無いですっ。昨日まではほとんど話す事も無かったくらいだし!」
 理沙との仲を美沙子に誤解されまいと、武田はしどろもどろで捲し立てた。
「ひどいっ! 今朝はあんなに私を可愛がって、童貞まで捧げてくれたのに……武田君、もう私の身体に飽きちゃったんだ……」
 理沙は自分の両肩を抱き締め、よよよと泣き崩れるフリをした。
「そ、そんな、ち、違うって! 飽きてなんか……って、あ……」
 理沙の芝居に慌てて弁明する武田は、美沙子の目の前である事をようやく思い出した。
「ふーん、驚いたわね。真面目な武田君が実はプレイボーイだったなんてね」
 腕組みをして微笑む美沙子に、武田は何とか弁明しようと試みるが、下手な言い訳をすれば理沙を傷つけてしまうと思い、結局は何も言えなくなった。
「なーんてねっ、ウっソっ!」
 突然、素に戻った理沙は武田の頬に軽くキスした。
 それを見た美沙子の胸がチクリと痛む。
「実はね、先生。今朝、武田君の家に行った時に私、武田君の童貞を頂いちゃったの。先生とする時の予行演習って言ってね」
 あっけらかんと言う理沙に、美沙子は大きな驚きと小さな嫉妬を感じた。
「なるほど、抜け駆けして共有財産に手を付けたってわけね」
「だって、武田君があんまり先生の事を好きだっていうから、何だから羨ましくなっちゃって。 ごめんね、先生」
「まあ良いわ。ちゃんと話してくれたし、ここは目を瞑りましょ」
「あ、あの……共有財産って……何?」
 二人の機嫌が直ったらしい事に胸を撫で下ろしたのも束の間、武田は自分を置き去りにして進む話に疑問を挟んだ。
「武田君は知らなくても良いの! で、先生、ここじゃなんだからベッドに行こう」
「ええ、そうね。じゃあ武田君、ベッドに行きましょう」
「えっ……あ……は、はいっ!!」
 訳もわからないまま直立不動の姿勢で返事をすると、武田は二人の誘惑者によってベッドルームへと連れ去られた。

「まず、武田君はベッドに座って」
 ベッドルームに移動するや否や、理沙は武田をベッドに座らせた。
 美沙子と理沙と共にベッドルームにいるというシチュエーションに加え、これから何が起るのかという期待感に武田の胸は高鳴る。
 美沙子のベッドはシンプルな作りだったが、サイズは大き目で三人一緒でも眠れそうだった。
「で、先生は武田君の前に立つと」
 武田の前に立たせた美沙子に背後から抱きついて、理沙はバスローブの帯を掴んだ。
「ちょっと、理沙ちゃん、何をするの?」
 思いがけない理沙の行動に美沙子は焦る。
「何って、先生の裸を武田君に見て貰うに決まってるじゃない」
「え、そんな……こんな形で……」
「これから私達セックスするのよ。裸にならなくちゃ話にならないでしょ。それに協力してくれる武田君にはサービスしなきゃ、ね?」
 理沙に促されて、美沙子は少し考えると顔を赤らめながら頷いた。
「……ん、わかったわ。やってちょうだい」
「了解。じゃあ、武田君、憧れの先生の裸、しっかり目に焼き付けてね」
 理沙は武田の返事も待たずにバスローブの帯を一気に解くと、美沙子の肩からバスローブを引き降ろす。
 艶めかしい衣擦れの音を残してバスローブは美沙子の足元にストンと落ちた。
 武田は思わず息を呑んだ。目の前には入学以来、憧れの的だった美沙子が、授業のたびにその柔肌を空想した美沙子が頬を朱に染め、生まれたままの姿で佇んでいた。
