シスターコンプレックス
第五章 (今日は先輩におねだりして、キスをしてもらった。生まれて初めてのキス。すごくドキドキした。でも……) 亜美の日記は涼のことで埋め尽くされる。初めての恋に初めてのキス。そして……、 (先輩は私を抱いてくれなかった。私が子供っぽいから、そういう気にならないのかな? それとも、私を大事にしてくれているの? だったら……いいな) そう日記を締め括り、亜美は考える。涼は三月で卒業してしまう。それまでにいっぱい思い出を作りたい。今までの孤独を取り戻すくらい、ずっと一緒にいたい。 「今度、三年生の教室へ行ってみよう。クラスはわからないけれど、人に訊けばいいよね」 三学期が始まると、亜美は決心した通り、三年の教室が並ぶ、校舎の最上階に足を運んだ。ここまで上がってくるのは今日が初めてだ。緊張に足がすくむ。 (とつぜん行ったりして、先輩、怒らないかな?) 少し心配になる。でも、亜美には涼の怒った顔が想像できなかった。 (大丈夫だよね。先輩はすごく優しい人だもん) 亜美はえいっと自分に気合を入れて、A組の教室に入っていく。上手く会えれば良いのだが、やはり涼の姿は見当たらない。仕方ないので、近くの女子に訊いてみた。 「あ、あの、済みません。こちらのクラスに上杉涼さんという方はいらっしゃいますか?」 「あなた二年生よね。なぁに? また告白でもしにきたの?」 女子はからかうように笑った。 「い、いえ! そんなんじゃありません」 「ふーん。まあ、いいわ。上杉くんならD組よ。頑張ってね」 「あ、ありがとうございます。失礼します」 亜美は顔を真っ赤にして教室を出た。背後から女子達の声が聞こえた。 「えーっ、また来たの?」 「上杉くんもやるわねぇ」 知らなかった。涼は人気者なのだ。下級生から何度も告白されるなんてすごい。 友達のいない自分とは大違い。亜美は愕然とした。 (どうしよう……私なんかが行ったら、先輩が恥かいちゃうかもしれない) やっぱり止めておこう。D組の前で亜美が決断した時、突然、教室から男子が出てきて、ぶつかってしまった。 「きゃっ!」 「あっ、ごめん。大丈夫?」 謝る男子は目の覚めるような美形で、亜美が呆気に取られていると、教室の中から声がかかる。 「おい、おい、上杉。また下級生にちょっかい出してんのか?」 「ちげぇって。ただぶつかっただけだよ」 背後のクラスメイトと戯れ合う男子は、涼と同じく上杉というらしい。 「あ、あの、上杉涼さんという方を探しているのですが」 「ほーら、やっぱりお前目当てじゃねぇか」 「うるさい。散れ」 鬱陶しげに取り巻きを追っ払って、男子は言った。 「上杉涼は僕だけど、何か用?」 亜美の頭は真っ白になった。人違い? 同姓同名? 「このクラスには、他にも上杉さんという方がいらっしゃいませんか? 元水泳部で冬の期末考査で学年七位の……」 「へえ、学年順位まで知ってるんだ。でも、上杉は僕ひとりだよ。それにうちのクラスで元水泳部っていったら、印南しかいなかったと思うけど」 印南? どこかで聞いた名前だった。 「印南……祐一さん?」 「そう、印南祐一。でも、あいつもう帰ったよ。家庭教師が来るとかなんとか……」 そうだ。杏子の教え子で恋の相手。同じ高校の二年に付き合っている女子がいるという印南祐一。 「あの……印南さんの家って、どこですか?」 「ね、ねえ先生。本当にいいの?」 ベッドに腰掛けた祐一は、隣に座るブラウス姿の杏子におずおずと訊いた。 「ええ、今までよく頑張ったわね。本当は合格した後でご褒美にって思っていたんだけど、私の方が我慢できなくなっちゃったわ。今まで苛めてばかりで、ちゃんとセックスはしたことなかったものね」 授業のたびに杏子は、手や口で祐一の欲望を抜き取ってくれた。