熟母交姦

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第三章 秘密

 午後三時、美雪と夏樹は今日もリビングで二人、和気藹々とお茶を飲んでいた。
 話題は勿論、それぞれ実行した誘惑のあらましと、達也たちの反応についてだった。
「スリル満点だったわよ。水着売り場の試着室でするのって。たっくんがイクとこ、美雪さんにも見せてあげたかった。すっごく可愛いかったわ。私の水着に二度も射精してくれたの」
 夏樹はデパートでの一件を思い出して悩ましい溜息を吐く。
 その様子からは恐れや後悔といった感情は微塵も感じ取れない。
 店員にバレたら逮捕確実というシチュエーションを演出し、あっさり乗り切る夏樹の大胆不敵さに改めて美雪は驚かされた。
「ねえ、うちの勇介はどうだった? あの子、何も言ってなかったけど、上手くできたのかしら」
「え、ええ……勇くんも随分と頑張ってくれたわ。アンダースコートの匂いを嗅いでるところを一回手でイカせてあげて、そのあと口の中にもう一回射精してくれたの」
「まあ、美雪さんったら、フェラチオまでしちゃったの!?」
 驚いたように夏樹が言った。やはりやりすぎだっただろうか。
「抜け駆けはずるいわよ、美雪さん。私だっておしゃぶりしたいところを手コキで我慢したのに……。良いわ、次はたっくんもたっぷりと口で抜いてあげるから。でないと私の気が済まないもの」
「ご、ごめんなさい。成り行きでつい……でも、次って?」
 またあんな危険な真似をするつもりなのか、と美雪は心配になった。
「何言ってるの? あの年頃の男の子なんて、一晩寝たら完全に精力回復よ。それどころか、タンクが溢れて夢精しちゃうわ。だから浮気を防ぐためには定期的に抜いてあげないと駄目なの。旦那と一緒でね」
 夫の話が持ち上がり、美雪は胸が塞ぐ思いだった。
 自分が積極的に求めないから、風俗通いなどするのだろうか。
「ねえ、夏樹さん。その……旦那さんとは……夜の方はどうなの?」
「あら、美雪さんらしくもない露骨な質問ね」
「ご、ごめんなさい……」
 非常識な質問をしていると自分でも思う。けれど、ほぼセックスレスになっている夫との関係を思えば、訊かずにはいられなかった。
「フフフッ、良いのよ、別に。この手の話は主婦の間では当然ですもの。今までが無さ過ぎたくらい。でも、そうね……うちはもう随分とご無沙汰よ。この間したのはいつだったかしら?」
「夏樹さんのところもそうなの!?」
 ついソファから身を乗り出して訊いてしまう。
 自分の家だけではないとわかって、美雪は内心ほっとしていた。
「その様子だと、美雪さんの所も同じみたいね。でも、旦那さん出張ばかりで家にいないんでしょう。それじゃ仕方ないんじゃ無いかしら? うちなんて毎晩家にいるのにほったらかしよ。それに較べればまだマシじゃない」
「でも、でも、たまに帰って来ても、疲れてるから寝かせてくれって、むこう向いて寝ちゃうのよ? なのに風俗店とかにはしっかり行ってるみたいだし。昔は久しぶりだからって、いっぱいしてくれたのに……」
「いっぱいって、どのくらい?」
「二人とも若かったから、一晩で五回とか六回とか……」
「かぁっ!……まったく、聞いてらんないわね」
 呆れ顔で冷めたアップルティーを飲み乾すと、夏樹は投げやりな口調で言った。
「要はやりすぎて美雪さんの身体に飽きたってことなんじゃないの?」
「ひ、ひどいっ! ひどいわ、夏樹さん!!」
「あーうそうそ、冗談よ。私たちくらいの年になったらね、きっとどこも同じなのよ。どんなに若作りして見せたって肌の張りは無くなってくるし、風俗行けばお肌ぴちぴちの若い子と出来るんだから、そりゃ旦那も行くわよね。きっとうちのも行ってるわよ。バレないようにやってるだけで」
 あまりに身も蓋も無い物言いだったが、反論の余地はなく、美雪はがっくり肩を落としてしまった。
「紅茶……淹れ直してくる」
 力無く立ち上がり、すごすごとキッチンへ逃げ出した。
(そうよね……もう若くはないものね)
 茶葉を交換しながら、美雪は心の中で呟く。
 夏樹の指摘は痛いところを突いていた。
 老け込むには早すぎるが、もう若くはない。
 確かにそれは事実だった。
「ごめんね、美雪さん」
 耳元で囁きが聞こえたかと思うと、いきなり背後から抱きすくめられ、首筋にキスされた。
「えっ!?」
 驚きに身を固めて恐る恐る振り向けば、左肩の上に夏樹の顔が乗っていた。
「ちょっと苛め過ぎちゃったかなって……」
 夏樹は申し訳なさそうに言う。普段は高飛車な彼女がいつになくしおらしくなってしまい、美雪は余計に悲しくなった。
「いいの、夏樹さん。夏樹さんの言ってること、全部ほんとのことだし。夏樹さんみたいにはっきり言ってくれた方がわかりやすいから」
「そう言ってもらうと助かるわ。でも、さっきの話には続きがあるの。こんなこと言ったら美雪さんの旦那さんに悪いけど、いないならいないで息子と二人きりになれるんだからいいんじゃない?」
「そ、それは……」
「私、今さら旦那に抱かれたいなんて思ってないもの。抱かれるなら勇介やたっくんが良いわ。そういう意味じゃ私も旦那と同じなのかもしれない。美雪さんはどう?」
 訊かれて美雪は考えた。自分は今でも夫に抱かれたいのだろうか、と。
「言われてみると、そうでもないかも……」
「でしょう? なにも相手が旦那でなくても良いの。必要なのは自分を女として求めてくれる人間で、尚且つ身体を預けても良いくらい安心できる相手、私たちにとってはつまり息子たちがそれよ。大体、勇介とした時はどうだったの。良くなかった?」
 勇介のペニスを夢中でしゃぶりながら、失神するほど感じまくったことを思えば、口が裂けても良くなかったとは答えられなかった。
「よ、良かったわ。恥かしいけれど、指だけでイカされちゃったし」
「フフフッ、誘惑しただけじゃなく、しっかりと楽しんだって訳ね。私も同じよ。たっくんにきっちりイカされて、試着した水着のクロッチを汚しちゃったわ。ちゃんと教えればあの二人、きっと最高のセックスパートナーになる筈よ」
 息子たちに性犯罪を起こさせまいと始めた計画が、いつしか自分たち寂しい母親の為の愛人育成へとすり替わっていた。
「ねえ、美雪さん。今後を考えたら、私たちもっと親密になる必要があると思わない?」
 耳元で囁いた夏樹は、美雪の腰を抱き締めていた腕を解いて、やんわりバストを鷲掴む。
「な、夏樹さんっ! いったいなにを……」
「旦那さんも勿体無いわね。美雪さん、こんなにいい身体してるのに」
 夏樹は問答無用でワンピ―スとブラの上から正確に乳首を探し出し、指先で優しくつねる。その指使いと力加減はさすが同性、女の身体を知り尽くしている為、抗う間も無く美雪は喘ぎ声を上げてしまう。
「あっ……くぅんっ!」
 拒むよりも早く身体は勝手に反応し、乳頭から全身へと広がって行く快感に思わず身をよじった。
