義母志願
第二章 それから佑介と美子は幾度と無く情事を重ねた。 どちらからともなく交換した連絡先を使って、互いに連絡を取り合い、都合がつけば、恋人同士のように時間を過ごした。 そのせいもあって、佑介の美貴に対する未練や何となく気まずいような感情は徐々に薄れていった。 そんなある日。 「祐君、残業お疲れさま! 相変わらず三課は忙しいみたいだね」 オフィスで一人残業していた佑介の両肩を美貴が元気に揉んだ。 美貴は以前は佑介と同じ開発部第三課に勤務していたが、開発部の業務拡張に伴って、今は新設の第四課に移動していた。 「どわっ! って脅かさないで下さいよ坂上さんっ」 佑介は慌てて振り返る。 「あっ、ひどいな。もう名前で呼んでくれないんだ」 美貴は少し笑った猫目で拗ねたように言った。 「だ、だって社内じゃ名字で呼び合うって約束だったじゃないですか。それに……」 「もう祐君と私しかいないよ。で、私の名前は?」 美貴の悪戯な質問に佑介は渋々答えた。 「美貴さん……です」 「よろしい! ご褒美にこれあげるね」 そう言って、美貴は佑介にファーストフードの紙袋を渡した。 「お腹空いてるでしょう? 祐君の好きなテリヤキだよ」 元々細い美貴の猫目は今や完全に線になっていた。 「あ、ありがとうございます。でもあの……美貴さん?」 「なーに?」 「何か……良い事があったみたいですね?」 恐る恐る佑介が尋ねる。 「何でそう思うの?」 「何でって、思いっきり浮かれてるじゃないですか。それに美貴さんが奢ってくれるのって何か良い事があった時だけですし。それも余程の事が」 「ふーんそういう事言うんだ。その袋の中、祐君と私の二人分あるんだけど、私が一人で全部食べちゃうね」 ニッコリ笑顔の不気味な美貴が佑介の手からファーストフードの袋を奪おうとする。「いや、美貴さんにはいつもいつも御馳走になってしまって申し訳ないです。はいっ」 「でしょう、でしょう。二人で仲良く食べながら話そうね」 佑介のわざとらしいセリフにも美貴はニッコリ微笑んで、佑介の隣の席に腰を下ろした。 「で、何があったんですか?」 「私、今月一杯で会社辞める事になったの」 にこにこしながら美貴は言った。 「えっそれが良い事……なんですか? それに辞める理由は何なんですか?」 「寿退社」 胸を張って言う美貴の言葉に佑介の頭には芹沢の顔が思い浮かんだ。 「芹沢課長と結婚……するんですか?」 「いいえ、私の故郷の人と御見合い結婚を……」 「ええっ!」 芹沢以外の男との結婚。しかも美貴には最も似つかわしくない御見合いという形で。 この二つの事に佑介は驚いた。 「っていうのが表向きの話で、本当は海外転勤になる芹沢課長について行くの」 「海外転勤って、新しくニューヨークに開発部を作るっていうあれですか?」 「そう……芹沢課長がそこの部長になるんだって」 「で、課長と結婚して、一緒に行くと……」 「ううん。結婚はまだしないの。だから押し掛け女房みたいな感じね」 「美貴さんはそれで良いんですか?」 「ええ。課長も離婚したばかりだし、しばらく一緒に暮らしてから考えても遅くはないと思うし」 美貴の離婚という言葉に美子の事を思い出し、佑介の胸がチクリと痛んだ。 「そうですか……。取りあえず、おめでとうございます……ですよね」 「フフフッ、どうもありがとう。でも、さっき私が寿退社って言ったらすぐに芹沢課長の名前が出たけど、やっぱり祐君も知ってたんだ」 佑介には美貴の声が少しトーンダウンしたように思えた。 「そりゃあ色々噂を聞いてましたから」 「そっか……そうだよね、狭い社内だもんね。