お陰で勉強に身が入り、直前模試で初めてA判定を取ることができた。今日はそのお祝いだった。 「でも、私は受身が苦手なの。だから祐くんの童貞、奪ってもいい?」 祐一は積極的な性格ではないので、その方が好都合だった。 いったいどんな風に杏子が責めてくれるのか、マゾヒスティックな心が疼く。 「はい。僕を……犯してください」 「フフフッ、いいわ。たっぷりと可愛がってあげる。ライバルの娘には悪いけれど、私なしじゃ生きていけない身体になってもらうわよ」 強引に唇を奪われ、ベッドに押し倒された。ぬめぬめと舌が口腔を這いまわり、とろりとした唾液がたっぷり流し込まれる。祐一は絡めた舌を夢中で吸いながら、ほんのり甘い唾液を、喉を鳴らして飲み下した。 「すいぶん美味しそうに飲むのね。祐くんは私の唾が好きなのかしら?」 ボタンが手早く外され、ズボンを脱がされた。トランクの中でペニスはもうびんびんになっている。 「す、好きです。先生の唾、甘くて美味しいから」 「そうなの、じゃあ、もっとあげるわ。口を開けなさい」 言われた通りに口を開け、舌を出して待ち受ける。上から圧し掛かった杏子は口内に溜めた唾液を滴らせ、透明な雫が糸になって流れ落ちてくる。 零すまいと必死に舌の上で受け止め、先程よりも少し酸味を帯びた唾液を、恍惚と飲み干した。 唾液を垂らしながら、杏子の唇は少しずつ近づいてきて、二度目のキス。濃厚に唇を求め合い、舌を絡ませる。何時の間にかトランクの中に手が忍び込んで、勃起したペニスをしごき始めていた。 「こんなに硬くなるのは溜まっている証拠ね。今日は勃起しなくなるまで、とことん抜いてあげるわ。まずはほら、このまま手でイキなさい」 片手でリズミカルにピストン運動を繰り返し、もう片方の掌で亀頭をくるんでぐるぐると回転させる。先走りの液で滑りやすくなった掌は、卑猥な音を発てながら亀頭をこすりあげ、充血した表面はぱんぱんに膨らんでだらだらと透明な涎を垂れ流した。 「ああっ! 先っぽばかりそんなに擦ったら、すぐに出ちゃうよぅ!!」 「違うでしょう。祐くんはいつだって、すぐに出ちゃうんでしょう? ちょっと責められるだけで、簡単にイッちゃうものね。早い男の子はもてないわよ?」 きつい言葉責めが祐一の胸に突き刺さる。男のプライドを傷つけられて、祐一は早くも泣きそうになっていた。 「うぐっ……ひ、酷いよ、先生」 「本当のことを言っただけでしょう? 悔しかったら、少しは我慢して見せなさい。といっても無理か。もうこんなに睾丸が上がってきちゃってるわ。これじゃ三十秒と持たずにお釈迦ね」 冷たい微笑を浮かべて、杏子は愛撫のテンポを早めていく。ペニスの根元がどくどくと脈を打ち始め、射精の予兆に震える祐一の全身に鳥肌が立った。 「だ、駄目……もう出ちゃいそう……」 「あら、ギブアップ? 男の子なら、ぎりぎりまで我慢なさい。祐くんみたいに辛抱の足らない子に限って、コンドームも着けずにうっかり中出して、女の子を妊娠させちゃうのよね」 くすくす笑う杏子がどこまで本気なのか、祐一にはわからない。いずれにしても、もう我慢の限界だった。ぐつぐつと煮えたぎった精液が、括約筋の防波堤を押し破って噴き上がる。 「そ、そんなことしません! 僕っ……僕は……ああっ!」 「ほら、もうイッちゃいなさい。出したら出来ちゃうんだから」 とどめとばかりに杏子が言う。出来ちゃう、という言葉が脳の奥で弾け、祐一は杏子の手の中で果てた。 「い、い……イクぅっ!!」 呻き声とともに真っ白な噴水が上がった。身も蕩ける快感に包まれながら、祐一は腰をがくんがくんと高く突き上る。