「や、止めて、夏樹さんっ。女同士で……こ、こんなことしちゃいけないわ」
「どうして? 私たち仲良しでしょ。セックスは最高のコミュニケーションっていうじゃない」
「そ、それはそうだけど……」
「実を言うとね、ずっと美雪さんを狙ってたの。だって胸もお尻も、私なんて比べ物にならないくらいグラマーなんですもの。嫉妬しちゃうわ」
 夏樹は片手で乳頭をこね回しつつ、もう片方の手をヒップの谷間へと滑り込ませた。
「ひゃあっ!!」
 慌てて美雪は逃れようとするが、背後からぴたりと擦り寄られ、シンクとの間に挟まれている今の状態では身動きが取れない。
 かといって夏樹相手に乱暴な真似はできず、万事休す。
「美雪さんは私のこと嫌い?」
 耳元で悲しげに訊かれてしまうと、美雪はもう拒絶できなかった。
「す、好きよ……夏樹さんはいつだって私のお手本だったんですもの」
 人付き合いの苦手な美雪にとって、夏樹は心を許せる数少ない友人の一人だ。
 常に颯爽としている彼女はまた、おっとりした性格の美雪には憧れの的でもあった。
 その夏樹から、夫すら手も触れない身体を求められては、拒める筈もない。
「嬉しいわ、美雪さん。私も美雪さんが好き」
 夏樹はそう言って、美雪のうなじに唇を押し当てた。
 火傷するほど熱い体温が肌を焼く。
「あぁ……夏樹さんの唇……あ、熱い……」
 悦びの溜息を漏らして美雪は一切の抵抗を諦めた。
 すでに勇介と情事を持った自分なのだから、その母親である夏樹に抱かれて悪いわけはあるまい。
 美雪は詭弁地味た言い訳を自分にして、夏樹に身を任せてしまう。
「女とキスした経験はある?」
 黙って首を横に振ると、夏樹はすっかり従順になった美雪を振り向かせ、躊躇いもせずに唇を奪った。
「あむっ……んんんっ……」
 貪るような乱暴さは無く、つかず離れずの切ない接吻で優しく誘いをかけてくる。 ルージュを引いた夏樹の唇はうっとりするほど柔らかくて、重ねた唇同士がひとつに溶け合ってしまいそうだ。
 すっかり気の緩んだところに、すぐさま長い舌が滑り込んで、小さな舌を絡め取る。
 たっぷり唾液を滴らせ、今度は息もつけないくらい濃密な触れ合いに変化する。
 夫や勇介とは比較にもならない、魂を吸い取られるような夏樹のキスは、お気に入りのアップルティーの味がした。
「ソファへいきましょう。女同士の良さを身体に教え込んで、旦那さんを忘れさせてあげる」
 ゆっくり引き抜いた舌で思わせぶりに唇を舐め回し、夏樹の瞳がにやりと笑う。
 その美しくも恐ろしい笑顔に魅入られて、美雪はただ呆然と頷くしかなかった。

 リビングのソファに埋れながら、美雪は再び情熱的なキスの洗礼を受けていた。
 艶かしい舌使いで美雪を翻弄する夏樹はソファの脇に跪き、魔法のような手つきでワンピースの上からブラのフロントホックを外すと優しく乳房をまさぐってくる。
「んっ!……んっ!……んっ!」
 またしても乳頭へのピンポイント攻撃に晒され、唇を塞がれたままで美雪は喘いだ。
(こ、これが……女の人とのセックスなの? キスの仕方も身体の触り方も男の人とはぜんぜん違うわ。あぁ……な、なんて気持いいの。夏樹さん、私の弱いところを全部知ってるみたい……)
 恥かしがり屋の美雪は自分の性感帯を夫に告げられず、不完全燃焼のまま夜の営みを終えてしまうことが多かった。
 それを見抜いているのか、夏樹は初めて睦み合うというのに、即座に美雪の弱点を探し出して執拗に愛撫を加えてくる。
「ふぅっ……ずいぶんと欲求が溜まってるみたいね。美雪さんの身体、すごく敏感になってるわ。それとも元から感じやすい体質だったのかしら?」
 ようやく美雪の唇を解放すると、一息吐いて夏樹は訊いた。
 しかし、返事は返ってこない。
「あらあら……美雪さんったら、すっかり目がとろんとしちゃって、もう降参なの? 本当に感じやすいのねぇ」
 くすくす笑い出す夏樹の目の前で、美雪は全身の骨を抜かれたようにぐったりとなって、柔らかいソファに沈み込んでいた。
 よく見ると、濃密な接吻の余韻に、感電でもしたみたいにぴくりぴくりと身体は小刻みに痙攣している。
「だ、だって……夏樹さんの唇も舌も指先も、嘘みたいに気持ち良いんですもの」
 ようやく口を開いてはみたが、頭の中はまだぼうっとしており、夢現の状態だった。
「フフフッ、お褒めに預かりまして光栄ですわ、奥さま……なんてね。こう見えても、中、高、大って、ずっと女子校だったのよね。なんでか知らないけれどモテてモテて、あろうことか男よりも先に女を知っちゃったの。自慢じゃないけど、私のテクでイカなかった娘は一人もいないわよ?」
 言われて美雪はようやく納得した。さらさらのショートヘアに細身の長身、宝塚もかくやという美貌が女子校でモテない筈がなかった。
 それに比べて、ずっと共学通いの美雪はどちらかと言えばぐずでのろまな亀タイプ。 その癖、少女漫画に憧れてテニスなど始めたものだから目も当てられない。
 完全にドジっ子という役回りを引き受けてしまい、幾度か憐れみ混じりの告白を受けた他は、総じて暗い学園生活を送ったのだった。
「まるで月とすっぽんみたい。学生時代に出会っていたら、私なんて相手にしてもらえなかったでしょうね」
「何を言ってるの? 私、美雪さんみたいに初心な子が一番の好物だったのよ? もし出会ってたら、美雪さんのバージンは確実に私が頂いてたわ。こんな風にね」
 ワンピースのスカートを捲り上げると、夏樹はショーツのクロッチに指を這わせた。
 くちゅりと卑猥な音がして、白魚のような中指でクロッチ越しに美雪の秘唇をくすぐってくる。
「あっ! そ、そこは……いやぁっ……」
「ちょっとキスして胸揉んだだけでショーツはグショ濡れ、しかもクリトリスまでこんなに硬くしこらせておいて、いやもなにもないでしょうに」
 夏樹は勃起した尖りをそっと摘まんで、乳首同様に優しくこね回した。
 愛液に濡れたコットン生地と擦れ合い、身体中で最も敏感な肉の芽が悲鳴をあげる。
「んぁぅうっ……よ、よして、夏樹さん! いきなりそこばかり苛めちゃいやっ!!同じ女なんだから、わかってる筈よ」
 美雪はふとももを重ね合わせて抵抗するが、股間から流し込まれる痺れるような快電流に力は抜け落ち、ふとももはぐにゃりと緩んでだらしなく股を開いてしまった。
「ほら、だんだん腰が砕けてきた。もう力が入らないでしょう? こうなったら女はお終い。どんなに抵抗しても無駄なの。きっと牝の本能ね。もっと気持ち良くなりたいものだから、身体は美雪さんの言うことなんて聞いてくれないわ」
 自信たっぷりに言い放った夏樹はクリトリスを摘んでいた指をいったん離し、今度は中指と薬指で強く圧迫しながら、左右に激しく擦り立ててくる。
 それは美雪が自分を慰める際、オルガスムスへと駆け登る為のラストスパートに使う、もっともお気に入りの手法だった。