その……ごめんね……祐君」 それは美貴らしからぬしおらしい声だった。 「そ、そんな、謝らないで下さい。しょうがないですよ。やっぱり、一番好きな人と一緒にいるべきだと僕も思いますし」 努めて明るく言う佑介だったが、美貴と過ごした日々が思い出され、胸が締め付けられた。 「あはっ、祐君に慰めてもらえるなんて思いもよらなかったな。でも、ありがとう。今更こんな事言っても信じてもらえないだろうけど、私、祐君の事も本気で好きだったよ。だけど、課長とは私が入社して以来の付き合いで、課長が離婚したって話を聞いたらもういてもたってもいられなかった。本当はあの夜、祐君に全部話すべきだったんだけどね」 ニッコリ微笑む美貴の目には薄く涙が光っていた。 「僕も美貴さんが大好きでした。僕、美貴さんと付き合うまでは女の人が苦手で、もちろん付き合った事なんて無くて。一生、そういう事は無いんだろうなぁって思ってたんですよ。でも、美貴さんに会って、色々な事を教えてもらって、本当に楽しかったです。ありがとうございました」 そう言って、佑介は頭を下げた。 「あらら、お礼を言われちゃった。でも、こちらこそありがとう。私もすごくすごく楽しかったよ。祐君みたいな年下の可愛い男の子、ずっと探してたんだよね。年上振って、いっぱい苛めてやろうってね」 「僕も美貴さんみたいな綺麗なお姉さんに優しく苛めてもらいたいなってずっと思ってました」 「フフフッ、祐君も言うようになったね。ところで今日はもう仕事は終わりよね?」 「ええ。美貴さんのお陰でお腹も一杯になったし」 そう言うと佑介は空になったファーストフードの袋を丸めてごみ箱に捨てた。 「じゃあ一緒に帰ろ。そう言えば初めてだよね?」 「言われて見ればそうですね。お互い、結構気を使ってたんですね」 「そんな事してもバレバレなのにね。さっ帰ろ!」 美貴は佑介の手を引くようにしてオフィスを出た。 「さっきの話ですけど、誰かにバレてたんですか? 僕たちの事」 揺れる電車の中で佑介が聞いた。 佑介と美貴は通勤に同じ電車を使っていた。会社からの帰りでは美貴の方が先に降りる事になる。時間が遅いせいか、車内は閑散としていた。 「そうね、三課の事は知らないけど、四課の女子社員はみんな気づいてたみたいだよ」 「ええっ、そうなんですか?」 「さっきも言ったけど、社内は狭いからね。それにその手の話はみんな興味あるから、噂が広まるのも速いんじゃない?」 「じゃあ……芹沢さんも?」 佑介は恐る恐る聞いた。 「って、普通は思うよね。でも課長からそういう話をされた事は一度もないのよね。もちろん、知っていて話さなかったのか、本当に知らなかったのかはわからないけど」 「そうなんですか……」 佑介はほっとしたような不安なような複雑な気持ちだった。 「気になるみたいね」 少し意地悪そうな表情で美貴が言った。 「それはそうですよ。芹沢課長は上司ですし、人間関係のトラブルは厄介なんで」 「課長はもうすぐニューヨークに行っちゃうのに?」 「そういう事は関係無いです。やっぱり他人に嫌われたり怨まれたりするのは嫌ですから」 「そういうとこ、祐君らしいよね。課長もそこが気に入ったんだろうけど」 「どういう意味です?」 「課長、自分の後任に祐君を推薦したみたいよ」 事も無げに言う美貴だったが、その内容は佑介にとっては驚愕に値するものだった。美貴の言葉通りなら、佑介は現在勤務する開発部第三課の課長になるという事だからだ。 佑介は入社四年目。