飛び散る飛沫は温かい雨となって顔や胸にまで降りかかり、腹には液溜まり、ベッドシーツには無数の染みを作った。 「はあっ、はあっ、はあっ」 虚ろな目で荒く息を吐く祐一を見つめながら、杏子は精液の絡みついた指を一本一本、丁寧に舐めとっていく。 「さすが若者。たくさん出したわね。味も匂いもきついわ。ふふふっ、こんなに濃いのを中出しされたら、一発で孕んじゃうわね。危ない危ない」 杏子は指を舐め終えると、今度は祐一の顔に舌を這わせる。 「あらあら、顔にまで飛ばして。せっかくの子種がもったいじゃない」 頬についた精液を舌先で掬い取り、そのまま唇を重ねてきた。 「んんっ!」 絡めた舌を伝ってどろっとしたゲル状の液体が口腔に落ちる。唇を塞がれているので吐き出すことも出来ず、杏子の唾液に混じった、青臭く苦しょっぱい自分の精液を祐一は飲み下すしかなかった。 「自分の味はどうかしら?」 「……不味い」 射精の余韻でぐったりしている祐一に、抵抗する力は残っていない。 「それは残念。大人の女にとっては蜜の味なんだけど。じゃあ、残りはもらうわね。私は祐くんみたいな若い子の精液が大好きだから」 言葉通り、杏子は祐一の顔や胸を舌で綺麗に掃除し、腹の液溜まりを舐め取ると、べとべとになったペニスをしゃぶり始めた。 「あっ……せ、先生……出したばかりだから、まだ……」 射精したばかりのペニスは過敏になっていて、ちょっと舐められるだけでも腰が跳ね上がるくらいくすぐったい。 「駄目よ。言ったでしょう? 今日は勃起しなくなるまで抜いてあげるって。若いんですもの。あと二、三発は軽いはずよ」 「そ、そんなの無理」 「私に任せなさい。またすぐにイカせてあげる」 杏子は馬乗りになると、ブラウスのボタンを思わせぶりに外していく。白いブラジャーが露になり、豊満な乳房が形作るヒップのような深い谷間に祐一は目を奪われた。 「私のおっぱい、吸いたい? 吸いたかったら、自分でブラを外しなさい」 杏子は前のめりになって胸を突き出す。すぐ目の前で巨大な二つの膨らみが揺れ、祐一は高鳴る鼓動を抑えながらブラジャーのフロントホックを外した。 「あっ!」 支えを失った乳房がぶるんと零れ落ちて、祐一の顔を挟み込んだ。温かい柔房に頬を抱かれ、汗ばんだ胸の谷間から立ち昇る牝の匂いにうっとりする。重い乳房を両手で支え、硬くしこった乳頭を口に含むと、甘くてすっぱい山葡萄の味がした。 「うふふっ、赤ちゃんみたい。ママのおっぱいを吸うのはずいぶんと久しぶりでしょう? どんな気分かしら?」 「大きくてお餅みたいにふかふかで、すごくいい匂い。このまま眠りたいです」 「だーめ、それは許可できないわ。だって、そうでしょう? 自分だけさっさと終わって眠るなんて、マナー違反だと思わない?」 「……はい」 「でしょう? わかったら、今度は下をお舐めなさい」 杏子はスカートを脱いで身体を回転させると、祐一の顔面に股間を押し付けてきた。 「うぶっ!」 肉の圧迫を受けて、こんもりと膨らんだ恥丘に鼻と口が埋まる。白いレースショーツのクロッチはじっとりと湿り、薄布一枚隔てて漂う酸味を帯びた胎内の匂いに咽かえる。鼻腔を貫く強烈な牝肉の芳香に、祐一の意識は朦朧とした。 「生理が近いから、匂いもきついでしょう? でも、女の匂いは男を奮い立たせる最高の媚薬なのよ。触ってもいないのにほら、またこんなに硬くなっているもの」 知らぬ間に復活したペニスを掴んで笑い、そのまま杏子は亀頭にしゃぶりつく。 「あううっ……」 圧し掛かるヒップの中心で、祐一は声にならない呻きを挙げた。生き物のような舌が亀頭のくびれをくすぐり、杏子が頭を上下させるたびに、きつく窄めた唇がじゅぷじゅぷとペニスを搾り立てる。