義母志願

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最終章

「なるほど。そういう事になったの……」
 ホテルの一室。一度目の情事を終え、ベッドでくつろぐ美子が言った。
「そうなんですよ。芹沢さんと美貴さんの事は取りあえずハッピーエンドという形なんですけど、僕の方はエライ事になりましたよ」
 溜め息交じりに言いながら、佑介はミネラルウォーターの入ったグラスを美子に手渡すとベッドに腰掛けた。
「ありがとう。でも、おめでたい事じゃない。その若さで課長代理になったんだから。それとも、何か問題でもあるの?」
 そう言うと美子は受け取ったグラスからミネラルウォーターを一口飲んだ。
「大有りですよ。仕事のそのものは芹沢課長をすぐ側でずっと見てきたんでまあ何とかやってますけど。問題はついこの間まで(先輩)って呼んでた人達を部下として使わなきゃいけないって事ですよ」
「やっぱり嫌みとか言われるわけ?」
「いいえ。実はほっとしているみたいなんですよね。先輩達はプログラムがやりたくて会社に入ってきた人がほとんどだから現場の実作業から離れるのは嫌らしくて。今回、僕が課長代理になったお陰で、面倒な事務処理や上の人達への繋ぎを全部僕に押し付けられるわけですから」
「ならいいじゃない?」
「ええ、まあそれは……そうなんですけど……」
 佑介はまだ何か言いたそうだった。
「佑介君的には気を使ってしまってやり辛い……と」
「それです!」
 佑介は美子を指差して言った。
「佑介君の気持ちもわかるけど、かなり贅沢な悩みだと思うな。課長代理になって権限と責任が大きくなった分、お給料とステータスも上がっているわけだし」
「はあ」
「フフフッ、大丈夫よ。芹沢だって二十七歳で課長になった時には佑介君と同じ事言ってたんだから。それにその芹沢があなたを推したんでしょう?」
「そうみたいですね」
「なら問題ないわ。月並みな言い方で悪いけど佑介君になら出来るわよ。佑介君はただ一生懸命頑張れば良いの。ねっ」
 美子の言葉に少し考える佑介。
「それもそうですね。何か美子さんにそう言ってもらえると頑張れそうな気がします。我ながら単純だけど」
「フフフッ、頑張ってね。でも、佑介君、課長代理になったから前にも増して忙しくなっちゃったのよね……」
 美子は少し困ったような表情をした。
「まあ以前に比べれば若干、会社にいる時間が長くはなりましたけど、それ程忙しくなったわけではないですよ。何かあるんですか?」
「ええと、去年、娘にパソコンを買ってあげたんだげど、色々わからない事があるらしいの。前は芹沢に聞いてたんだけどね。私も仕事でパソコンを使っているけど、仕事で使うソフトの事ぐらいしかわからないし。だから、もし佑介君に暇な時間が合ったら娘に教えて貰えないかなって思ってたんだけど」
「なんだそんな事でしたら簡単ですよ。娘さんのパソコンはインターネットに繋がってるんですよね」
「ええ、繋がってるわ」
「じゃあ、質問をメールで送ってもらえれば暇を見て答えを返信しますよ」
「余り無理しなくも良いのよ?」
「無理だなんて。ただ、芹沢課長ほど上手く答えられるか心配だけど」
「それは大丈夫じゃない? 単純にパソコンの知識や技術に関してなら佑介君の方が上だと思うし」
 佑介は美子の言う事も一理あるなと思った。芹沢も仕事でパソコンを使ってはいたが、その役職の仕事上、ほとんど事務処理のみで、少なくともここ数年はプログラムやインターネットに関する実作業はしていない筈だった。となれば、つい先日まで開発の最前線にいた佑介に遥かに歩があると思われた。
「かもしれませんね。まあとにかく、わからなければ調べてお答えしますし」
「でも本当に無理はしないでね。それと、この手のアルバイト代ってどの位が相場なのかしら?」
「そんなの要りませんよ。お金を貰う程の事をするわけじゃないですから」
「そう、本当に悪いわね」
「悪いのは僕の方ですよ。今までホテル代やらなんやらほとんど美子さんに払わせてしまってるんですから。でも、今回の事で給料がかなり上がりましたから、今日からは僕持ちという事で」
「それは駄目。九歳も年上の私と付き合ってるんだから、佑介君は私に全部出させれば良いのよ」
 おどけるように言う美子だったが、その言葉の裏には不安が隠されていた。美子には佑介が金銭目的で自分と付き合っているわけではない事が十分わかっていたが、やはり自分の歳の事、そして、今回の佑介の昇進に伴う金銭的余裕や恋敵の増加によって、わざわざ身銭を切ってまで一回り近くも歳の違う美子に付き合う必要が無くなるのでは? という不安が胸に巣食って離れなかった。
「何か……美子さんらしくないですよ。自分の歳に負い目を感じるような、そういう言い方。それに僕はホストでも無ければヒモでも無いんです。ただ、美子さんと一緒にいたいから、ここにこうしているんです」
 佑介は少し悲し気な表情で言った。
 美子は胸の中の不安を佑介に見透かされた事と自分の幼稚な自己卑下によって佑介を傷つけてしまった事に激しい羞恥と後悔を感じ、焦った。
「ご、ごめんなさい。私、そんなつもりじゃ……」
 パンっ!
 美子の言葉を遮り、佑介が両手を鳴らした。
 突然の事にキョトンとする美子。
「じゃこれからは割り勘って事で……この話しはおしまい……と」
 佑介がニッコリ笑った。
「フフフッ、そうね。そういう事にしましょうか」
 佑介につられて美子も気恥ずかしそうに笑ったが、その笑顔には何処となく憂いが含まれていた。