佑介の上には当然先輩が幾人もいるわけで、彼等の頭を飛び越えての昇進は佑介が最も嫌う人間関係の縺れを誘発しそうだった。 「いくらなんでもそれは無理でしょう」 ウンザリしたように佑介が言った。 「そうでもないんじゃない? うちの会社は全般的に年功序列の古い体質だけど、開発部に限っては実力主義って感じだし。芹沢課長が課長になったんだって今の祐君と同じくらいの歳だったって聞いてるけど」 「でも、なんで僕なんですか? 他の先輩方でも良いじゃないですか」 「順番的にはね。でもこの際重要なのは人の上に立って人間関係を維持する能力でしょ。開発部の人達は開発技術はすごくても他の人との連携や普通の事務処理なんかは苦手って人が多いみたいだし。とにかく、芹沢課長がそれだけ祐君の事を買ってるって事だけは事実よ」 美貴は美子とほとんど同じ事を言っていた。 佑介は芹沢に気に入られているらしいという事に困惑していた。 そうこうしている内に電車は美貴の降りる駅に到着し、ドアが開いた。 美貴はホームに降りるとゆっくりと振り向く。他に降りる人間はいなかった。 「じゃあ」 美貴はそう言って、いつも通りの笑顔で車内の佑介に握手を求めた。 「はい……。お疲れさまでした……」 佑介は美貴の手をしっかりと握った。美貴との思い出に胸が詰まった。 一瞬の沈黙の後、発車のベルが鳴り始める。 その音に美貴の笑顔が歪んでいく。美貴は泣くのをこらえて必死に笑おうとしていた。やがてベルは鳴り終わった。 「さよなら……」 佑介の手をゆっくりと放し、最後の力を振り絞って笑顔を作る美貴の頬を涙が伝った。次の瞬間、閉まるドアをすり抜けて佑介はホームに飛び降りていた。 「あ……」 自分で驚く佑介。そんな佑介を美貴も驚いた表情で見つめている。 電車が走り去り、人気の無くなったホームに佇む二人を静けさが包んだ。 「ごめんね、祐君。私に泣く権利なんか無いのにね」 涙を拭う美貴だったが、涙は後から後から溢れ、どうにもならなかった。 「……」 佑介は美貴が涙を流す姿を見るのは初めてだった。美貴はいつでも明るく元気だったから。 佑介は思わず美貴を抱きしめてしまった。こんな時、どんな声をかければ良いのか全くわからなかった。 「あっ」 美貴は身体を一瞬ビクンと震わせたが、すぐに力を抜いて佑介に身を預けた。 慣れ親しんだ美貴の甘い体臭と柔らかな抱き心地に心がざわめき、佑介は焦った。 (駄目だ。美貴さんには芹沢課長がいるんだ。それに今の僕には美子さんが。でも……) そんな佑介の腕の中で美貴がそっと呟いた。 「祐君ってやさしいね。だから……」 美貴の飲み込んだ言葉が佑介にはハッキリと聞こえた。 (だから……好き)と。 頭の中が真っ白になり、気がつくと佑介は美貴に口付けていた。 美貴もまたそれを拒む事はなかった。 ベッドの上で佑介と美貴は激しく抱き合った。 これで最後という思いが二人の気持ちを激しく高ぶらせていた。 「もっと、もっと強く吸って……」 美貴は自分の乳房にしゃぶりついている佑介に切なげな声で哀願すると佑介の頭を抱きしめた。 美貴の体温と甘い体臭に佑介の頭はクラクラした。 佑介は美貴の硬くなった乳首をきつく吸いながら、その感触を舌先で楽しんだ。 同時に中指の腹でパンティーの上から美貴の秘唇を優しく撫でる。 「ああっ、いいよ……そこ、すごく……いい……」 パンティーにはスリット状の染みがくっきりと浮かび上がり、広がっていく。 佑介は手の平全体を美貴の股間に強く押し当て、強く揉みし抱いた。 「あはぁあああ」 美貴が鼻にかかった蕩けるような声を上げる。 