 鼻筋の通った美しい顔は濡れた黒髪に包まれ、その肌の白さを際立たせている。
 細い首と狭い肩幅が儚げな印象を与える一方、はちきれんばかりに張り、上を向く乳房はどんな屈強な男をも屈服させる、圧倒的なボリュームを放っていた。
 絞り込まれた腰から丸みを帯びた尻へのラインが情欲をそそり、程好く引き締まった腹筋から縦長の臍、そして柔らかに萌えた恥毛へと続く、魅惑の起伏は武田の理性を奪い去った。
 切れ上がった小股から伸びる二本のふとももは股間に匂い立つ色気を湛え、やがて緊張感有る脹脛へとその姿を変えていく。
 武田の空想を遥かに超え、美沙子の肉体は男の欲望を満足させる為の全てを備えていた。
 その完璧な肉体に武田は賞賛の声も忘れて、ただただ感嘆の溜め息を漏らすばかり。
「ああ……そんなに見詰めたら……恥ずかしいわ、武田君……」
 美沙子の羞恥の訴えに武田は憑き物が落ちたようにハッとした。
「どう? 武田君。すごいでしょ。私が言うのも何だけど、こんなに綺麗な身体の女の人、そうそういないと思うよ」
 理沙はそう言いながら美沙子の腰を両腕で抱き締める。
「すごい……すごいよ、先生。本当に綺麗だ……」
 武田はうっとりした顔で呟いた。
 その眼差しにいやらしさは微塵も無く、美しい物を見た感動に輝いていた。
「ありがとう、武田君。そんな風に言ってもらえて、私、本当に嬉しいわ」
 感激に美沙子は目を潤ませる。
 そんな時、腰に巻かれていた理沙の腕がゆっくりと上下に移動した。
 右手の手は乳房を揉みし抱き、左手は股間へと滑り込む。
「あんっ!」
 突然の愛撫に美沙子は喘いだ。
「り、理沙ちゃん、な、何を……」
 抗議を無視して理沙の細い指達は美沙子の肉体を上下から同時に責め立てる。
 その指使いは恐ろしく巧みで、美沙子は抗う間も無く官能の炎に包まれた。
「あっ! あっ! そ、そこは駄目ぇ……」
 目の前で突如始まった愛の営みに、武田は言葉も無く、食い入るように目を見張る。
「武田君、私と先生はずっとこうやって愛し合ってきたの。男の人とセックスできない先生と男の人が信じられなくなった私。でも、私は武田君のお陰で、武田君を好きになって、また男の人を信じられるようになったわ。今度は武田君の力で先生の心の傷を癒して上げて欲しいの」
 理沙のゆったりとした指使いに、美沙子は既に恍惚の表情に変っている。
 理沙は尚も愛撫を続けながら武田へ語り掛けた。
「さ、こっちへ来て」
 理沙の言葉に操られたように、武田は立上がると愛撫に悶える美沙子の前に立った。
「さ、先生。武田君のバスローブを脱がせてあげて」
 理沙は美沙子の耳元でそっと囁く。
 美沙子は快楽に溺れながらも帯を解き、武田の身体をバスロームから解き放った。
「あぁっ……武田君の身体……素敵……」
 目の前に現れた少年の裸体に、美沙子は悦びの溜息を漏らす。
 細身に薄く筋肉の付いた少年の肉体は中性的な魅力に溢れ、美沙子を確実に欲情させた。
 幼い顔に不釣り合いなほど逞しいペニスは既に力強く屹立し、愛撫を待ち望むように上下にヒクヒクと蠢いていた。
「先生、自分一人で気持ち良くなってないで、武田君も気持ち良くして上げて。武田君のオチンチン、先生に可愛がって欲しいって言ってるよ」
「武田君……私……」
 美沙子の両手がゆっくりと伸び、武田のペニスを優しく包み込む。
「あっ……せ、先生……好きです」
 ペニスをしごかれながら、武田は美沙子にそっと接吻した。