時に舌先は尿道口を割って潜り込み、身体の内側を舐められる快感に身振りした。 つい先ほど射精したばかりなのに、早くも二度目の絶頂が近づきつつあった。 「ま、また……またイキそう……先生……ごめん」 「あら、もうイクの? フフフッ、仕方のない子ね。でも、いいわ。イキなさい。さっきみたいに我慢しなくていいから。このまま私の口に出しちゃいなさい」 杏子は亀頭を激しく吸い上げ、ペニスの根元を掴んで尿道を圧迫しながら、精液を搾り出すようにしごき立てる。硬くした舌先でちろちろと鈴口をくすぐられ、祐一の腰はあっさり砕けた。 「うあぁっ! で、出るっ! またっ……また、出ちゃうよぅっ!!」 杏子のヒップに指を食い込ませ、恥丘の膨らみに顔を思いきり押しつけて射精の快感に耐える。予兆を察知した杏子はペニスを深く呑み込み、亀頭に喉の粘膜を擦り付けて射精へと誘った。 「あっ! あっ! それっ、すごい! 出るっ! 出るっ! ううっ!!」 杏子のテクニックに辛抱堪らず、喉の粘膜に直接ぶちまけてしまう。杏子の口腔に幾度も精液を吹き上げるたび、尿道に焼かれるような痛みが走り、次いで腰の蕩けそうな快感が背筋を這い上がって脳髄を痺れさせた。 「す、すごいわね。二度目なのにまだ出てる。飲み切るのが大変よ」 杏子はいったんペニスを吐き出し、咽ながら一息吐いて呼吸を整えると、未だ断続的に射精運動を繰り返している亀頭を再び口に含み、舌を絡めて最後の吐精を吸い尽くした。 「うう……はあぁ……」 極短時間での連続射精に、祐一は息も絶え絶えになっていた。下半身は痺れて感覚が麻痺し、頭はズキズキする。AV男優などは平気で二度、三度と射精しているが、実際にやってみると、思った以上にきつかった。 「ふぅ……飲んだ飲んだ。もう、お腹いっぱい。でも、これだけ抜いておけば、落ちついてできるわよね?」 杏子の言う意味がいまいち理解できない。恐る恐る訊いてみる。 「できるって……何をですか?」 「もちろん、セックスよ。まだ、してないでしょう?」 確かに言う通りではあるが……。 「なあに? もしかして、もう出来ないっていうの? だとしたら最低よねぇ? まだ、私は一度もイってないんですからね」 返す言葉も無かった。 祐一の腰の上にどすんと尻を落として、杏子はこちらに向き直った。 萎えかかった敏感なペニスをヒップで押し潰され、祐一は目を白黒させる。 「大丈夫よ。ほら、まだ少し硬いわ」 杏子は尻を前後に揺すって、さらりと言った。 「私にはわかるの。二度目なのにあれだけ出たんですもの。もう一回分は残ってるわ。それにちょうどいいでしょう? いきなり入れていたら、それこそすぐに終わっちゃってたでしょうし。今ならゆっくりと楽しめるわ。お互いにね」 杏子は軽くウインクして腰を浮かせ、ペニスを掴んで股間へ導く。ショーツは脱がずにクロッチをずらして、亀頭をスリットにあてがった。 「面倒だからこのまま入れちゃうわね。少し硬さが足りないけど、たっぷり濡れてるからちゃんと入るわ。入りさえすれば、私の中ですぐに元気にしてあげる」 「あ、あの……」 慌てて祐一は口を挟む。大事なことを杏子は忘れている。 「コンドームは……」 「あら、ちゃんと憶えてたのね。感心、感心」 一度目の時に散々脅かされたせいで、気にしないわけにはいかなかった。 「でも、安心して、今日は安全日だから。多分ね」 「た、多分って……」 「冗談よ。さあ、入るところを良く見てなさい。これで祐くんも童貞喪失」 杏子はゆっくりと腰を落としていく。ショーツの隙間から垣間見えるサーモンピンクの割れ目に亀頭が密着し、弾力ある肉の抵抗を突き破ってぬるりと呑み込まれた。 「ああっ! せ、先生の中……熱いっ……」 まだ先っぽしか入っていないのに、杏子の体温で蕩けてしまいそうだ。 