 押し潰されたクリトリスから包皮を捲り取られ、いよいよ剥き出しになった女芯はクロッチと直接こすれて、目の前にぱちんと火花が散った。
「あっ、あひぃぃっ!!」
 背骨の蕩けるような快感に歯を食い縛って、美雪は腰を突き上げる。
 夏樹の指使いに迷いはなく、女の秘孔をこれでもかと的確に突いてくるので、あれよあれよ言う間に腰砕けの状態になって、身体の芯から欲求不満がとろりと溶け出す。
 悦びの痙攣に襲われた下半身はコントロールなど効かず、意志に反してびくんびくんと派手に跳ね上がってしまった。
「旦那さんに相手にされないからって、いつもこうして自分で慰めてたんでしょう? 寂しかったわね。でも、今日からは私がいるわ。美雪さんの欲しいときにいつでも可愛がってあげる」
「あんっ! あんっ! あんっ! ど、どうしてそれを……」
「いったい何年、女をやってると思ってるの? 身体が寂しいときはね、女はみんなこうするものよ。フフフッ、どうやらもう我慢できないみたいね。美雪さんの腰、ひくひくいってるもの。いいわ、このまま一度イカせてあげる。そうすればもっと感じやすくなるし、その後でたっぷり時間をかけて、泣くほど気持ち良くしてあげるわ。それこそ、おしっこ漏らすくらいにね。覚悟なさい」
 夏樹はいっそう忙しなく指を震わせた。股間から響く液音が騒がしくなり、下半身を襲う強烈なバイヴレーションに美雪は全身を戦慄かせて悲鳴をあげる。
「あっ! あぁっ! うぅっ! は、激し……激し過ぎるわっ、夏樹さん! そんなにしたら私、壊れちゃうっ! 壊れぢゃうぅっ!!」
 今だかつて経験したことのない、目も眩むような快感の連続だった。
 拳を堅く握り締めて両脚を突っ張らせ、足の指を引き絞って懸命に耐える。
 少しでも気を緩めたら、神経が焼き切れてしまうのではないかと思った。
「まだまだ! これからが本番よ。私の指でイキ狂いなさい!!」
 美雪を叱咤すると、夏樹は空いている手で乳房を揉みし抱き、乳頭をつねり上げる。
 乳首とクリトリスという敏感な性感帯を上下から同時に責め苛まれ、美雪の肉体はパニックに陥った。
「あへぇっ! もう無理っ! 無理なの、夏樹さんっ!! 私、いくっ! イクわっ! もうイグのぉっ!!」
 引き攣った身体中の筋肉が限界まで張り詰め、びっしょりと冷や汗を掻く。
 もはや気持いいなどというレベルではなかった。快感というの名の鋭い鞭で滅多打ちにされ、心身をズタボロにされる拷問そのもの。
 美雪は弓なりに背筋を反らせ、ひときわ大きく腰を突き上げると、その頂点で壊れた機械人形のようにガクガクと痙攣した。
「いっ、いぐぅぅぅっ!!」
 膣洞の奥底に眠る子宮で核爆発が起こった。発狂するほどの快感が灼熱の爆風となって神経を焼き尽くし、身体の隅々まで広がって行く。
 頭蓋の中で脳は粉々に砕け散り、美雪の精神は炸裂するオルガスムスの直撃を受けて脆くも崩れ去った。
「一丁あがりって感じね。美雪さんったら、どうやら本物のアクメを知らなかったみたい。失神はしてないけど、完全にあっちの世界にイッちゃってるわ」
 虚ろな瞳で虚空を見つめ、薄く開いた唇の端から涎を一筋垂らして、美雪はひくひくと身体を痙攣させるばかりだった。
 どうにか意識は保っていたが、激しすぎるオルガスムスの余韻に、自分の意志では指一本動かすことができない。
 張り詰めていた筋肉は緩み切り、噴き出した汗が小さな粒となって全身の肌に浮き出しては、ワンピースと下着をぐっしょり濡らしていた。
「でも、まだ勘弁してあげない。せっかく女に生まれて来たんですもの、男では絶対に味わえない、底無しの連続アクメを味わわせてあげなきゃね」
 身動きできない美雪のワンピースを胸元まで捲り上げ下半身を露出させると、夏樹は容赦なくショーツを引き下ろして取り去った。
「美雪さんは本当に濡れやすいのね。まるでお漏らしでもしたみたいよ。ショーツが完全にお釈迦になってる」
 剥ぎ取ったショーツは絞れば新鮮な愛液が滴るほど、濡れて重たくなっていた。
 夏樹は丸めたショーツをフローリングに投げ捨てソファに登る。そして美雪のふとももを限界まで開脚させ、濡れそぼってふやけた淫裂を剥き出しにさせた。
「綺麗よ、美雪さん。色素が薄くてピンク色してる。現役の高校生だってこんなに綺麗なおまんこしてる娘そうはいないわ」
 オルガスムスを迎えた直後の秘唇は薄開きになって、スリットの下端に穿たれた小さな膣孔からとろとろと透明な愛液を垂れ流していた。
 左右の肉びらは濡れ光り、上端のクリトリスは痛々しく勃起して、オルガスムスの余韻に震えている。
 美雪の股間に顔を近づけ、夏樹は伸ばした舌の先でスリットをそっと舐め上げた。
「あっ……あぅうっ……」
 イッたばかりで過敏になっている女性器の粘膜を直接舐め取られ、火傷のようなひりつく痛みを伴う鋭い快感に身体の芯を刺し貫かれる。
 美雪は反射的に身をよじって逃れようとするが、下半身はすっかり脱力して反応が鈍く、夏樹の手によって簡単に押さえ込まれてしまった。
「駄目よ。イッたばかりで辛いのはわかるけど、これを乗り越えないと女の真の悦びは味わえないわ。優しくするから少しだけ我慢してちょうだい」
 子供をあやすように囁いた夏樹は、美雪の性感を過度に刺激しないようたっぷりと舌に唾液を絡めて、スリットの上端から下端までをゆっくり往復し続ける。
 決してクリトリスに触れず、細心の注意を払いながら優しい愛撫を加え、ひたすら性感の回復を待つ。
「どう?……だんだん良くなってきたでしょう」
 夏樹の舌使いは小春日和に吹くそよ風のようだった。
 ほんの少しくすぐったいけれど、身体が宙に浮き上がりそうなくらい心地良い。
 だんだん腰の中心が暖まってきて、やがて背筋が震えるほどの幸福感に襲われる。
「あぁ……ま、またよくなってきたわ、夏樹さん。終わったばかりなのに私……こんなに早く戻ってこられるなんて知らなかった。なんだか蕩けそう……」
「フフフッ、美雪さんはイキやすいけど、回復も早いみたいね。これなら新記録を狙えそう。し込み甲斐もあるわ。先が楽しみよ」
 夏樹は妖艶な笑みを浮かべて再び秘唇に舌を這わせる。
 今度は堅く尖らせた舌先で肉びらを割り、膣の中へと舌を滑り込ませた。
「あぅっ……な、中に……お腹の中に夏樹さんが入ってくるぅっ……」
 驚くほど長い舌が胎内深くまで侵入してきて、膣壁をぐるりとひと巡りする。
 身体の内側を舐められる感触は恐ろしく卑猥で、まるで夏樹に貪り食われているような錯覚を覚える。
 夫が相手では決して味わえない、ひだの奥の奥まで舐め取る夏樹のテクニックに、美雪は腰を戦慄かせて悦びの溜息を漏らす他なかった。
「匂いも味もきつめだわ。どうやら生理が近いみたいね。美雪さんの中、ひくひく蠢いて、おちんちんを欲しがってるみたいよ」
「は、恥かしいわ、私っ……そんなこと言うなんて、夏樹さん意地悪よ」
 夏樹の言葉責めに、思わず美雪は両手で顔を覆ってしまう。