 数日後、仕事から帰った佑介のパソコンに美子の娘から一通のメールが届いていた。 しかし、それは質問ではなくて、お近付きの挨拶といった感じの物だった。

『はじめまして。 私は音無美子の娘で小夜と言います。
突然のメールでごめんなさい。でも、私の方も突然だったので、お互い様という事で許して下さいね。
 今日、ママからいきなりメールアドレスを渡されて、(パソコンの事で何かわらない事があったらここにメールを出しなさい)って言われたんです。
 神崎さんはママのビジネスパートナーだそうで、いつもママがお世話になっています。それにこれからは私もお世話になります。母娘ともどもどうそよろしく。
 では私の自己紹介をさせてもらいます。
 名前は先ほども書きましたが、小夜と言います。自分で言うのも何ですが、この名前はかなり気に入ってます。
 年齢は十五歳で、中学三年生です。来年受験です。できれば勉強も教えて欲しいです。部活は陸上部に入っていて、短距離専門です。脚には自信があります。
 性格は自分では普通だと思うんですけど、ママからはいつも(私が中学生の頃はこんなにマセてなかったわ)って言われてます。でも私が生まれた時、ママは十九歳でした。
 髪型は少し長めのポニーテールで、顔は……かわいいって書いておいた方が良いですよね?
 身長は165cmくらいです。毎日計ってるんですが、止まる気配無しです。
 スリーサイズは秘密ですが、陸上をやっているせいかかなりスレンダーです。
 胸はもう少しあっても良い筈なんですけど……。
 取りあえず、私の自己紹介はこんな感じです。
 初めてのメールで少し書き過ぎかなとも思いますが、相手がママの信頼している人なら安心です。
 何でもパソコンに関する質問に答えてもらえるそうなので、次のメールからはいろいろ質問をさせてもらいたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 では、今日はこの辺で。

 追伸:
 
 出来れば神崎さんがどんな人なのか知りたいので、もしよろしければ自己紹介お願いします。音無 小夜 』

 小夜のメールを読み終わった佑介はすっかり赤面していた。
(まさか女子中学生と文通する事になるとはな)
 しかし、決して悪い気分ではなかった。それどころか佑介の頭の中には小夜のメールに書かれたデータを基にした小夜の想像図が完璧に出来上がっていた。不確定な小夜の顔は母である美子の中学生の頃を想像して補った。
 そして、その小夜が何故かブルマ姿で佑介に(せんせい……)などと擦り寄ってくる姿まで想像し、しっかりと楽しんだ。
(それにしても、美子さんは僕の事を仕事上のパートナーとして紹介したのか。美子さんの仕事はインテリアデザイナーって言ってたけど下手に突っ込まれたら困るな)
 佑介の不安を晴らすように美子から新着のメールが届いた。
 美子とは初めて会った日にメールアドレスを交換しており、これまでも幾度かデートの連絡に使っていた。
 佑介はすぐに美子のメールを開いてみた。

『今晩は。今日もお仕事お疲れさまでした。美子です。
 今日、娘に佑介君のメールアドレスを渡しました。
 あの子の事だから、もう佑介君にメールを出しているかもしれませんね。
 佑介君の事は取りあえず、私の仕事上のパートナーという形で紹介しておきました。 佑介君自身の事についてはもし良ければ、御自分で娘に話してやってください。
 また、娘から私の仕事、つまり、インテリアデザインに関する質問があった場合には私にメールで連絡を頂ければフォローします。携帯はあの子に聞かれる恐れがあるので、なるべく避けて頂けると嬉しいです。
 私の離婚については娘も理解してくれていますし、恋愛に関しては現在フリーなので、佑介君の事を隠す必要は無いのかもしれませんが、娘は微妙な年齢なので、このような形を取りました。
 佑介君には余計な手間を取らせた上に嘘までつかせてしまう事になり、本当に申し訳ないのですが、宜しくお願い致します。
ではまた。音無 美子』

(なるほど。ヤバイ時にはバックアップしてくれるって事か)
 佑介は現在の自分を取り巻く状況を頭の中で整理し、小夜と美子にそれぞれ返事のメールを送った。

 それからと言うもの、小夜から佑介に毎日のようにメールが届いた。
 もちろんパソコンについての質問もあったが、それとは全然関係ない、その日にあった出来事や小夜の気持ち等を書き綴った、いわゆる普通のメールが大半を占めていた。
(なんでまた僕なんかにこんなプライベートな事を話すんだろう? この手の事を話す友達の中に僕も入れてくれたって事なのかな?)
 佑介は困惑しながらも女子中学生の私生活を覗き見る事が出来る幸運に感謝した。
 それからも小夜のメールは大胆さを増して行き、佑介も嘘がばれない範囲で自分のプライベートについて小夜に打ち明けていった。
 内容から考えても、小夜がどんなメールを佑介に送ったのか、美子に話しているとは思えなかったので、佑介もまた小夜との間に交わされるプライベートなメールについては美子に話さなかった。
 そうしていく内に佑介は小夜という少女に只ならぬ親しみを感じ始めていた。
 それは直接会う事の無い、メールのやり取りのみという関係によって、小夜に対する期待が無制限に高まっていったせいかもしれないが、小夜のメールから感じ取れる佑介への憧れや好意といった感情に戸惑いながらも佑介は小夜に淡い恋心を抱き始めていた。
 そんなある日、佑介を驚かせるメールが小夜から届いた。

『祐さん! 祐さん! 大ニュースだよ!
 今年、ママが離婚したのは知ってるよね。
 そのママに恋人が出来たみたいなの!
 随分前からそうなんじゃないかなとは思ってたんだけど、こないだ決定的な証拠を押さえちゃったの!
 ママにお小遣いねだろうと思って後ろから抱きついたんだけど、ママの首になんとキスマークが付いてたんだよ!
 これはもう確実だよね。
 まあ、ママは娘の私から見ても美人だし、スタイルも良いし、性格も良いし、再婚の誘いだって山ほどあったし、今だって毎月おばあちゃんから電話かかってきて、御見合いしたらって口うるさく言われてるくらいだから、恋人が一人や二人いてもそんなに驚く事じゃないんだけど、でも、問題は相手なのよね。
 実はママの相手が誰なのか私には大体見当がついてるの。祐さん、知りたい?
 知りたいよね! わかってるんだよ、祐さん、実はママの事好きでしょ?
 フフフッ、私にはお見通しなんだから。
 だから、最初は祐さんが相手なんじゃないかって思ったんだけど、もしそうなら私にこんな形で紹介したりしないよね。
 で、色々考えたんだけど、ママってああ見えてもかなりお堅いのよね。だから、自分が本当に好きになった男の人としか付き合わない筈なの。
 そう考えると祐さん以外に一人だけ該当する人がいたの!
 その人は私のパパの部下だった人なんだけど。その人とパパが一緒に写ってる写真があって、自分の部屋でママが嬉しそうにそれを見てるの何度か見ちゃったんだ。しかも、その人の部分だけ切り取ってあるんだよ。
 私、その人の名前は知らないけど、写真はママに内緒で見た事あるんだ。結構、カッコイイ人だったよ。ママにとっては年下の可愛い男の子って感じかな。
 と言う事で、私の見立てではママの恋人はこの人に決定!
 あっ、ちょっと嫉妬した、 祐さん?
 でも、今からならまだ間に合うかもしれないよ。今すぐママに(あなたが好きです!!)って言えばまだ勝機は有るかも?
 それにもしママが駄目だった時は私が慰めてあげるしね。
 だから、玉砕覚悟でアタックしてみたらどうかなーって思いつつ、今日のメールはここまで。
 あ、そうだ。私、明日から三日間、部活の合宿なんでメールもらってもしばらく返事が書けないのでそのつもりで。
 じゃまたね,祐さん!小夜』