「そうよ。女の中はとても熱いの。だって、生きてるんですもの」 杏子は穏やかに微笑んでスムースに尻を下ろす。 「あっ……はぁん……」 瞼を閉じ、切なげに眉をひそめて杏子は喘いだ。 釣られて祐一も微かな呻きを挙げる。 「うっ!」 半分ほどしか勃起してないペニスだったが、とろとろに濡れた杏子の膣孔はやさしく根元まで受け入れてくれた。 「フフフッ、祐くんのおちんちん……全部入ったわ。童貞喪失の感想はどう?」 「はあっ、はあっ……なんかもう、何も考えられません。ただ、先生と繋がってるって感じが、すごく嬉しいです」 互いの身体が境目もわからずひとつに溶け合ってしまったような、不思議だけれど、とても素敵な感覚だった。 「私も嬉しいわ。祐くんの初めての女になれたんですもの。光栄よ」 にこりと微笑んだ杏子は、祐一の胸に両手を添えて背筋をぴんと伸ばし、前後に腰を揺すり始める。 「んあぁん!」 杏子の中がぐにゃりとねじれ、ペニスを包み込んだ柔ひだが触手のように一斉に絡みついてくる。杏子が腰を突き出すたびに根元からペニスを引き抜かれ、無理やり精を吸い出される錯覚に襲われた。 「ほら……祐くんの……おちんちん。私の中でもう、こんなに硬くなってる」 祐一の下腹と杏子の恥丘は優しく擦れ合い、濡れた恥毛同士が音も無く滑る。 杏子の喘ぎと同じタイミングで膣はきゅんと締まり、祐一のペニスに最後の力を噴き込んでくれた。 「私がイクまで、少しだけ我慢してね」 身を伏せて祐一にキスをすると、杏子は腰を大きく上下にバウンドさせた。 重いヒップが腰を叩き、ばつんばつんと音を発てる。引き起こされたペニスが一時的にスリットより吐き出され、亀頭が抜ける寸前までいって、再び根元まで呑み込まれる。杏子が勢い良く尻を落とすと、より深く刺さった亀頭が膣奥に突き当たって、下腹に鈍い振動が伝わってきた。 「おっ、奥っ! 奥に当たってるの!! 祐くんのがごつごつ当たって、振動が! 振動が子宮にくるぅっ!!」 半分白目を剥きながら、杏子は狂ったように腰を振りたてる。その艶姿に奮起した祐一も、ヒップをわし掴んで思い切り腰を突き上げ、二人の腰がカスタネットのように激しくぶつかり合う。 「も、もっとちょうだい! もっと、もっと私を突いて! 祐くんのおちんちんで、私を串刺しにして!!」 リクエストに応えるべく渾身の力を振り絞るも、粘りつくような杏子の締め付けに堪らず、射精の予兆に腰がびくびくと震え始めた。 「せ、先生……ぼ、僕、もう……」 「頑張って! もう少しだけ……ね、頑張って!」 切なげな微笑を浮かべて杏子は懇願する。祐一は歯を食い縛り、杏子を強く抱き締めて射精の誘惑に耐えた。 「あ、ありがとう……ごめんね。もうすぐだからね。私もすぐに……あっ……来る……すごいのが……来る!」 ついに訪れたオルガスムスの大波に、杏子は夢中で唇を求めながら、必死に腰を振り乱す。その身体は小刻みに痙攣し、ペニスを咥え込んだ膣がきゅうきゅうときつく収縮し始めた。 「ああっ! し、締まる! 先生の中……ち、千切れそう……」 祐一はもう杏子の為すがままだった。アヌスを引き絞り、ただひたすら杏子が果てるのを待つ。乳房と密着した胸板は汗で滑り、伝わる体温が燃えるように熱い。 杏子に呑み込まれたペニスは快感に痺れたまま破裂せんばかりに勃起し、心地良いぬめりと亀頭を叩く振動だけが、規則正しいリズムで刻まれ続ける。 そして杏子の唇が、耳元で絶頂を告げる悦びの喘ぎを漏らした。 「私……イクわ……祐くん……来て……」 瞬間、彼女の全身は激しく引き攣り、びくんびくんと腰が跳ねる。 「せ、先生……」 目を見つめて許しを乞う祐一に、杏子はこくりと頷いた。 