「ごめんね。美雪さん可愛いから、つい苛めたくなっちゃうの。それはそうと、残念ながら私にはおちんちんついてないから、今は指で我慢してね」
 夏樹は右手の中指を咥えて湿らせると、指先をそっと膣孔に引っ掛け、ゆっくり回転させながら狭い胎内へと潜り込ませた。
「うっ!……」
 股間を食い破られるような挿入感に美雪は息を詰まらせ身を硬くする。
 何度経験しても慣れることのない瞬間だ。
「わぉっ、美雪さんのここ凄いわねぇ。指一本でもきつきつよ。お肉がきゅんきゅん締め付けてくるわ」
「そ、そうかしら?」
 性器に指を突っ込まれた状態で褒められても、喜んで良いかわからなかった。
「こんなに具合が良いんじゃ、旦那さんはひとたまりもないわね。入れたらすぐに終っちゃうんじゃない?」
「そう言われると……早い方かもしれない」
 美雪に自覚は無かったが、夫の方は挿入しても三分と持たずに射精してしまうのが常だった。
「でも、それは旦那さんが早漏なんじゃなくて、美雪さんの方が名器なのよ。私の指、咥え込んで放さないどころか、奥へ奥へと呑み込もうとしてるもの」
 指先で膣壁を弄りながら、夏樹は感嘆の溜息を漏らす。
「それにほら、この壁の凹凸。それぞれが吸盤みたいに吸い付いてくる。私が男だったら、これを思い切り味わえたのに……はぁ、本当に残念よ」
 今度は落胆の溜息を吐いてがっくりと肩を落とした。
「まあ、落ち込んでても仕方ないわ。切ないけれど今は指で我慢する。その代わり、この指を私のおちんちんと思って受け入れてね」
 夏樹は中指の先で螺旋を描くように狭い胎内を抉り、膣肉の収縮をほぐしながら、ゆっくりと抜き差しを繰り返す。刺激を受けてたっぷり分泌された愛液は恰好の潤滑剤となり、徐々に指の滑りが良くなってくる。
 それにともなって快感も増して行き、美雪は再び恍惚の境地へと送り返された。
「はぁ……ふぅ……はっ……あぁん!」
 膣への異物挿入は他の愛撫とは全く異なる性感を呼び覚ます。
 それは生殖行為としてのセックスが持つ原始的な刺激が、理性の中に眠っている牝の本能を目覚めさせるからかもしれない。
 まして美雪は久しく本物のペニスを受け入れていない。身体はすっかり飢えている。
 きつく瞼を閉じ、言われた通り、挿入された指を夏樹のペニスと思って胎内深く受け入れると、まるで股間から生えたペニスで夏樹に犯されているような気分になって、狂おしいまでに欲情してしまうのだった。
「あぁっ! もっと、もっと奥まで突いて! 私、夏樹さんのが欲しいの!!」
「乗ってきたわね、美雪さん。良いわよ、リクエストに応えてガンガン責めてあげるから覚悟なさい!」
 中指に薬指を加えて挿入する指を二本とし、夏樹は膣を裂かんばかりのスピードでピストン運動を繰り返す。
 胎内より掻き出された愛液が、M字に開いたふとももに飛び散って流れ落ちていく。
「うっぅーっ! すごいの! 夏樹さんの指、すごく気持ち良いの!! もっとちょうだいっ! 私のオマンコめちゃくちゃにしてっ!!」
 獣のような雄叫びを挙げて、美雪は自らも腰を突き動かす。
 もはや恥も外聞もなかった。ただ夏樹から与えられる快楽だけを求めて、力の限り腰を振る発情した牝猫だった。
 そうして激しい手淫が続けられるうちに、今だかつて性行為中には感じたことのない尿意が美雪を襲う。
「あっ……な、なに? 嘘、お、おしっこ出そうになってる! 待って夏樹さん、私、おしっこ漏れそうなの、トイレに行かせて!!」
「良いじゃないの、このままお漏らししちゃいなさい」
 信じ難い夏樹の返答に美雪は耳を疑った。
 見つめ返す彼女の目は意地悪く笑っている。
 どうやら本気で失禁させるつもりらしい。
「ゆ、許して! それだけは許してちょうだい!!」
 美雪は必死に懇願する。この年齢になって人前で失禁するなど、到底耐えがたい恥辱だった。逼迫していく尿意とは裏腹に性感は高まり、再び訪れたオルガスムスの予兆に膣肉が不規則に収縮し始める。
「あらあら、美雪さんったら、またイキそうになってる。おまんこが引き絞られて指が千切れそう。おしっこ漏らしながらイクのはきっと最高に気持ち良いんでしょうねぇ、ウフフフッ……」
 サディスティックな微笑を投げかけて、夏樹はいっそう激しく膣を責めたてる。
 そうしながら美雪の下腹部を圧迫し、強引に膀胱から尿を絞り出そうとした。
「ひいぃぃっ! そ、それだけは止めてっ!! ほんとに無理っ! 出ちゃうっ! おしっこ出ちゃうぅっ!!」
 狂ったように叫んだ瞬間、美雪の股間から熱い飛沫が勢い良く噴出した。
 しかしそれは、無色透明で匂いもまるでない、尿とは異なる液体だった。
「これはおしっこじゃないわ。こ、これはっ……」
 驚愕の表情で見つめる夏樹の目の前で、正体不明の液体は確かに尿道から噴き出し、噴水のように飛び散り続けた。
「いやっ! いやぁあっ!!」
 あまりの羞恥に美雪は下半身から顔を背け、歯を食い縛って恥辱に耐える。
 そんな美雪を嘲笑うかのように、今日二度目となるオルガスムスの脈動が怒涛となって襲いかかった。
「こ、こんな時に……またなの!? またイクの!? 私、また……ああぁっ!! またイクぅーっ!!」
 泣きっ面に蜂とはこういうことか。美雪は身を引き裂く快感の中でのた打ち回りながら、股間から放水をぶちまけてアクメに達した。
 脳の中心で眩い閃光が炸裂し、熱い突風に吹き上げられて、美雪の肉体は螺旋を描きながら悦びの空へと飛翔する。
 絶頂感に耐え切れず、反射的に高々と腰を突き上げた為、飛び散った飛沫がぬるい雨となって顔や乳房にたっぷりと降りかかった。
 もう声をあげる余裕も無かった。毛穴という毛穴から粘り気のある油汗を噴き出し、息も絶え絶えになって、狂ったように髪を振り乱しては子宮の奥底から絶え間なく放射されるアクメの波動を受け流すしかない。
 全身にびっしりと鳥肌の立つ爽快感の後にやってきた、脳髄の蕩けるような心地良さに美雪の瞳はとろんと焦点を失い、柔和な微笑を浮かべた唇の端を一筋の涎が滴り落ちた。
 どれだけそうしていたのだろう。やがて股間の放水が収まった時、美雪はソファにだらしなく四肢を投げ出し、白目を剥いて失神していた。

「う……ん……」
 失神から目覚めて、初めて感じたのは再び快感だった。
 ねっとりと絡みつくような快感が股間を蕩けさせる。
 何事かと思って見れば、脱力した美雪の片脚を高々と持ち上げ、ふとももをしっかりと抱いた夏樹が切なげな表情で腰を突き動かしていた。
「目が覚めた? 美雪さん、潮吹きながらイッて、そのまま失神しちゃったのよ」
「潮……吹き?」
 美雪は失禁したのではなかった。女性がオルガスムスを迎える際、愛液とも尿とも異なる液体を噴出させる、俗に潮吹きと呼ばれている現象を体験したのだ。
「私も初めて見たわ。凄かったわよ。ソファもフローリングも私の服もびしょ濡れ」
 そう言って笑いながらも、夏樹は股間を擦り付けてくる。