 すっかり馴れ馴れしくなった小夜のメールを読み終わった佑介は青ざめていた。
 佑介が最後に美子と会ったのは二日前。佑介は自分が美子の首にキスマークをつけたかどうか必死で思い出そうとしたが、そんな細かい事まで覚えている筈もなく、ただ焦るばかりだった。
(大変な事になったな。半分ばれたも同然じゃないか。それにしても小夜ちゃんの勘の鋭さには恐れ入るよ。とにかく、美子さんに報告しなきゃ)
 佑介は急いで美子にメールを出した。
 美子もちょうどパソコンを使用していたらしく、すぐに返事が返ってきた。

『メール拝見しました。
 慌てて自分の首を鏡で調べて見ましたが、やはりキスマークがくっきりと残っていました。
 最近、慣れてきたせいか、お互いに不用心になっていたのかも知れませんね。
 小夜はすごく勘が良い子なのでじきに私達の嘘に気づくと思います。
 すでに御存知かもしれませんが、小夜は明日から三日間、家を留守にします。
 この三日間の内、いつでも構いませんので、お時間頂けませんか?
 場所はいつものようにホテルではなく、私の家にしましょう。もしかしたらこれで最後になるかもしれませんから。
 では、御返事お待ちしています。音無 美子』

 美子のメールに書かれた(これで最後になるかもしれない)という言葉に佑介は動揺した。
(冗談じゃない、美子さんと別れるなんて絶対に嫌だ! 何とかして、小夜ちゃんに僕と美子さんの事を認めてもらわなきゃ!)
 佑介は慌てて、(明日会いましょう)というメールを美子に送った。
 しばらくして、美子から家の住所と待ち合わせの時刻が書かれたメールが返信されてきた。
 佑介はそのメールを読みながら、美子と小夜をどうやって説得するか必死に考えていた。

 翌日、仕事を終えた佑介は約束の時間より少し早く美子の家に到着した。
 美子の家は元夫が長く課長職にあっただけあり、豪邸とまではいかないまでも、かなり大きい部類に入るものだった。
 佑介は近所の目を少し気にしながら、ドアの前でネクタイを締め直し、インターフォンのボタンを押した。
 しばらくするとインターフォンから(どうぞ)とだけ声が聞こえてきた。
 佑介はその素っ気無い声に違和感を覚えたが、言われた通りにドアを開けた。
「あっ!」
 ドアを開けた佑介は思わず声を上げてしまった。
 玄関で佑介を迎えてくれたのは美子ではなく、セーラー服を着たポニーテールの少女だった。
「いらっしゃい、祐さん!」
 元気良く言うと少女はニッコリ微笑んだ。
 美子をそのまま若返らせたような少女は(かわいい)というより(美しい)という表現が遥かに良く似合う、まさに美少女だった。
 長いポニーテールとセーラー服、そして、短めのフレアースカートから伸びたカモシカのような細く鍛えられた脚。少女の全身から眩しいほどの若々しさと健康的な美しさが放射されているようだった。
 しばらく呆気に取られていた佑介だったが、目の前に立っている少女がいつもメールを交換している小夜である事をようやく認識し、それから、合宿に行っている筈の 小夜が目の前にいる事にもう一度驚いた。
「あははははは! 祐さん、すごい顔! よっぽど驚いたんだね!」
 驚きに目を剥いている佑介の表情に小夜は指を目一杯開いた手の平で口を軽く押さえながら大笑いした。
「小夜ちゃん……だよね?」
 佑介は笑う小夜に恐る恐る聞いてみた。
「はいっ、はじめまして。私、音無 小夜です。 どうぞよろしく!」
 小夜は背筋をビッと伸ばし、佑介に笑顔で敬礼して見せた。
 その姿に佑介は小夜のメールから感じられた奇妙な親近感の原因をようやく理解した。
 小夜は美貴に似ているのだ。
「さあ、入って、入って。 ドア開けっ放しでそこに立ってると、近所の人に変に思われるよ」
 小夜の言葉に自分の立場を思い出し、佑介は慌てて靴を脱いだ。
「お、お邪魔します」
「はい、どうぞ」
 小夜はそう言うと、佑介の鞄を持ち、リビングへと案内した。