 濡れた唇、絡み合う舌、交換される甘い唾液。
 身も蕩ける悦楽に二人は酔った。
 理沙は美沙子の身体を武田に預け、美沙子の背後から姿を消した。
 美沙子の身体を抱き留めた武田は、その乳房に指を這わせ柔らかく揉み解く。
「あはぁ……武田君……素敵よ……とっても気持ち良いの……」
 美沙子の悦びの囀りを聞きながら、武田は濡れた花弁へと指を宛がった。
 薄く開いた肉の花弁はしっとりと潤い、内部からは熱い蜜が流れ出して、武田の指をしとどに濡らした。
 武田は美沙子の肉芽を探り当て、指先に捉えると、理沙から学んだ通りに優しく優しく爪弾いていく。
「あうっ、す、すごいわ! そ、そんな触り方、一体何処で……あっ、理沙ちゃんね! 理沙ちゃんから教わったのね!!」
 嫉妬に胸を焼かれた美沙子は、やおら武田のペニスを掴むと自らの秘唇へ宛がった。
「お願いよ、武田君! 私だけのけ者は嫌。私も、私も理沙ちゃんと同じように武田君のオチンチンで可愛がって欲しいの!!」
 美沙子の懇願に武田は驚きを隠せない。
 男とのセックスに挫折してきた美沙子が、ここまで積極的になるとは思いもよらなかった。
 すべての成り行きは、嫉妬心を利用して美沙子を焚き付けた理沙の掌の上だった。
「せ、先生、良いの? このまま入れても良いの?」
「平気よ。今日は大丈夫だから、そのまま来て! そして、私の中で射精して!!」
「行くよ、先生、行くよ!」
「来て!」
 美沙子の了承と同時に武田の腰が力強く突き出された。
 ぬるっという感触と共に熱いペニスが女体の芯を貫いた瞬間、美沙子を苦しめ続けてきたかつての悪夢が粉々に砕け散る。
「あああぁっ!!」
 悲鳴を上げながら美沙子は武田を胎内の奥底まで受け入れた。
 ペニスの先端が膣奥を叩き、その衝撃は脊髄を通して脳にまで伝わってくる。
「やったわ! やったわ、武田君!!  私、私……ひぃっ!!」
 美沙子の言葉を遮るように、武田は無言で腰のピストン運動を速めていく。
 立位という初めての体位にも関わらず、美沙子の身体をしっかりと抱き留めながら、完璧な腰使いで美沙子の膣奥を責め立てた。
「やったね、先生。これで第一段階突破ね」
 いつのまにか美沙子の背後に戻った理沙が嬉しそうに話し掛ける。
 バスローブを脱ぎ、全裸で美沙子の背後に立つ理沙の腰には、美沙子が武田を犯す際に使用したペニスバンドが装着されていた。
「でも、まだよ。これから先生は、武田君のお尻を犯した、いいえ、見知らぬ男の人達のお尻を犯してきた罪を償うのよ。このペニスバンドでね」
 理沙はそう言いながら美沙子の手にペニスバンドから伸びるディルドーを握らせた。 そこにはたっぷりとローションが塗られ、理沙が腰をくねらせるたびに、美沙子の手の中でくちゅくちゅと卑猥な液音が鳴る。
 美沙子はその慣れ親しんだ感触に苦い後悔を感じ、そして覚悟を決めた。
「ありがとう、理沙ちゃん……これで私……罪を償えるのね」
 美沙子の目に涙が光る。
 武田は一瞬、理沙を止めようともしたが、美沙子の言葉を聞いて口出しするのを止めた。
 そして、その代わりに、唸りを上げる腰の鞭で激しく美沙子の膣奥を打ち据えた。
「あああぁっ! あ、ありがとう、武田君っ!! もっとよ! もっと強く奥を突いて!!」
 美沙子は髪を振り乱して武田を受け入れる。
 そして、理沙は美沙子のアヌスにディルドーを宛がった。