「私……お漏らししたんじゃなかったのね。良かった……でも、夏樹さんは何をしてるの?」
「私? 私はね……美雪さんをレイプしているのよ」
 臆面もなく言い切った夏樹は、スカートもストッキングもショーツさえも脱ぎ捨てて、下半身を剥き出しにしていた。
「美雪さんが失神した後、我慢できなくなってね。私も気持ち良くなりたくって、美雪さんをこうして襲っちゃったの。ちなみにこれは貝合わせっていうテクニックよ」
 夏樹が言うには、女性同士がペニスバンドや双頭バイブレーターを使わずに愛し合う為の手法らしい。
 先ほどから股間に感じる不思議な感触は、自分と夏樹の女性器同士が絡み合い、擦れ合う感触だったのだ。
「ひ、酷いわ……こんなのって」
「ええ、私もそう思う。でも、待ってちょうだい。私は美雪さんと愛し合いたかっただけなの。美雪さんは二度もイって、潮吹いて一人で失神しちゃって、私は置いてきぼり。これは少し不公平じゃないかしら?」
「そ、それは……」
 失神から目覚めたばかりの美雪はまだ頭がぼうっとしていて、夏樹の弄する詭弁にあっさり嵌まってしまう。戸惑う美雪に、夏樹は畳みかける。
「それにどう? 美雪さんは気持ち良くない? 私たち今、ひとつになってるのよ。つまりセックスしているの。こんなに素敵な瞬間って他にある?」
 夏樹は抱えた美雪のふとももを抱き締め、ことさら強く秘唇を擦りつける。
 真っ赤に充血した女性器同士が接吻を交わすように互いを食み、粘膜と粘膜がひとつに溶け合って腰も砕ける気持ち良さだった。
 心の中で抗議しつつも、美雪は絶えず与えられ続ける快感と夏樹への愛情、そしてソフトレイプの興奮に溺れてしまう。
「私を許してくれる? 美雪さん」
 夏樹の問いにこくりと頷いて美雪は言った。
「私、夏樹さんが好きよ。だから……私を犯して」
「あぁっ、美雪さんっ、私も好きよ。貴方が好きなの」
 感極まったように夏樹は美雪の唇を貪った。
 激しく舌を絡ませながらのディープキス。上下二つの唇が一つに溶け合い、美雪と夏樹は長年培った友情を飛び越えて深く結ばれた。
「ねえ、美雪さんは気付いてるかしら? さっきからずっと覗かれてるの」
 ゆったりと腰を使いながら夏樹が言った。
「えっ!?……」
 美雪もまた腰を蠢かしつつ答える。
「安心して良いわ。覗いてるのはたっくんと勇介よ。学校から帰って、そのまま遊びに来たのね。そしたら私たちがリビングでこんなことしてたってわけ」
「ど、どうすれば良いの? わ、私たち、こんな……」
「良いじゃないの、気がつかない振りをして見せつけてあげれば。仲良きことは美しきかなってね。せっかくだから大人の、それも女同士のやり方を勉強させてあげましょう。きっとあの子たちも喜ぶと思うわ」
 母親二人が下半身を擦り合わせてよがっている姿を、息子たちはどんな思いで見つめているのか、美雪には想像もつかなかった。
 ただひとつ確かなのは、今現在の行為を中断したくないという思いだけだった。
「続けて夏樹さん、ずっと見られていたのなら、今さら取り繕っても仕方がないもの。それに私……恥かしいけれど、また気持ち良くなってきちゃったの」
「話がわかるわね、美雪さん。私も良くなってきたわ。この分なら、二人で一緒にイケそうよ」
 夏樹は鼻息荒く答えると楕円を描くように腰を忙しなく振り始めた。
(ごめんね、達也……こんなエッチなママでほんとにごめんね……)
 心の中で謝りながら、美雪もまた激しく腰を蠢かし、濡れそぼった秘唇を夏樹のそれに精一杯こすり合わせていく。
 接合部から生まれた快感が同時に二人の肉体へと流れ込み、母親はそれぞれ異なるハイトーンで艶かしい喘ぎを上げた。
「はっ……あぁんっ! す、すごいわ、美雪さん。こんなの久しぶりよ。これだけは男が相手じゃ楽しめないもの。きっもちひぃぃん!!」
「な、夏樹さんのおまんこの感触も最高よ! こんなにすごいの教えられたら、私もう……男の人じゃ満足できないかもしれないっ!!」
 本気でそう思えるほど、女同士の性交がもたらす快楽は強烈だった。
 しかも、射精してしまえばそれで終わりの男とは違って、女性にはオルガスムスの回数に制限がない。
 互いの体力と気力が続く限りいくらでも快楽を貪ることができるのだ。
 その証拠に夏樹は失神して動けなくなった美雪の肉体からも悦びを絞り出し、美雪もまた、失神より目覚めて即座に次なる悦楽に耽ることが出来た。
 そして、二度のオルガスムスを経て敏感になった美雪の肉体と、長らくお預けを食わされ、飢えに飢えた夏樹の肉体は激しくぶつかり合い、交互に、あるいは同時にオルガスムスを迎え続ける、絶頂の無限地獄へと落ちて行った。
「あんぁっ! い、イクッ! イクぅっ!!」
「わ、私も! 私も……い、イクのぉっ!!」
 オルガスムスを告げる二人の喘ぎがリビングに次々と木霊する。
 すでに息子達の存在など忘れ去り、更なるアクメを求めてひたすら腰を振る二匹の性獣となって、美雪と夏樹は快楽を貪り続ける。
「またよっ! またイキそうっ! すごいのが来るの! おまんこ蕩けちゃう!!」
「恐いわ、夏樹さんっ! 私、だんだんイク間隔が短くなってるっ!! このままじゃ、このままじゃ私、戻って来れなくなっちゃうっ!!」
 臨界点を越え、核分裂が始まった原子炉のように、二人は完全にイキっ放しの状態に陥っていた。次々と襲いかかるオルガスムスの大波にさらわれ、その波涛の頂きでイキ狂いながら、二人は未体験の高みへと駆け上っていく。
「それで良いのよ。二人で天国へ逝きましょう!! 女だけが逝ける、連続オルガスムスの向こうにある天国へ!!」
「あぁっ! 夏樹さんと一緒なら私、何処へでも逝くわ! 何処へでも!!」
 そして最期の時が訪れた。ひときわ甲高い叫びがシンクロし、美雪と夏樹は束の間の死を迎える。
「もう駄目っ、これ以上は意識が持たないっ! 一緒に、一緒にイキましょう!!」
「私もまた、また失神しちゃうっ! イクッ! イクッ!! イクーッ!!!」
 背筋を限界まで弓なりに反らせ、ガクガクと腰を震わせながら、永遠にも思われる長い恍惚の瞬間を味わった。
 股間から吹きあがる熱風に舞い上げられ、二人はひとつに繋がったまま遥かな天空へと吸い込まれていく。
 やがて、力尽きた夏樹の身体が、美雪の上に崩れて落ちた。
 互いの肉体から快楽をむさぼり尽した美獣たちは、仲睦まじく肌を重ね合ったまま、心地良い失神の彼岸へと旅立った。
 しんと静まり返ったリビングには、咽かえるような牝の匂いが、いつまでも、いつまでも漂い続けていた。

 その夜、入浴を終えた達也は自室に篭って悶々としていた。
 絡み合う美雪と夏樹の姿が、いつまでも脳裏にまとわりついて離れないのだ。
 それは恐らく勇介も同じだろう。幸い覗いているのはバレずに済んだので、何も見なかったことにしようと二人で決めた。
 とはいえ、自分たちの母親同士がレズビアンだったという事実は、中学生の達也と勇介にはあまりに衝撃的だった。
