熟母交姦

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第四章 問答無用の童貞喪失

 始まりは休日の昼前だった。
 深夜までネットゲームに打ち興じ、心地良い惰眠を貪っていた巧の頭上で、普段は鳴る事のほとんどない携帯が鳴り出した。
 いきなり渋谷に呼び出され、何かと思って行ってみるとモヤイ像の前に夏樹がいた。
 メン・イン・ブラックさながらのサングラスをかけ、胸元のぱっくり開いたボディ・コンシャスな白ワンピースに身を包み、下半身は極薄の黒いパンティーストッキング、高々と踵を上げた赤いピンヒールの脚を斜めに突き出して、汚れた渋谷の歩道に仁王立ち、剥き出しの細い腕を組んで待っていた。
 だらしのない格好の若者ばかりがたむろすその場所で、完全武装の夏樹は明らかに浮いており、巧は声をかけるのを躊躇ってしまう。
 すると、巧に気づいた夏樹はワンピースのぴっちりと張り付いたヒップを左右に振りながら、こつこつと踵を鳴らして優雅に歩み寄ってくる。
 そして、目の前で立ち止まり、つるを摘んでサングラスを少し引き下げると、巧を見下ろしひと言。
「来たわね、ダーリン」
 周囲の視線がぶすぶすと音を発てて全身に突き刺さる。
 あんぐり口を開けたまま、巧は涙目でガクガク、ブルブル……ガクブル、ガクブル……。
「なぁにぃ、あのオバサン……あんなガキとシブヤで何するつもりぃ? 逆援? 通報しとくぅ?」
「証拠写真、撮っとこっかぁ?」
 頭の悪そうなブレザー姿の茶髪女子高生コンビが、きゃっ、きゃっ、とはしゃぎながら二人して携帯電話のレンズをこちらに向けた。
 すかさずサングラスを外した夏樹はレンズに向かってにっこり微笑み、
「あら、ありがとう。今日は息子から童貞を奪う大事な日なの。記念写真だから綺麗に撮ってね」
 軽く腰を屈めて抱き寄せると、巧の頬に真っ赤な唇を堂々と押し当てる。
 さすがの女子高生たちも、これには目を剥いて絶句、手から滑り落ちた二つの携帯は歩道に跳ねて仲良く電池をぶちまけた。
「さ、行きましょう」
 呆然としている女子高生たちを尻目に、夏樹は余裕で巧の腕を絡め取り、ヒップを振り振り歩き出す。
 頬に紅い花を咲かせた巧はもう何が何やら、アホの子のようにぽけーっとなったまま、夏樹に腕を引かれるばかりだった。

「い、いったい……さっきのはなんだったんですか? そ、それに息子とか童貞を奪うって……」
「せっかくの初エッチデートなんですもの。若い娘たちに見せつけてやりたいじゃない」
 くすくす笑いながら、夏樹は真っ白なハンカチで巧の頬を拭いてくれた。
「だ、だからって……あんな……って、初エッチデートっ!? で、電話じゃ服を買うから付き合うように……って」
「あうぅん……なんだか私、疲れちゃった。ねえ、たっくん、ちょっと休んで行きましょうよ。ねっ? こ・こ・で」
 しっかりと絡めた巧の腕に豊かな柔房をぐいぐい押し付け、夏樹は見え見えの小芝居を打つと、肩の上に頬を乗せてしなだれかかってくる。
「まだ10分も歩いてないでしょ! あっ……ふ、服を買うっていうのは嘘だったんですね!? さ、最初から……そのつもりで……」
 もちもちとしたバストの感触に心臓をばくばく言わせながら、巧は抗議する。
 頭ひとつ分、背の高い夏樹を支えるのは大変で、細身の巧はよろよろとよろめいてしまう。
 その拍子にウエストから下腹部までを腰に押し付けられ、ぐにゃりという卑猥な肉の触り心地に息を呑む。
「そ、それに……休んでいくって……こ……ここは……」
 夏樹の身体から立ち上る少しきつめの香水の匂いに頭はくらくら、動揺する巧の視線の先にはピンク色のプラカードが二枚貼られていた。
 ご宿泊 \7,400
 ご休憩 \4,200
「気付くのがお・そ・す・ぎ。だめよぉ、そんなに鈍感なことじゃ。年上の女に呼び出された時は用心しなくっちゃ。たっくんみたいな可愛い男の子は、ぼぅっとしてるとすぐにむしゃむしゃ食べられちゃうんだから」
 そして、返事をする暇も与えられず、巧はパステルオレンジのド派手な壁に囲まれた、妙に卑猥な雰囲気漂う大人のお城に連れ込まれてしまうのだった。

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