「来て! 理沙ちゃん来て! 私に罰を……きつい罰を与えてちょうだい!!」
「行くよ、先生! 先生のアヌス、私のチンポでめちゃくちゃに犯してあげる!!」
 次の瞬間、理沙の華奢な腰が芸術的なしなりを見せ、完璧な腰の一撃によって、ディルドーを美沙子のアヌスに根元まで埋め込んだ。
「あひいぃぃっ!!」
 ローションを塗っているとはいえ、慣れないアヌスへの異物挿入は激しい痛みを伴う。
(あぁっ! これが……これが私の……罪……)
 引き裂かれるような痛みに悲鳴を上げながらも、しかし、美沙子は胸のつかえが取れたような爽快感を味わっていた。
 焼けた肉の杭を膣に打ち込まれ、アヌスは逞しいディルドーによって深々と刺し貫かれている。
 それは罰と呼ぶには余りに卑猥な、けれども、愛に満ち溢れた戒めの鞭だった。
「さあ、武田君、しっかり腰を踏ん張って! 二人でたくさん先生を愛してあげよ!!」
「う、うん!」
 武田と理沙は美沙子を挟み込んだまま一糸乱れぬタイミングで互いの腰をぶつけ合い、膣と直腸を引きずり出される感触に、美沙子は半ば白目を剥いてよがり狂う。
「らめえぇぇっ!!」
 いつしか痛みが快楽へと変わり、脳が崩れるほどの恍惚感に襲われていた。
 アヌスからも強烈な快感が得られるようになった美沙子は、武田と理沙に揉みくちゃにされながら、前後から襲い来る目も眩むような悦楽に全身を躍らせる。
「すごいっ! すごいのっ! 私の中で二人のオチンチンが擦れてるぅっ!!」
 一つに繋がった三人は互いに快楽を貪り、夢中で腰を振り続けた。
「せ、先生っ! 田上さんっ! 僕……僕、もう射精ちゃいそう!!」
 腰の砕けるような快感の中で、武田は迫り来る射精の瞬間に打ち震える。
「わ、私も! すごいのが来る! こんなの初めて!! 死んじゃう! 私、死んじゃうぅっ!!」
「先生っ! 武田君っ! わたしもイキそうだよ!!  一緒に、三人一緒に天国に行こう!!」
 三者三様の喘ぎ声が唸りを上げ、三人は身も心も一つになったまま絶頂への階段を駆け登っていく。
 そして、いよいよ我慢の限界を超え、武田の腰に絶頂の訪れを告げる、卑猥な痙攣が走った。
「ひぃっ! で、射精るッ!! 射精るうぅっ!!!」
 次の瞬間、美沙子の膣奥でペニスが弾け、灼熱の白濁液がビュクンッ、ビュクンッと音を発てて流れ込んでは、美沙子の子宮を焼き尽くす。
「あっ、熱ひぃいぃ! い、イクッ!! イグぅぅぅっ!!!」
「い、イクッ! イクッ! イクッ! うっ!! イっちゃうぅぅっ!!!」
 武田の膣内射精が美沙子の肉体にオルガスムスを引き起こし、同時に理沙の身体もガクガクと揺れ始めた。
 未だかつて経験した事の無い、巨大な悦楽の波に遥か高みまで打ち上げられた美沙子と理沙は、全身が粉々に砕け散るような錯覚に襲われ、意味不明の言葉を叫びながら完全に白目を剥く。
 やがて三人は同時に床に崩れ落ち、理沙と武田はヒューズが飛んだように動かなくなった。
「武田君、理沙ちゃん……本当にありがとう……」
 美沙子は全身をヒクヒクと小刻みに痙攣させながら、薄れ行く意識の中、武田と理沙に感謝の言葉を呟くと瞼を閉じて静かに失神した。
 精根尽き果て、死んだように眠る三人を、窓から差し込む真っ赤な夕陽がいつまでも優しく包み込んでいた。<了>

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