「まさかママがあんなことするなんて……」
 普段は大人しい美雪の獣じみた喘ぎ声は未だ耳の奥に木霊している。
 剥き出しになったふととももは雪のように白く、その白いふとももを夏樹に抱き締められたまま、黒い恥毛に覆われた薄紅色の秘唇が、少しだけ色の濃いもうひとつの秘唇とねばっこい糸を引きながら絡み合っている。
「あれが女の人のおまんこなんだ……ママのも夏樹さんのもすごく綺麗だった……」
 図らずも生まれて初めて見てしまった女性器は、肉で形作られた大輪の薔薇のようであり、その美しさと卑猥さは到底この世の元とは思えなかった。
「夏樹さんはママが好きなのかな? だったら、どうして僕を誘ったりなんかしたんだろう……」
 ベッドに腰掛けた達也は徐々に股間を勃起させながら、夏樹についても思いを巡らせる。
 水着売り場での一件は初めての性体験にしてはいささか強烈過ぎた。
 試着室の中であれだけのことをして、誰にも見咎められなかったのは奇跡と言える。
 思いがけず味わった夏樹の肉体は想像を遥かに超える生々しい印象となって達也を魅了した。
 むっちりとした触り心地は今も指先に残り、甘酸っぱい体臭はしっかりと記憶されて鼻腔をじんと痺れさせているようだ。
 夏樹の柔らかな掌に包まれ、軽やかな手淫の前に敢え無く射精した瞬間の身も心も蕩けるような快感を反芻しつつ、達也は新たに秘蔵のコレクションに加わった、紫色のショーツを洋菓子の缶から取り出して眺める。
「あぁ……夏樹さんの使用済みパンツ。まさか手渡しでもらえるとは思わなかったよ。それにしても、なんてエッチなデザインなんだ」
 手にしたショーツを軽く伸ばして恍惚と呟いた。それは以前に勇介から貰った物とは、素材もデザインも全く異なるシルク生地の総レース仕立てで、上品でありながら恐ろしくセクシーな逸品だった。
 前身ごろが隙間の多いレース使いの大胆なシースルーデザインとなっており、クロッチがなんとか秘唇を覆い隠す他は、恥毛からへその下までがほぼ丸見えになってしまう。ヒップ回りは目の細かいメッシュ仕立てで、目を凝らすと薄っすらヒップのフォルムが透けて見えるよう工夫されていた。
 恐らく特別な日に穿くことで、これから自分を抱く男に見せ付け、挑発するため下着なのだろう。
 達也はそっとクロッチを裏返し、夏樹の秘唇に密着していたと思われる、幅の狭いシルク地を剥き出しにした。
 そこに汚れや生地の痛みは見当たらず、紫色のシルクが不思議な光沢を放っている。
 もしかしたら卸したての新品を、達也の為に穿いてくれたのかもしれない。
「夏樹さん……」
 昼間の興奮冷めやらぬ達也は、部屋着の短パンを足首まで下ろし、既に完全に勃起しているペニスを握ると、ショーツのクロッチに鼻先を押し付けた。
「うっ……」
 強い香水の芳香が鼻腔を突いた。あの日、試着室の中で嗅いだ夏樹の香りだ。
 達也は指先で存分に味わった夏樹の肉体の感触を、想像力を駆使してありありと再現してみる。
 弾力に満ちた柔肌はしっとりと潤い、指先にむちむちと吸いついてきた。
 柔らかく、暖かく、滑らかで、優しい、いくら言葉を重ねても形容しきれない女体の素晴らしさはいつまでも後を引き、中毒にでもなったように再び触りたくなってくる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 尿道から先走りの蜜を搾り出すようにゆっくりペニスをしごきながら、クロッチに密着させた鼻をよくよくひくつかせてみると、香水に混じって薄っすら夏樹の秘唇の匂いが嗅ぎ取れた。
 ほんの少しだけ酸味の効いた、饐えたオレンジのような生々しい牝臭を胸いっぱいに吸い込むと、鼻腔につんと痛みが走り、眉間の奥でちりちりと火花が散った。
 どんな高級香水よりも芳しい淫裂の恥臭は、最高の媚薬となって牡の性欲を恐いくらいに掻き立て、ペニスを隆々と怒張させた。
「な、夏樹さんのおまんこの匂いがする……デパートじゃ見られなかったけれど、今日はしっかりと目に焼き付けられた。いつかあそこを直接舐めさせてくれたり、中に挿入れたりさせてくれるのかなぁ……」
 別れ際、夏樹はしたくなったらいつでも来なさいと言っていた。
 しかし、その言葉を額面通り受け取って良いのかわからず、まして昼間のような出来事があった後では、おいそれと夏樹の元へ走るわけにもいかなかった。
 とは言え、達也はしたい盛りの十四歳、溜まるものは日々きっちりと溜まっていく。
 せめて追憶と御土産のショーツで性欲を処理しようとベッドに横になって目を瞑り、夏樹の肉体を思い描きながらクロッチの匂いで興奮を高める。
「夏樹さん……夏樹さん……」
 夏樹への想いを込めて徐々にピストン運動を速め、リズミカルにペニスをしごき立てていく。とたんに腰の蕩けるような快感が背筋を這い上り、早くも迫りつつある甘美な射精の予兆に達也の目はとろんと焦点を失ってしまう。
「はうぅっ……い、いつもすぐに射精ちゃう方だけど、いくらなんでも早すぎだよ。こ、これじゃ、夏樹さんに笑われるぅ……で、でも……でも、もう駄目だ。夏樹さん、ごめんね。僕、早漏だから、もう射精ちゃうよぉ……」
 使用済みショーツの匂いは効果絶大で、忙しなく呼吸するたびに後頭部にずきりと鈍痛が走り、催淫ガスでも嗅がされたみたいに意識は混濁して、射精をコントロールしようという意思は真夏のアイスクリームのように溶けてしまう。
 肉竿をひと擦りするごとに生暖かい快楽の春風が股間に吹き荒れ、ぐるぐるととぐろを巻いて盛り上がっていく。
(いいのよ、たっくん……私の膣内に射精しちゃいなさい。私のおまんこで気持ちよくなるのよ……)
 耳元に夏樹の甘い囁き。そして、達也は射精の快楽に身を任せようとする。
「あっ、あぁ……もう……射精る……」
 しかし、その時、瞼の裏に悲しげな表情で立ち尽くす美雪の姿が浮かんで消えた。
「はっ!」
 達也は目をかっと見開き、ベッドから飛び起きて呆然とする。
「ママ、ごめん……僕、ママじゃなくて夏樹さんで気持ち良くなろうとしてた……」
 それは美雪に対する裏切り行為のように思われ、激しい自己嫌悪に襲われた。
 今日はせっかく美雪の半裸を見せて貰えたのに、夏樹を優先してしまうなんて申し訳ない。
 達也は慌てて短パンを引き上げると、夏樹のショーツを折り畳んで洋菓子の缶に戻し、足音を殺して浴室へと向かった。
 
 幸い、美雪は入浴中で、脱衣所に侵入するのは簡単だった。
 浴室へと続く曇りガラスの向こうからシャワーの水音が聞こえ、ときおり肌色の人影が蠢いて見える。
 美雪は身体を洗っている真っ最中で、しばらくは出てこないと思われた。
 音を発てないよう脱衣籠を漁ると、脱ぎ捨てられたばかりのブラとショーツがすぐに見つかった。
(やった!……)
 心の中で快哉を叫んだのも束の間、達也の頭にある考えが閃く。
(昼間、夏樹さんとエッチしてた時に穿いてたパンツはどうしたんだろう?)