股間に加えられた強い圧迫によって、淫裂と肉芽がパンティーと擦れ、凄まじい快感を生み出していた。 グジュッグジュッという卑猥な音と共に美貴のパンティーはグショ濡れになり、佑介の手は染み出した美貴の淫液で熱く濡れていった。 佑介は美貴に口付けるとそっと舌を差し入れた。美貴はためらう事無く佑介の舌を受け入れ、自らの舌を強く絡め、そして吸った。 唾液を交換するような濃厚なキスに二人の脳髄が痺れていく。 佑介が美貴のパンティーに手を差し入れると美貴も佑介の硬く勃起したペニスに指を絡めた。 佑介は指先で優しく引っ掻くようにして美貴のクレバスを割り、中指を美貴の胎内に滑り込ませた。 「んん!」 キスで塞がれた美貴の口からくぐもった声が漏れる。 佑介の中指が美貴の胎内をゆっくりと掻き回し、その指先は肉壁を押し広げるように美貴の胎内で淫らに蠢いた。 「んっんっんっ」 美貴が喘ぎ、身体をビクッビクッと震わせる度に肉壷は引き絞られ、佑介の指をきつく締め上げながら膣奥へ吸い込もうと蛇動した。 佑介の愛撫にお返しをするように美貴の指が佑介のペニスをしごき始める。 鈴口から漏れる先走りの粘液をペニス全体に塗りたくるようにして美貴の指は強くゆっくりとピストン運動した。 「うっ……」 今度は佑介が呻いた。 美貴の指がペニスの根元から先端までをねっとりとしごき上げると、尿道から絞り出された透明な粘液がペニスの先端に小さな液玉を作った。美貴はその液玉を人差し指で擦り取ると潤滑油代わりにして、根元へと強くしごき下ろした。 佑介はペニスをもぎ取られるような、ペニスの皮を剥き取られるような強烈な感覚に身悶えした。 「ね、ねぇ……シックスナイン……しよ……」 美貴はそう言うと佑介を横たえさせ、その顔を跨いだ。 「私の口に濃いのを出して……それから膣に……ね……」 美貴の口が佑介のペニスを根元までゆっくりと飲み込んだ。 「うはぁ……ああ……」 佑介が思わず歓喜の溜め息を漏らした。 美貴がペニスを根元まで咥えたまま強く吸うと尿道に溜まっていた少量の粘液が口に流れ込んだ。 しょっぱいような苦いような、でも慣れ親しんだ味に美貴は幸せな気持ちになって、 粘液を飲み下した。そして、美貴はペニスを舌で弄びながら、首を上下に動かし始める。 腰が抜けるほどの甘美な感触にうっとりする佑介の目の前には美貴の濡れた秘唇と茶褐色のアヌスが丸見えになり、美貴の首の動きにつられて上下に揺れていた。 佑介は美貴のお尻を両手で掴んで引き寄せると、淫裂に舌を這わせる。 「んっ……」 一瞬、美貴の動きが止まり美貴の腰がビクンと跳ねたが、すぐにピストン運動が再開された。 佑介は美貴の股間から発せられる熱気と淫臭を胸一杯に吸い込みながら、美貴の肉芽を嬲り、そして、ヒクヒクと蠢くアヌスにまで舌を這わせた。 「んあ!」 たまらず美貴はペニスから口を離してしまう。 唾液で濡れた佑介の舌が美貴のアヌスに集まる皺の一本一本までを丁寧に舐め取っていく。 「はあはあ、あはぁ……。祐君、そこ……すごく気持ち良いよぉ……。覚えててくれたんだね……私がそこ好きなの……嬉しいよ……」 美貴は目をとろんとさせながら再び佑介のペニスを咥え、しごき始めた。 汗びっしょりになりながらお互いに愛撫しあう二人の吐息と粘膜同士の擦れる音が部屋に響く。 やがて、佑介のペニスに限界の時が近づいた。 「美貴さんっ……ぼ、僕……もうイキそう……」 込み上げる射精感に佑介が喘ぐ。 「いいよ、祐君。私も……もうすぐイキそうだよ。ね、一緒にイこう……一緒に……ね……」 美貴は首のピストン運動を速め、佑介も美貴の肉芽を激しく舌で弾きながら、蜜壷に挿入した指を素早くピストン運動させていく。 