その優しい微笑に力尽き、祐一の精が杏子の中で弾けた。 「あっ、熱い! 出てる……祐くんのが子宮に出てるの……うっ!」 くぐもった呻き声とともに、オルガスムスの第二波が杏子を貫く。 「い、イクッ! また、イクッ!! す、すごいっ、こんなに何度も……何度も……こんなの初めて! ああっ! ま、またよ! また……い、イクぅっ!!」 続けざまに訪れる絶頂に、杏子はイキっ放しの状態に陥った。食い縛った歯ががちがちと鳴り、唇の端から涎混じりの泡が溢れる。イクたびに顎が跳ね上がり、焦点を失った虚ろな瞳が、見つめる祐一の前でゆっくりと裏返った。 「う……あ……あ……」 完全に白目を剥き、だらしなく開いた唇から舌を垂らして、杏子は静かに失神した。 少し遅れて、祐一は腹の上に熱い飛沫を感じる。 「せ、先生……お漏らし……してる……」 胎内から溢れた精液と、黄金色の雫が混ざり合って流れ落ちる。 祐一もまた強烈な射精の余韻と重い疲労感に気が遠くなった。目の前で見てしまった、杏子の恐るべき痴態に、頭を殴られたような衝撃を受けていた。 今や赤ん坊となって眠る杏子を抱き締め、お休みの接吻をしながら唇端の泡を丁寧に舐め取り、食み出した舌を口内に押し戻す。 そうして取り戻された、穏やかで美しい寝顔にもう一度だけキスをすると、祐一は杏子の後を追うように深い眠りの縁へと落ちていくのだった。 冬の空が夕焼けに染まる頃、杏子の部屋の前に亜美は立っていた。 祐一の家を訪ねたところ本人は不在で、代わりに母親が教えてくれた。 「今日はまだ帰っていませんよ。家庭教師の先生も御用があるとかでお休みですし」 けれど、上杉涼は確かに言っていた。家庭教師が来るから、と。 もはや疑う余地はない。それでも亜美は確めたかった。自分の知っている上杉涼が、杏子の話した印南祐一であるという事実を。 確めてどうするのかは、まだわからない。世の中には知らない方が良いこともある。 このまま嘘を信じ続ける方が、もしかしたら幸せなのかもしれない。 なのに亜美は鍵を開けてしまう。いつでも使ってよい、と杏子からスペアキーを渡されていたのが災いした。もうすでに心は半分壊れていた。 部屋はとても静かだった。電気も消えている。玄関にはヒールとスニーカー。 亜美は半ば結末を予測しつつ、足音を殺して室内に入る。 無人のキッチンを抜け、居間へと続く曇りガラスの格子戸に手をかけると、一瞬の躊躇の後、わざと音を発てて開け放つ。 強烈な青臭さと尿の匂いに加え、嗅いだことの無い卑猥な臭気が発ち込めていた。 ベッドにはお互いを愛し疲れて、仲良く抱き合ったまま眠る恋人たち。 二人が目を覚ますのと、亜美が笑い出すのは同時だった。 「あははははっ!」 喜んでいるわけでも、怒っているわけでもない。哀しいわけでも、楽しいわけでもない。喜怒哀楽のどれにも当てはまらない感情に駆られて、気が触れたように亜美は笑い続けた。 突然のことに、祐一も杏子も身動ぎ一つできず、絶句している。 そんな二人を無視して、ひとしきり笑い終えると、亜美は歌うように言った。 「一度、言ってみたかったんだ。この泥棒猫! なんてね」 最後は無理におどけて見せ、スペアキーをぽいと床に投げ出す。 「もう要らないから、先輩にあげます。さようなら」 後のことはよく憶えていない。気がつくと靴も履かずに自宅の玄関先に立っていた。 もちろん家には誰もいない。いつものことだ。広すぎる家は夜の校舎みたいにがらんとしている。耳鳴りのするほど静かな部屋でベッドに突っ伏すと、ようやく実感が沸いてきた。 「私……失恋したんだ……」 他人事のようにそう呟き、誰に遠慮する必要もないのに、声を殺して亜美は泣いた。 |