「祐さんはここに座って」
 佑介は小夜の言う通り、リビングに置かれたテーブルの側に座った。
 テーブルの上には既に料理や各種飲み物が所狭しと並んでおり、あたかもパーティーのようだった。
「よいしょ」
 小夜は何のためらいも無く佑介の正面に座った。
「?」
 佑介は美子の姿を求めてきょろきょろした。
「ママならいないよ。今日、仕事で外泊するんだって」
「えええっ!」
 サラリと言う小夜に驚く佑介。
「まあ、詳しくは食べながら話そうよ。祐さんの為に着替える時間も惜しんで作った料理が冷めちゃうからさ」
「じゃ、じゃあ、いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
 何がどうなっているのか佑介には全然解らなかったが、とにかく料理を食べながら小夜の説明を聞く事にした。
「美味しい?」
「へ? あっ、うん。すごく……美味しいよ」
「よかった。でも、そんなに緊張しなくて良いよ。二人っきりだから、いつものメールみたいにお気楽にね」
「わ、わかった。で、これは……どういう事なのかな?」
「えっと、まず、昨日、ママからメールが来たでしょ。あれは私がママの部屋から送ったの。キスマークの話しも嘘。今日から三日間、家を留守にするのは私じゃなくてママだったのね。で、何故こんな事をしたのかというと、昨日のメールで書いた通り、ママの恋人が誰なのかわかっちゃったから、ママが居ない間に会ってみようと思ったの」
「やっぱり、気づいてたんだ」
「もう随分前にね。ママから祐さんのアドレスを貰った時に(ああ、この人がママの恋人なんだって)思ったの。パパと別れてからしばらくはママ、本当に落ち込んでただよね。なのにある日を境に急に元気になって。だから、私はママに恋人ができたんだなって喜んでたの。そしたら、急に見ず知らずの祐さんのアドレス渡されて。気づかない方が変だよ」
「そりゃそうだ。じゃあ、最初からばれてたわけか」
「ここまではね。ママから(神崎 佑介)って名前を聞いた時から何処かで聞いた名前だなってずっと気になってたんだけど、ママの部屋に飾ってある写真を見て思い出したの。ああ、あの人だったんだって。それから私はあのパパがべた賞めして、あのママが大好きになっちゃった人がどんな人なのか知りたくて、祐さんにいっぱいメールを書いたわけね。祐さんが何処の誰で何をしてる人なのかわかっちゃったから安心して、質問とは全然関係ない事まで書いちゃったんだけど、祐さんは丁寧に答えてくれて、すごく嬉しかったよ」
「そっか。でも僕も嬉しかったんだよ。なんせ女子中学生とメール交換する機会なんてそうそうないからね。それに小夜ちゃん、仲の良い友達にしか話さないような事まで書いてくれるから、すごくドキドキしたし」
「フフフッ、祐さん、Hっぽいもんね」
 母親ゆずりの妖艶な微笑を見せる小夜に佑介はドキッとした。
「でね。大体の事はわかったんだけど、ただ一つ、ママがなんでこんなに回りくどい紹介の仕方をしたのかがずっとわからなかったの。だから私は自分がママだったらっていう風に考えて理由を想像したのね。そしたらわかっちゃったんだ。ママの企みが」
「企み?」
「企みって言うよりは願いって言った方が良いかもしれない。ママは自分の歳と祐さんとの歳の差を考えたんだと思う。九歳の差ってすごく大きいよね。それでも男の人が上で女の人が下っていうパターンなら何とかなるんだろうけど、その逆のパターンだとやっぱり難しいと思う。今はまだ良いかもしれないけど、歳を取るスピードってどんどん速くなるみたいだし。とにかく、ママはすごく不安だったんだと思う。祐さんとの結婚はやっぱり無理だけど、でも祐さんとずっと一緒にいたくて」
 小夜の話しに固唾を飲む佑介の頭の中にはデートの最中に美子が幾度と無く見せた自分を卑下するような哀しい表情が浮かんで離れなかった。
「だからママは賭けてみたんだと思う」
「賭けてみた?」
「そう。さっき言ったよね。大きな歳の差があっても、男の人が上で女の人が下だったら何とかなるかもしれないって。祐さんと私の歳の差はちょうど十歳。私と祐さんが結婚すれば、ママは祐さんの義理の母親として誰の目を気にする事無く祐さんと一緒にいられる」
「じゃ、じゃあ、美子さんは小夜ちゃんと僕を結婚させる為に僕を紹介したっていうのか!」
 佑介は思わず怒鳴ってしまった。
 佑介の声にビクンと震える小夜。
「びっくりした。祐さんでも怒鳴るんだね。でもちょっと違うよ。私、さっき(賭けた)って言ったでしょ。ママは自分の為に娘の私に結婚を強要するような事は絶対しないよ。でも、何気なく紹介して、それで私と祐さんが自然にそういう関係になったんなら何も問題は無いよね。だからママはその可能性に賭けたんだと思う」
「そんな……」
「うん……。祐さんが言いたい事、何となくわかる。けど、ママは何も悪い事してないよね。私がパソコンについて質問できる人を探してたのは事実だし、ママは祐さんをただの同僚として、私に紹介しただけだもん。もし、私と祐さんがそうならなかったら、祐さんとはある程度時間を置いて別れるつもりだったと思うし」
「でも……」
「私がママの立場にいても多分同じ事をしたと思う。可能性があって、誰も傷つかないのならやってみたいって思うよ。ただ、ママの唯一の誤算は私が気づいちゃったって事」
「……」
 佑介は何て言えば良いのかわからなかった。
 小夜の言っている事に間違いは無いとわかってはいたが、佑介の心にはどうしても釈然としないものが残った。
「小夜ちゃんは美子さんの願いを叶える為に、今日、僕を呼んだのかい?」
「それは違うよ。私ね、ママの考えに気づいた時、どうしようかなって思ったの。今の祐さんみたいに複雑な気持ちだった。でも、私が何か損をするわけじゃないし。私にとってはパソコンについて質問したり、色々な相談や楽しいおしゃべりができる貴重な友達ができただけだもん。だから、ママの賭けに乗ってみる事にしたの。ママの為とかそういう事じゃなくてね。祐さんとたくさんメールを交換して、祐さんがすごく良い人なんだってわかって嬉しかったり、ママの事、本当に好きなんだってわかってちょっと嫉妬してみたり、本当に楽しかった。それに、祐さんの顔はママの部屋の写真で確認済みで、結構私の好みだったしね。将来、祐さんと結婚するかどうかなんて全然わからないけど、私は祐さんが大好きみたいだから、祐さんとそういう関係になっても全然嫌じゃないから、だから今日、祐さんを招待したの。残る問題はあと一つだけ。祐さんは……私の事、好きですか?」
 少し首を傾げるようにして尋ねる小夜は真っ直ぐ佑介の目を見つめていた。
「小夜ちゃん……」
 この時、佑介は目の前にいる少女がまだ十五歳、まだ中学三年生である事を完全に忘れていた。
 佑介を真剣な眼差しで見つめる少女は余りに美しく、愛しく、そして、間違いなく(女)だった。
 小夜とのメールのやり取りの中で佑介の胸の奥に生まれた淡い恋心が一気に溢れ出し、佑介は気になっていた美子の思惑の是非などどうでも良いと思った。
 気がつくと佑介は黙ったまま返事を待つ小夜にはっきりと答えていた。
「僕も君が好きだ」