ギシギシとベッドを軋ませながらお互いを高め合っていく二人。 そして、美貴の身体がガクガクと揺れ始める。 強烈なオルガスムスの訪れを全身で感じながら、美貴は佑介のペニスを思い切り吸った。その瞬間、美貴の口に吸い出されるように佑介のペニスに射精の脈動が始まった。 佑介の腰が跳ね上がり、白濁液が勢い良く美貴の喉に打ち込まれていく。 佑介は美貴の股間に必死に顔を押しつけながら、射精の快感に耐えた。 一方、美貴は喉に絡まるほど濃厚な精液を飲み下しながら第二の頂きへと上り詰めていた。 美貴は金縛りに遭ったように全身をぴくっぴくっと小刻みに痙攣させながらも佑介のペニスから精液の最後の一滴を吸い出し、そして果てた。 グッタリとして絶頂の余韻に身を委ねる二人だったが、美貴の手は、まだ硬さを残す佑介のペニスを労るように優しくしごいていた。 「いっぱい出たね。祐君のでお腹がいっぱいになったよ」 お腹を摩りながら美貴が言った。 佑介は何て返事をして良いかわからず、ただ顔を赤らめた。 「私と別れた後、新しい女はいないの?」 「えっ……ええ……」 美貴の問いかけに佑介の頭には美子の顔が浮かび、言うべきか迷ったが、美子に対する遠慮と罪悪感、そして、これ以上問題を複雑にしたくないという思いから嘘をついてしまった。 「ふーん、そっかぁ」 美貴の納得したような口振りに佑介は罪悪感を覚えた。 「あ、あの……僕、実は……」 「それ以上言わなくていいよ」 美貴の目は優しく微笑んでいた。 「……」 「元々、私が聞いていい事じゃなかったね。ごめんね」 「いや、そうじゃなくて……」 「その女に悪いって思ったから、嘘をついたんだよね。大切な女が……出来たんだよね……」 美貴は全てお見通しだった。 「はい……」 佑介は真剣な顔で答えた。 「良かったね……本当に……良かったね」 「はい……」 「でも、その女には悪い事しちゃったな。別れたのに祐君の事、誘っちゃって」 「それは違います。美貴さんに誘われたからじゃなくて、僕が来たかったから、いえ、 最後にもう一度、美貴さんを抱きたかったから……ここにいるんです」 佑介はきっぱりと言った。 佑介の言葉に美貴の顔が綻んだ。 「男らしくなったね……何だか嬉しいな。でもきっと、その女も許してくれるよね。これで最後だから、本当に最後なんだから……」 「美貴さん……」 「祐君……来て……」 美貴が両手を広げて佑介を招いた。 佑介はゆっくり美貴を押し倒す。 美貴の秘唇は十分に潤いを残しており、佑介のペニスはすっかり硬さを回復していた。佑介はペニスの先端で淫裂を割るとそのまま美貴の胎内に滑り込んだ。 「うくっ……」 肉洞を押し広げながら突き入れられたペニスの先端が膣奥の壁にコツンと当たり、美貴の身体がビクンと震えた。 「あっ……はあ……奥まで……届いてるの……気持ちいい……」 佑介はゆっくりと腰を前後にピストン運動させていく。 ぺタぺタと吸い付く肉壁とペニスが擦れ合う感触に、えも言われぬ快感が佑介の背中を這い上がった。肉洞全体が妖しく蠢き、佑介のペニスを奥へ奥へと吸い込もうとしているかのようだった。 「祐君、すごいの、すごく気持ちいいの、たまんないよぉ」 美貴の甘ったるい声を聞きながら佑介はブルンブルンと上下に揺れる、美貴の両乳房を鷲掴みにして強く揉みし抱くと腰の動きを速めた。 上下から激しく責められ、強烈な悦楽に美貴の身体が身悶えする。 「もっと、もっと強く……。来て! 