 脱衣籠から抜き出したショーツはまるで汚れておらず、情事の痕跡は見当たらない。
 そこで達也は洗濯機の中を覗いてみた。
(あった……きっとこれだ……)
 洗濯機の底にブラとショーツがもう一組、くしゃくしゃになってへばりついていた。
 ショーツを拾い上げてみたところ、ずいぶんと湿っている。もしや洗濯後かと思い、匂いを嗅いでみるとそうではなかった。
 つんと鼻を突く酸味の効いた匂いは、先ほどまで部屋で嗅いでいた夏樹のショーツと同様、女性器内で分泌される愛液の匂いだった。
 愛液に濡れたまま放置され、生乾きになっているショーツのクロッチは黄色く変色して、強烈な臭気を放っていた。
「ママ……今日のは凄いね。夏樹さんとのエッチでこんなにパンツ汚しちゃったんだ……夏樹さんには悪いけど、僕、やっぱりママの匂いが一番好きだよ」
 クロッチの内張りから立ち昇る、濃厚なチーズ臭を夢中で嗅ぎながら、達也は恍惚と呟いて曇りガラスの向こうに目を向けた。
 そこでは人影が立ちあがり、身体についた泡をシャワーで洗い落とそうとしているようだった。
 千載一遇のチャンスだと思った。ここまできたら、是非もう一度、美雪の裸体を見ておきたい。昼間見たのは下半身だけで、フルヌードを見るのはこれが初めてだった。
 達也は足音を殺してガラス戸に忍び寄り跪く。と、かろうじて指一本が通る分だけ静かにガラス戸をスライドさせた。
「うわぁ……す、すごいやママ……なにもかも丸見えだよ……」
 僅かな隙間から覗き見た光景は素晴らしいものだった。
 タイル壁のフックに引っ掻けたヘッドから雨のようにシャワーが降り注ぎ、その飛沫と湯煙の中で美雪の裸体が湯と戯れていた。
 シャワーの湯は薄い皮膜となって柔肌の表面を流れ落ち、火照ってピンク色に染まった背中はキラキラと輝いて見える。
 夏樹ほどではないにせよ、ウエストは細くくびれ、その下には夏樹よりもひと回り半は大きい、豊満なヒップが膨らんでいた。
 巨大な桃を思わせるヒップは、美雪が身をよじるたびに左右に揺れ、とても柔らかそうだった。ヒップの谷間には濡れた恥毛が垂れ下がり、背中を流れてきた湯が恥毛の先から失禁したように滴っていた。
 直接見えているのは背中だけだったが、正面に大きな鏡があって、その鏡を通して美雪の乳房を眺めることが出来た。
(ママのおっぱい、おっきぃなぁ……)
 夏樹とは比べようもない、見るからに重そうな乳房が胸元でたわわに実っていた。
 薄桃色の乳首をつんと正面に向け、お椀型の乳房は重力に逆らって美しい張りを保っている。
 かつて自分を育ててくれた美雪の乳房を、達也は呆然と見つめ続けた。
 と、その時、脚の指を洗おうと突然美雪が前屈みになった。思い切り突き出されたヒップは二つに割れ、谷間に沈んでいた恥丘の膨らみが達也の眼前に迫り出してくる。
(ま、ママのおまんこが……ママのおまんこがこんなに近くに。なんて綺麗なんだろう……僕がアソコから出てきたなんて……信じられないよ)
 恥毛に護られた秘唇は薄く口を開いて、目にも鮮やかなサーモンピンクの膣壁が覗けていた。美雪が呼吸するたびに膣壁と秘唇はひくひく蠢いて、胎内から絞り出された分泌液と湯が、泡を立てて排泄される様子がはっきりと見て取れる。
 連動して茶褐色のアヌスまで収縮し、軽く脱肛状態になって、寄り集まった皺と皺の合間まで見えてしまっていた。
(お、お尻の穴まで……ぼ、僕……頭がおかしくなりそうだよ、ママ……)
 絶対に他人には見せたくない、美雪のもっとも恥かしい部分をもろに見てしまい、達也は後頭部を殴られたような衝撃を覚えた。
 興奮の余り、ショーツの匂いを嗅ぐのも、破裂せんばかりに勃起したペニスをしごくのも忘れて、達也は魅入ってしまう。
 しかし、そう呑気にもしていられなかった。美雪はじきに身体を洗い終えてしまうだろう。欲望を吐き出すつもりなら急がねばならない。
 ふと我に返った達也は、美雪の股間を凝視しながら、昼間その部分を覆っていたショーツのクロッチに舌を這わせる。
 苦味と酸味と塩気の効いた不思議な味が口に広がり、鼻腔に満ち溢れる恥臭に咽返りそうになる。
 達也は必死に咳を堪えてペニスをしごきたて、猛然とラストスパートをかけた。
 ひとこすりするたび、腰の中心にうっとりするような快感が走り、背骨が蕩けてその場に崩れ落ちそうになる。
(ママっ! ママっ! 僕、もうイクよ! 最期はママのパンツの中に出すからね! 僕の精子を受け止めて!!)
 限界点を越え、射精の脈動が達也の身体を貫いた。瞬間、達也はペニスの先端をショーツのクロッチで包み込む。そして、美雪の秘唇が密着していた内張りに、先走りの液で濡れた亀頭を押し付けたまま、思い切り精を解き放った。
(うっ!……うぐうぅっ!!)
 歯を食い縛って呻き声を殺しながら、全身に満ち溢れる射精の快感を耐え忍ぶ。
 一度にこれほどの量を射精するのは初めてだった。ぎくりぎくりと腰を戦慄かせ、達也は身体の底が抜け落ちたようにひたすら射精し続ける。
 亀頭から噴き出した白濁液はクロッチの生地を染み通し、ショーツをどろどろに浸して滴り落ちた。
 美雪の作った染みを達也の精液が塗りつぶして、混ざり合った母と息子の体液が生臭い臭気を脱衣所に撒き散らす。
 やがて、ようやく射精の脈動が収まった時には、精も根も尽き果てて、達也は意識朦朧となっていた。しかし、このまま気を失うわけにはいかない。
「ありがとう、ママ。すごく気持ち良かったよ。パンツ汚しちゃってごめんね」
 そう囁いて、達也はそっとガラス戸を閉じた。
 最期の力を振り絞って立ち上がり、すっかり精液塗れになったショーツを洗濯機に戻して脱衣所を後にする。
 射精の余韻に重くなった脚を引きずり自室まで戻ると、そのままベッドに倒れ込んで、達也は死んだように眠りに落ちた。

 一方、勇介は眠れぬ夜を過ごしていた。
 昼間、夏樹と美雪の情事を覗き見てしまい、どんな顔をして話せば良いか戸惑う勇介だったが、夏樹の何事も無かったかのような素振りを見て一安心……したのも束の間、とある事実を知ってしまったのだ。
「母さん、水着また新しくしたの?」
 これからベッドに潜り込もうと、トイレを済ませてリビングの前を通り掛かった際、勇介はハンガーにかけられた見慣れぬ競泳水着を見つけて胸躍らせた。
 夏樹の水泳好きは相当な物で、二日と空けずに通ってはかなりの距離を泳いでくる。
 そのお陰で四十路を目前にした今でも、夏樹は見事なプロポーションを保っていて、勇介にとっては自慢の母親だった。
「ええ、そうよ。でも、それはちょっと特別なの。隣のたっくんが私のために選んでくれた水着なんだもの」
 さも嬉しそうに言う夏樹の言葉に、勇介の胸はずきりと痛む。
「達也が?……どうして」
「デパートに行く途中で本屋さんに寄ったら偶然会ってね、買い物に付き合ってもらったのよ。たっくんのセンスもなかなかのものよね。私、この水着はお気に入りにして、大事に着るつもりよ。じゃ、おやすみ」
 夏樹は満面の笑みで言うと、鼻歌混じりに寝室へ消えてしまった。
 後に残された勇介はやるせない想いでリビングの電気を消してから、ハンガーごと競泳水着を自室へと持ち去った。
「どういうことだよ、達也……」
 窓のカーテンを少しだけ空けて隣家を見る。
 勇介と達也の部屋はちょうど向き合う位置にあり、その気になれば屋根伝いに行き交うことも可能だった。
 達也の部屋の電気は消され、すでに眠りについた後のようだ。
 勇介はカーテンを元に戻して、ベッドの上に広げた競泳水着を見つめる。
「母さんの水着を見繕うのは俺の役目なのに……」
 おしゃれな夏樹は衣服や下着に凝るばかりでなく、水着のデザインについても拘る性質だった。
「ダサい水着なんて着てたら、プールで恥かくでしょ」
 夏樹はそう言って、売り場で何度も勇介に選び直しをさせるのだが、勇介もまたそれを楽しみにしていた。
 自慢の母親と二人でああでもない、こうでもないと水着を選び、選んだ水着をつぎつぎ試着しては水着のファッションショーさながらに夏樹がポーズをとって見せてくれる。