(女の子に、好きだ、なんて言ったの何年ぶりだろう)
 浴室で身体を洗いながら佑介は考えていた。
「一人じゃ恐いから泊まってって」と小夜に言われ、音無家に泊まる事にしたのは良かったが、入浴後に待っているだろう展開の事を考えると、佑介は今更ながらに逡巡した。
(まだ十五歳だもんな。それに美子さんと芹沢課長の娘だし。マズイよなぁ)
 佑介が身体を洗う手を止めて、悩んでいると脱衣所から声が掛かった。
「祐さん、祐さん。タオルと着替え、ここに置いとくよ。着替えはパパの買い置きだけど、多分サイズは大丈夫だと思うから」
「ああ、ありがとう」
「ねえ、祐さん。もし良かったら、私が背中流して上げようか?」
「ええ! い、いや、いい、いい、自分でできるから、いい!」
 佑介は見られているわけでも無いのに慌てて手ぬぐいで股間を隠した。
「あはははっ、祐さんってホント期待通りの反応してくれるよね」
「……」
「あ、怒った? ウソウソ、冗談だよ。 私、小さい頃ね、よくパパの背中流して上げてたんだ。パパ喜んでくれたから、私もすごく嬉しくってさ」
 浴室の半透明なドアに寄り掛かりながら小夜は昔を懐かしむように言った。
「……離婚には、やっぱり反対だったのかい?」
「ううん。しょうがないよ。私、パパの事好きだったけど、ちょっと無神経過ぎたと思うから」
「無神経?」
「うん。祐さん、パパにいっぱい愛人がいたの知ってる?」
「う、噂には聞いた事がある」
 一瞬、美子から美貴の事を聞いているんじゃないかと思い、佑介は焦った。
「ふつう、そういう事って奥さんには隠そうとするよね。まあ、あれだけたくさんいたら隠しようがないだろうけど」
「小夜ちゃんは課長の愛人の話、誰から聞いたの?」
「誰からも。パパ当てに掛かってくる電話のほとんどが知らない女の人からで、私も良く取ってたから」
 愛人に平気で自宅に電話させる芹沢の神経が佑介には信じられなかったが、芹沢が自分に非常に大きな自信を持っている人間であった事を思い出して、佑介は頷いた。
「もちろん、ママも取ってたし、相手の女の人がパパの愛人なのもわかってたと思う。でも、昔からパパは格好良くてすごくモテたからしょうがないって思ってたのかもね。で、パパはと言えば、あちこちに愛人はいるけど、本当に愛してるのはママだけっていうつもりみたいで、全然反省する気は無かったみたい」
「……」
「でも、そんなの無理だよね。やっぱり自分の好きな人には自分だけ見てて欲しいって思うもんね。ママはよく我慢したと思う。だから、しょうがないよ」
 少し寂しげに言うと小夜はドアから背中を離し、んっと伸びをした。
「小夜ちゃん……」
「祐さんはママと私だけを見ててくれるのかな? なんてね。長話してごめん。のぼせない内に上がってね」
 そう元気に言うと小夜は脱衣所を出ていった。
「ママと私だけを……か」
 佑介は浴室で一人呟いた。

 入浴終、佑介は小夜が入浴している間、リビングでテレビを見ていた。
(僕は芹沢課長の代わりになれるだろうか? これからずっと美子さんと小夜ちゃんだけを愛し続ける事ができるだろうか?)
 小夜が出してくれた缶ジュースをちびちび飲み、ぼうっとナイター中継を眺めながら佑介は自問自答した。
 美貴と別れて間も無く、美子と深い関係になり、そして今度は小夜と。
 自分が芹沢同様に無節操な人間に思え、佑介は自己嫌悪した。
 そこへ入浴を終えた小夜がやってきた。
 格好はセーラー服からTシャツと単パンに変わっていたが、髪型はしっかりポニーテールで、すらりと伸びた手脚が佑介には眩しかった。
「ふー、良いお湯だった。あ、祐さん、ちょっと貰うよ」
 そう言って、小夜がテーブルに置かれた缶ジュースを取ろうとかがんだ時、Tシャツの胸元から柔らかそうな胸が一瞬覗き、佑介の目は釘付けになった。
 小夜は気づかず、ジュースをゴクゴク飲んでいたが、佑介の未練がましい視線にようやく事を察した。
「あー、祐さん、胸見たでしょ?」
 両手で胸を隠しながら口を尖らせる小夜だったが目は笑っていた。
「ごめん。つい、ね。でも、初めてのメールに(もう少しあってもって)書いてたけど、小夜ちゃんの歳なら充分ある方なんじゃない?」
 佑介は謝りながらもしっかりおだててフォローした。
「えへへ、ありがとう。でも、祐さん誤魔化すの上手いね。そんな事言われたら怒れないもんね。案外、パパと似てるのかな?」
 嬉しそうに笑う小夜の何気ない言葉が佑介の胸に刺さった。
「僕……課長と変らないのかもしれない」
 突然真剣な口調になった佑介に小夜は驚いた。
「え、あ、ただの冗談だよ。そ、そんなに気にしないでよ」
「いや、そうじゃなくてさ。さっきからずっと考えてたんだ。実は僕、美子さんと出 会う少し前に付き合ってた女の人と別れたんだ」
 小夜は真剣な顔になり、佑介の正面にあぐらをかいて座った。
「その女と別れてからしばらくして美子さんと出会ってそういう関係になって、今度は小夜ちゃんだ。これじゃあ課長と何も変らないよ」
 申し訳なさそうに言う佑介を見て、小夜は笑った。
「あははっ、祐さんってやっぱり真面目だね。自分でそういう事が言えるってだけでも、パパとは全然違うよ。それにその女の人とはもう別れたんでしょ?」
 佑介は黙って頷いた。
「なら問題ないよね。ママと私は親子だし、ママも私もそうなるのを望んでるんだから。後は祐さんがずっとママと私だけを見ていてくれればそれでOKなんじゃない? それとも、祐さんにはそんな自信は無いのかな?」
 小夜はニコニコ微笑んでいた。
「小夜ちゃん……」
「先の事なんてきっと誰にもわからないよ。だから、今の祐さんに少しでもその気持ちがあるのなら、ママや私みたいに自分の気持ちに賭けてみても良いんじゃない?」
(今の自分の気持ちに賭けてみる)という言葉が佑介の頭の中にこだました。
(美貴さんとはきっちりお別れした。そして、今、僕は美子さんと小夜ちゃんが本気で好きだし、できればこれから先ずっと一緒に生きていきたいと思っている。そうか……それで充分だったんだ。迷う必要なんか……無かったんだ)
 佑介は小夜の言う通り、賭けてみる事にした。今の自分の気持ちに。
「小夜ちゃん……僕……」
「私の部屋に……行こう」
 佑介の言葉を遮って静かに言うと小夜は立ち上がり、佑介に手を差し出した。
 一瞬の沈黙の後、佑介は差し出された小夜の手をしっかりと握った。
 小夜の手は小さく華奢だったが、とても暖かかった。