来て! お願い……」 美貴の息遣いは荒くなり、目はとろんとして焦点が合わなくなっていた。 佑介は深く繋がりを保ったまま美貴を抱き起こし、あぐらをかいた両脚の上に乗せた。激しく抱き合いながら、お互いの唇を貪る二人。 佑介は美貴の腰を抱くと上下に揺すり始めた。 「っはあ!」 真下から強く突き上げられ、美貴の身体が大きく上下に揺れる。 美貴は佑介のペニスに全身を串刺しにされるような錯覚を覚えながらも両脚を佑介の腰に絡み付け、自らも腰を前後に振り始めた。 二人の腰が淫らにぶつかり合い、パム! パム! パム! というリズミカルな音が鳴った。 身体が深く沈み込むたびにペニスの先端が膣奥の壁にゴツゴツと叩き付けられ、その衝撃は美貴の子宮、そして胃袋まで伝わった。 「お腹が! お腹が破裂しちゃう!」 そう叫びながらも腰の動きを更にエスカレートさせていく美貴に佑介もラストスパートに入った。 ベッドがガタガタと鳴り始め、二人の引き起こす振動で部屋全体が揺れているようだった。 「うあああ! く、来る……すごいのが来るの! 私、もうすぐ、もうすぐ、終わっちゃう!」 佑介は美貴の唇をキスで塞ぎ、最後の頂きへと駆け上っていく。 二人は身も心も一つに溶け合いながら、同時にオルガスムスへと達した。 「ひいぃぃぃぃぃ!」 煮え立つような精液を子宮に浴びせられた美貴が悲鳴を上げる。 美貴の頭の中は真っ白になり、全身が粉々に砕け散るような錯覚を覚えた。 美貴は背中を折れんばかりに弓なりに反るとビクッビクッと大きく痙攣し、そのままガックリと佑介の胸に倒れ込んだ。 ヒクヒクと小刻みに痙攣する美貴の身体を佑介はいつまでも抱きしめていた。 翌朝早く、佑介と美貴は駅のホームに立っていた。 空は晴れ渡り、凛とした冷たい空気がやさしく吹き抜けて行く。 佑介も美貴も黙ったまま、真っ直ぐ前を向いていた。 スピーカーから電車の到着を告げるメッセージが流れてくる。 「ねえ祐君。私の最後のお願い、聞いてくれるかな?」 「ええ、いいですよ」 「祐君は電車に乗ったら振り向かないで。そのままお別れしよ」 「美貴さん……」 「あはっ、私さ、豆腐みたいな根性の女だからさ。祐君の顔見たら、また泣いちゃいそうだから。だからお願い」 両手を合わせてウィンクする美貴。 それは美貴が佑介に何か頼み事をする時に必ずしたポーズだった。 佑介は美貴の姿に言いようの無い懐かしさと寂しさを感じた。 「……わかりました」 「ありがとう、祐君」 電車がホームに止まりドアが開いた。 「じゃあ元気でね!」 美貴が佑介の背中をポンッと叩く。 「はい。美貴さんも……お元気で」 「あははっ、大丈夫、私はいつでも元気だよ。さ、乗った乗った!」 美貴に促され、佑介は電車へと乗り込む。 背中に美貴の視線を感じ、佑介は振り返りたい衝動に駆られたが、約束の事を思い、耐えた。 やがて発車のベルが鳴り、ドアが閉じた。 その瞬間、美貴の言葉が頭をよぎる。 (これで……最後だから……) 佑介は約束を破って振り返った。 ドアの窓ガラスの向こうで美貴は一瞬驚いた顔をしたが、「しょうがないなぁ」とでも言いた気に微笑むとほんの少しだけ首を傾げて、佑介に敬礼して見せた。 電車が走り出し、美貴の姿が見えなくなっても佑介の胸には美貴の最後の姿が焼き付いて離れなかった。 「さよなら、美貴さん……」 溢れる涙を拭わずに佑介は心の中で呟いた。 その月の終り。芹沢直樹はニューヨークへと転勤して行き、坂上美貴は会社を退職、芹沢と共にニューヨークへ渡った。 そして、佑介は美貴の言っていた通り、開発部第三課の課長代理に昇進した。 |