 勇介にとって最高に楽しみな瞬間だった。
 それを親友に横取りされ、尚且つ夏樹は達也の選んだ水着を特別であると言う。
 心穏やかでいられるわけがなかった。
「母さんも母さんだよ。昼間は昼間で、美雪さんとレズってるしさ……」
 達也の家のリビングで見た鮮烈な光景は、そう簡単に忘れられるものではない。
 愛しい母親と憧れの隣人が同性であるにも拘わらず、激しく肉体を求め合っていたのだ。
「母さんの裸……久しぶりに見たな。一緒に風呂に入っていた小学校以来か……」
 夏樹は一人っ子の勇介を猫可愛がりしていたので、高学年になっても尚、共に入浴することを半ば強要していた。
 しかし、強要とは言っても、それは形だけ。
 なぜなら、体面上、嫌がって見せる一方で、勇介もまた夏樹との入浴を楽しみにしていたからだ。
 湯煙の中、堂々と裸で立ち居振る舞う夏樹の裸体を、恥ずかしさに打ち勝ってちらちら横目で盗み見た。
 水泳を始める前だったので、体つきは現在よりも幾分まろやかで、やわらかそうな乳房につい目を奪われてしまった。
「フフフッ……なぁに、じろじろ見ちゃって。またおっぱい吸いたくなった? 勇介が吸いたいっていうなら、私はいつでもかまわないわよ」
 見られているのを知りながら、夏樹は隠すどころか面と向かって誘惑してくる始末。
 照れ隠しに生意気な口調で拒絶した勇介は、湯船の中で勃起した男根をしぼませるのに必死だった。
「母さん、やっぱり痩せてたな。ウエストもヒップも引き締まって、ふとももにも筋肉がかなりついていた。今の母さんなら……似合うんだろうな、達也が選んだこの競泳水着……」
 ベッドに腰を下ろすと、濃紺色の水着をハンガーから外し、手に取ってまじまじと眺める。
 それはフィットネスモデルではなくレースモデルで、水の抵抗の軽減を最優先した化学繊維はほとんど伸縮せず、厳密にサイズを合わせなければ、着ること自体難しい。
 当然、何処にでもいる肉のたるんだ中年女性の身に着けられる代物ではなく、その点においても、悔しいが、達也の見立ては的確だった。
「お、俺だって……その場にいたら、これを選んでたさ……」
 ぶつぶつ言いながら、慣れた手つきで裏返す。
 競技用のため、パッドは付属せず、股部は強烈なハイレグカットになっていた。
 露出したベージュ色の内張りに汚れは見当たらない。
 けれど、よく見てみると、ちょうど割れ目の密着する部分にわずかなヨレが出来ていた。
 クロッチは股間にきつく食い込む為、生地への負担も大きく、一度でも着用すると着用者の肉体に合わせて癖がついてしまうようだ。
「やっぱり、試着したんだ……」
 勇介は鼻を内張りに押し当て、くんくんと匂いを嗅いでみた。
 洗濯石鹸と化学繊維の匂いに混じって、嗅ぎ慣れた夏樹の体臭がほのかに香る。
 中年を迎えながらも、活発な新陳代謝を保ち続ける女体の、ミルクにオレンジ果汁をたっぷりと混ぜ込んだような甘酸っぱくもマイルドな匂いがした。
「はあぁ……母さんの匂いがする……」
 クロッチから嗅ぎ取った生々しい匂いに刺激されて、パジャマのズボンの奥では肉の塊がむくむくと盛り上がり、先端はトランクスから食み出しかかっていた。
 パジャマの上からやんわりと掴み、先っぽをトランクスの生地に押し付けるようにしごき立てる。
「うっ……」
 腰の中心にびりっと強い電流が走って、股間にじんわりぬくもりが広がっていく。
 最初はくすぐったかったのが、徐々に心地よくなっていき、やがてひとしごきするたび、肉棒の芯は熱い痺れに刺し貫かれて、思わずベッドから腰を浮かせた。
 背筋を流れ落ちる冷たい汗に、ぶるっぶるっと身を震わせて勇介は思う。
「でも、試着したってことは……似合うかどうか、この水着を着たところを達也に見せて確認させたってことか……」
 全く無駄の無い競技モデルの水着は夏樹の肌に隙間無く吸い付いて、そのボディラインを寸分違わず露にしたのだろう。
 試着室のカーテンを開け放ち、腰に手をあててポーズを取る夏樹の姿が目に浮かぶようだった。
「くそっ……なんでだよ、母さん。いつもは無理にでも俺を連れていくのにさ……」
 舌打ちをして勇介は呟く。
 達也は確かに親友だが、夏樹を横取りされるとなれば話は別だ。
「でも……俺だって美雪さんとしちゃったんだよな……」
 掌に残る柔らかな美雪の感触を思い出して、複雑な想いに沈む。
 達也に対する嫉妬と罪悪感、夏樹に対する不審、そして、美雪の手と唇によって与えられた身も心も蕩けるような甘美な悦楽の余韻。
「俺が美雪さんとエロいことしたって知ったら……達也はどうするだろう?」
 美雪がそうしたように夏樹が達也を誘惑し、雄々しく勃起したペニスをしゃぶっているところを想像して、勇介は頭を掻き毟る。
「だめだっ、だめだっ……いくら達也が相手だからって、そんなこと許せるもんかっ」
 しかし、すでに自分は美雪にたっぷりとしゃぶられ、派手に口内射精までしてしまった。
 粘りつく美雪の粘膜にすべてをぶちまけた瞬間の、全身の細胞が一度に生まれ変わるような感覚を思い出し、唯一無二の親友を裏切ったという、苦い思いを新たにする。
「それに、美雪さんはどういうつもりなんだろう? 俺だけじゃなく、母さんとまでするなんて……」
 絡み合う夏樹と美雪の肢体が続けざまにフラッシュバックして、悩みは更に深まる。
 しかし、最後に残ったのは、やはり夏樹に対する欲求だった。
「でも、俺……美雪さんには悪いけど、やっぱり母さんとしたいな……」
 裏から掌を添えたクロッチの内張りを夢中でむさぼりながら、勇介は激しくペニスをしごき立てた。
 亀頭のくびれに集中していく熱い痺れに、早くも射精の瞬間が近いことを悟る。
「母さんっ、母さんっ……俺じゃ駄目なのかよ!? いつだって一番そばにいて、母さんを一番好きなのは俺なのに……」
 昼間見た夏樹の割れ目を脳内に再現して、そこへ自分の一物を突き入れる様子を克明に思い描いた。
 白い女体にぱっくりと口を開いた紅い傷口は、いまだピンク色をした若々しいペニスを根元まで咥え込み、濡れ光る蜜壁で存分に嬲る。
 水泳で鍛えられた肉壺は恐ろしく締りが良く、過敏な童貞ペニスなどひとたまりもない。
 奔放な夏樹は蛇のように腰をくねらせ、息子の欲棒を胎内の奥へ奥へと呑み込もうとする。
 その気持ち良さは美雪のたどたどしいフェラチオを遥かに凌駕し、勇介の柔な腰をあっさり蕩けさせた。
「ううぅっ……か、母さんっ……お、俺……もう……で、射精るぅっ!」
 ひときわ強くクロッチを食むと、勇介はぶるっぶるっと鋭く腰を震わせた。
 トランクスの中でペニスは弾け、熱い精液が勢いよく吐き出される。
「うっ……うっ……うぅっ……」
 くぐもった呻きを漏らして背中を丸め、びゅくっ、びゅくんっ、と括約筋の脈動に任せて繰り返し精を迸らせる。
 そのたびに首の後ろはかっと熱くなり、目の前が真っ白になって脳に溢れ出す恍惚感にうっとりした。
 トランクスに跳ね返った粘っこいコンデンスミルクは、ペニスに降りかかってじくじくと恥毛に染み込んでいく。
 ベッドはぎしぎしと静かにきしみ、麻酔でも注入されたみたいに背骨は麻痺して、腰から下の感覚が失われてしまう。
「くはっ……」
 ひくひくとアヌスを痙攣させ、鈴口から最後の雫を滴らせた勇介は完全に脱力してしまい、身体を吊っていた糸が切れたようにベッドに横倒しになった。
 快感に蕩けた目でベージュ色の内張りに出来た唾液の染みをおぼろげに見つめていると、夏樹の幻像は甘やかなセックスの余韻に艶かしい微笑を浮かべ、耳元でそっと囁いてくる。
「けっこう気持ちよかったけど……でも、ちょっと早すぎね。次はもう少し頑張って、しっかり私をイカせてくれなきゃダメよ」
 耳の奥に木霊する手厳しいアドバイスを子守唄に、勇介はべとべとになった下半身もそのままに、いつの間にか眠り込んでしまうのだった。

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