 佑介と小夜は並んでベッドに腰掛けていた。
 緊張に身を硬くする佑介とは対照的に小夜はすっかりリラックスし、ゆっくりと佑介に寄り掛かると頭を佑介の肩に乗せた。
 その途端、佑介の身体がビクンと跳ねた。
「フフフッ、緊張してるの、祐さん?」
「う、うん。女の子の部屋に入ったのは初めてだし、女の子とこういう事になるのも初めてだから……」
 甘い女の匂いがした美貴の部屋とは異なり、小夜の部屋には甘酸っぱいような少女の匂いが立ち込めていた。それは、女の子に憧れていた中高生の頃、佑介が勝手に空想していたものと全く同じ匂いだった
「ふーん。ママの前に付き合ってた女は女の人で私は女の子ってわけね。でもね、祐さん。女の人は女の子にもなれるし、女の子は女の人にもなれるんだよ。私ね、このベッドの上で祐さんの事考えながら、一人でした事が何度もあるの。その時は私、女の子じゃなくて女の人だったと思う。それに今も……多分」
 小夜は佑介の肩に頭を乗せたまま、上目遣いで佑介を見つめた。
 小夜に音を聞かれるのではないかと思うほど高鳴る心臓の動悸を抑えながら佑介は小夜をそっと抱き寄せる。
 小夜は全身の力を抜いて佑介に身を預けると、静かに瞼を閉じた。
 目の前にいる少女が全てを自分に委ねてくれている。その喜びが佑介の緊張を解いた。そして、優しいキス。
 それは愛しく愛しくてしょうがない相手を慈しむような温かくて柔らかなキスだった。名残惜しそうに離れた唇から甘い吐息が漏れ、長い長いキスの終わりを告げる。
 気恥ずかしそうに見詰め合う二人。
「あはぁ……とろけそうだったよ。私の初めてのキス……。ありがとう、祐さん」
 小夜は少し涙ぐんで佑介の胸に顔を埋める。
 佑介は小夜の細い身体をしっかりと抱きしめた。
「祐さん……大好きだよ……」
 小夜の切ない呟きに佑介は小夜をベッドにゆっくり押し倒した。
 再びキス。
 今度は少し強く唇を押し付け、小夜の反応を確かめながら舌を挿入していく。
「ん!」
 小夜は一瞬だけ身体を硬直させたが、すぐに力を抜き、差し入れられた佑介の舌におずおずと自分の舌を絡めていく。
 かつて美喜や美子に教わったキスを今度は佑介が小夜へと伝えた。
 佑介はキスを続けながら、小夜のTシャツの中に手を潜り込ませた。
 再びビクンと跳ねる小夜の身体。
 佑介はそのまま手の平で小夜の柔らかな乳房をそっと揉みし抱いた。
「あはあ……」
 初めての快感に耐えられず、小夜の口から喘ぎ声が漏れる。
「嫌だったり、痛かったりしたらいつでも言えば良いからね」
「う、うん。でも……祐さんの手、すごく気持ち良いよ……」
「自分でするのとどっちが良い?」
 佑介は意地悪な質問をしながら小夜の硬くなった乳首をわざと捏ね回した。
「あっ、あっ、あっ! そ、そんなのずるいよぉ、祐さんの……方が……気持ち良いに決まって……るもん……」
 熱い吐息を吐きながら抗議する小夜の姿に佑介は激しく興奮した。
「小夜!」
 佑介は小夜の耳に舌を這わせると、激しく耳たぶを弄んだ。
「ひっ!」
 思いがけない愛撫に悲鳴のような声を上げる小夜。
「そ、そんな……耳は……だめ……だよぅ……」
 言葉とは裏腹に佑介から与えられる未知の快感に小夜の心と身体は喜び、打ち震えた。佑介はTシャツを捲り上げると舌を耳元から首、そして乳房へと移動させ、同時に手を小夜の単パンの中へと差し入れた。
 小夜の乳首にしゃぶりつき、中指をじっとりと湿ったパンティー越しに小夜のスリットに押し当てる。
「あ! うんっ! ふぁああ……」
 小夜の身体が敏感に反応しピクピクと痙攣する。
 佑介は小夜の乳首を舌で弄びながら、中指の腹でスリットを擦り上げる。
 コットン生地のパンティーは小夜のスリットに沿ってぐっしょりと濡れ、佑介は指先で小夜の秘唇の形や感触をはっきりと確認する事ができた。
 そして、佑介はパンティー越しに小夜の硬くしこった肉芽を探し当てると、指先で優しく揉み解した。
「そ、そこっ、だめ! か、感じ過ぎちゃうよお!」
 弱点に加えられた強い快感から逃れるように小夜の腰がずりずりとベッドの上で踊った。
「あっと、ごめん。小夜ちゃんには強すぎたね。じゃあ、これはどうかな?」
 佑介は小夜の単パンを脱がせると小夜の股間に顔を押し付けた。
 スポーティーなデザインのパンティーを通して、小夜の蒸れた体臭をたっぷりと吸い込む。その甘いような酸っぱいような少女独特の匂いに佑介は首筋が痺れるような感覚を味わった。
「あ、ゆ、祐さん! そんなとこの匂い嗅いじゃいやぁ!」
 小夜は恥ずかしさに身を捩ったが、佑介は小夜の両太ももをしっかりと抱え込んだまま、小夜の恥丘から伝わる温もりとぷりぷりした弾力を顔面で受け止め、その悦楽に酔いしれた。
「すごいよ、小夜ちゃん。小夜ちゃんの脚、何て綺麗なんだ」
 佑介は夢中で小夜の内ふとももに頬擦りをした。
 陸上で鍛えられた脚は若々しく張り、最高の感触で佑介に応えた。
「本当? 私の脚、綺麗?」
「脚だけじゃないよ。小夜ちゃんの身体全部素敵だよ。だから、全部見せて欲しい。良いかい?」
 佑介の懇願に小夜は頬を赤らめ、こくんと頷いた。
 佑介は小夜の身体から全ての衣類を脱がせた。
 佑介の目の前に小夜は生まれたままの姿で横たわった。
「恥ずかしいよぅ……あんまり見ちゃいやぁ」
 羞恥に顔を真っ赤に染める小夜だったが、佑介の(全部見せて欲しい)という言葉に応えようと身体を隠そうとはしなかった。
恥じらう小夜の表情は少女のそれではなく、まさに女そのものだった。
 自分では(もう少しあっても)と言っていた乳房は十五歳という年齢を考えれば充分すぎるほどに膨らみ、恐ろしく細い腰から尻にかけてのラインはまだ青さを残しながら、少女らしく瑞々しい魅力に溢れていた。
 陸上競技で程好く引き締められた柔らかな筋肉が小夜の全身を包み込み、全く無駄の無いスレンダーなシルエットを作り出していた。
「綺麗だ……本当に綺麗だよ。小夜ちゃん……」
 佑介はうっとりとした目で感嘆の声を漏らした。
「あはっ、嬉しいな。大好きな祐さんにそんなこと言ってもらえるなんて、私、すごく幸せだよ」
 小夜は涙目でにっこり微笑んだ。
「小夜ちゃん……好きだ……」
 佑介は小夜にそっとキスすると小夜の秘唇に指を這わせた。
 秘唇は淫らな音を立てるほどに濡れ、しっかりと閉じたスリットは佑介の指の侵入を拒んでいた。
 佑介は指先で小夜のスリットを優しく撫でながらゆっくりとほぐしていく。
「ああ、祐さん。優しいね。それ、とっても気持ち良いよ」
「まだまだだよ。もっともっと良くしてあげる」
 佑介はそう言うと小夜のスリットに舌を這わせた。
 舌先でスリットを丁寧に舐め上げ、硬くしこった肉芽を舌で包み込んだ。
「あっ、あはぁあああ……」
 小夜が蕩けるような声を上げる。
 小夜の声を聞きながら、佑介は舌先でスリットを優しく割り、舌を上下に這わせてゆっくり押し広げた。
「あっ、はあ、はあ、祐さん。私、もう大丈夫だと……思うから……きて……」
 小夜の言葉に佑介は着ているものを全て脱ぎ去り、小夜の両脚を大きく開いた。
「あ、あの、祐さん……。私、その……初めて……だから、優しくお願い……します」
 急に改まって懇願する小夜の姿に佑介は感動を覚えると同時に大きな責任を感じた。 もちろん、小夜が処女である事は予想していた事だが、いざその処女を奪うとなると、さすがに緊張した。
「初めての相手が僕で本当に良いのかい?」
「うん。祐さんが良い。祐さんじゃなきゃ……いや……」
 小夜はそう言うと頬を赤らめ横を向いた。
「わかった。ありがとう、小夜ちゃん。少し痛いと思うけど、出来るだけ優しくするからね」
 佑介の言葉に小夜は佑介を見つめて無言で頷いた。
 佑介は硬く勃起したペニスの先端を小夜のスリットに擦り付けて行く。
 濡れた粘膜同士が擦れ合い、身の毛がよだつような快感が二人を襲った。
「すごい、祐さんのと私のが擦れてる……」
 目を瞑り、快感に身を委ねる小夜。
 佑介はペニスの先で小夜のスリットを優しく割ると、ゆっくりと胎内に侵入した。
「痛っ!」
 痛みに身体を硬くする小夜を見て、佑介は慌てて腰を止める。
 佑介のペニスはまだ先端しか小夜の胎内に収まっていなかった。
「小夜ちゃん……やっぱり辞めようか?」
 心配そうに聞く佑介に小夜は首を激しく横に振る。
「だめ! やめちゃだめ! 初めてだから痛いのは当たり前だもん。私、我慢するから、 痛くても我慢するから……きて!」
 涙をこらえて切羽詰まった声を出す小夜。
 その姿に佑介は覚悟を決め、小夜の腰をしっかりと掴んだ。
 次の瞬間、佑介の腰がゆっくりと、しかし確実に突き出され、ペニスが小夜の身体に打ち込まれていく。
 閉じようとする肉門を強引に突き破るような感触と共に佑介のペニスは小夜の小さな膣を刺し貫き、終点の肉壁へと突き立てられた。
「は、入ったよ、小夜ちゃん。わかるかい?」
「う、うん。わかるよ。祐さんが……私の中に入ってる。お腹の奥に……当たってるの。 私、祐さんとセックスしてるんだね……うれしい……」
 小夜は痛みに耐えながらも、佑介に処女を奪われた喜びに全身を震わせた。
「そうだよ。今、僕たちはセックスしてるんだ。一つになってるんだよ」
 佑介はそう言いながら、ゆっくりと腰を前後にピストン運動させる。
「いっ、あっ、あっ、あっ」
「まだ、痛い?」
「う、うん。でも、少し……気持ち良くなってきた」
「そう、じゃあ、少し速くするよ」
 佑介は腰のピストン運動を少しずつ速くしていった。
 小夜の幼い膣はきつく、ペニスを抜き差しするたびに強烈な快感が佑介の腰を痺れさせた。
「さ、小夜ちゃん! 小夜ちゃんの中、すごいよ! 最高だ!」
 佑介は夢中で腰を振った。
「あんっ! あんっ! あんっ! わ、私も、すごく気持ち良いよ、祐さん!」
全身をリズミカルに揺らしながら、小夜は恍惚の表情で初めての快感に身を委ねた。佑介は上下に揺れる小夜の両乳房を揉みし抱き、その先端の尖った乳首を強くしごいた。
「あ、だめ、祐さん、おっぱいっ! 私、おっぱい、弱いのぉ!」
 激しい快楽に恥じらいを振り捨てて叫ぶ小夜。
 佑介は更に腰の振りを激しくしていく。
 パンッ、パンッ、パンッという音が響き、佑介のペニスの先が小夜の膣奥に叩き付けられる。
「ゆ、祐さん、すごい、すごいよ! 祐さんが奥に当たって、気持ち良い! 私、死んじゃう!」
 小夜は首を左右に振りながら全身で喜びを訴えた。
 小夜の絡み付く肉ひだに引き絞られ、佑介のペニスに痙攣が走る。
「小夜ちゃん! 僕、もう駄目だ、我慢できないよ!」
「い、良いよ! 大丈夫だから! 私の、私のお腹の中に……全部出してぇ!」
「イクよ! 小夜ちゃんの中で出すよ!」
 佑介は最後の瞬間に向けて、小夜の身体を壊さんばかりに責め立てた。
「うああぁ、祐さん! そ、そんなに強くしたら、お腹の中身が出ちゃうよ!」
 佑介のペニスに膣肉を引き摺り出されるような錯覚を覚え、小夜が思わず叫んだ。
「うあ、あ、で、出る! 小夜ちゃん! 出る!」
「祐さん! 私も、もう、イッちゃう! イッちゃう! イクゥッ!」
 全身をガクガクと震わせながら小夜が生まれて初めてのオルガスムスを迎えた瞬間、小夜の胎内で佑介のペニスが弾けた。
 強い脈動と共に佑介の新鮮な精液が小夜の幼い子宮を満たしていく。
「祐さんの精子……すごく熱いね。お腹の中、火傷しちゃいそう……」
 小夜はオルガスムスの余韻に身体をヒクヒクと痙攣させながら、胎内に流れ込む精液の熱さに深い喜びを感じていた。
 小夜の股間のシーツには真紅の染みが静かに広がっていった。
 佑介がグッタリしている小夜からペニスをゆっくり引き抜くと、小夜の秘唇からは真っ赤な鮮血と佑介の放った白い精液が溢れ出した。
 佑介は慌ててティッシュを数枚取り、小夜の股間にあてがうと、腫れ物を触るような手つきで血と精液を拭った。
「あぁ……」
 果てたばかりで敏感になった秘唇に触れられた小夜が小さく喘いだ。
「祐さん……ありがとう。でも、ちょっと、恥ずかしいね」
 佑介の行為に感謝しつつも恥じらう小夜。
「痛かったろう。上手く出来なくてごめん」
 佑介は照れと小さな罪悪感を隠すように言った。
「ううん。とっても気持ちよかったよ。祐さんってH、上手だね。友達は初めての時は痛くて全然気持ちよくなんかなれないって言ってたのに、私、初めてイッちゃったもん」
 小夜は嬉しそうに言って、身体を起こそうとしたが、腰に力が入らず、ベッドに崩れた。
「小夜ちゃん!」
「あはぁ。腰に力が全然入らないよ。祐さん、起こしてくれる?」
 力無く手を差し伸べる小夜に佑介はそっとキスをした。
「今は無理して起きなくても良いよ。小夜ちゃんの身体が元に戻るまでこうしてるからさ」
 佑介は小夜の胸まで布団を掛けると、小夜の手を握った。
「ありがとう祐さん。優しいね。大好き」
 小夜は微笑むと佑介の手をそっと握り返した。

「ねえ祐さん。私が気づいてるって事、ママには内緒だよ。私は祐さんとメールを交換している内に自然に祐さんの事が好きになったんだからね」
「わかってるよ。でも、小夜ちゃんは良いのかい? 僕はこれまで通りに美子さんと付き合っていくんだよ。つまりその……」
「私も抱くけど、ママも抱くって事でしょ?」
 小夜は臆面も無く言った。
「ま、まあ、うん、平たく言うと……そういう事かな」
「うん、ママなら良いよ。私、ママの事大好きだもん。でも他の女と浮気したら……」
 小夜は意味ありげに言葉を切った。
「し、しないしない。絶対しないよ。年上と年下の美人が両方手にはいるのに浮気する必要なんかないからね」
 慌てて否定する佑介。
「じゃあ、指切り」
 小夜は布団を退かして起き上がると、佑介に小指を差し出した。
「ずっと、ずっと、ママと私だけを見ていてね。約束だよ」
「わかった。約束するよ。絶対に」
 佑介は細く美しい小夜の小指に自分の小指を絡めながら強く心に誓う。
 そして、少女と青年の間に誓いの指切りが交わされた。

 翌朝、玄関から佑介を送り出した小夜に背後から声がかかった。
「どう、上手くいった?」
 振り向いた小夜の目の前には少し心配そうに佇む美子がいた。
「もちろん。ママの協力のお陰もあって、私の作戦通り。ママのメールは効果抜群だったし、ママが作った料理もすごく美味しいって祐さん誉めてたよ」
「あら、嬉しいわね。で、小夜の方はどうだったの、佑介君にちゃんと女にしてもらえた?」
「バッチリ。祐さん、すごく上手だったよ」
 小夜はVサインをしながら微笑んだ。
「まったく、昨日まで処女だった娘の言う事じゃないわね。でも、まあ御礼を言わなきゃね。小夜のお陰で取りあえずの保険はかける事ができたし」
「あくまで取りあえずね。祐さんの気持ちも、ママの気持ちも、もちろん私の気持ちも、これから先どうなるかなんて誰にもわからないんだから。でも、その時が来るまではママと私はライバルだからね。私、祐さんをメロメロにしてママの事なんか見向きもさせなくしちゃうんだから」
 そう言って小夜はポケットから一枚の写真を取り出す。
「そう簡単にはいかないわよ。ママだってまだまだ捨てたもんじゃないんだから」
 美子も小夜に写真をかざして見せた。
 作戦の成功に喜び合う母娘の手には、全く同じ佑介の写真が握られていた。<了>

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